第12章 東の国の陰謀 東からの使者③
魔道研究所で不老不死の研究について議論や実験を続けていることはレイン侯爵には知られてはならない。それは共通認識だった。
「文献を紐解いたり古代文字で書かれている物を解読したり、やることは山ほどあります」
とりあえずリロン所長の手伝いをルーク、シェラック、ユスティで行っている。
ロンとロンが連れて来たサキは食事を含めて皆の身の回りの世話を行っている。
ロックとバルバロス、ディーは警護兼見張り要員だった。
今のところバルバロスたちから所内の様子を魔道で勝手に送ってしまうようなことにはなっていなかった。定期的にバルバロスが口頭で報告に城を訪れていたのだ。報告する相手は魔道士団副団長のヤキムだった。
定期報告を終えて城から戻ったバルバロスが皆を集めた。話があると言うのだ。
「それで城で何かありましたか?」
「はい。城で親しくなった者の話なのですが、昨日ズィーイからの使者がやって来た、というのです」
「ズィーイ皇国からの使者?」
「ええ。若いが立派な風体をしていた一人とその随員五名の使者団のようです」
「ズィーイ皇国からの使者。そうですか、彼らの目的はなんなのでしょうね」
リロンはサキの戦争時にはまだ五歳だったので、ズィーイ皇国のことはほぼ具体的な知識は無い。賠償金を約束したが支払っていない、ということぐらいだ。
「リロンさん、プレトリア州とズィーイ皇国の関係は深いのですか?」
ルークはその辺りの詳しいことが全く知識が無かった。ただシェラックにしても、それほど変わりはない。
「いいえ、先の戦争以来、全く接触は無かったと思います。賠償金の督促の使者も送ってことはありませんし、勿論向こうからの使者など聞いたことがありません」
「ではレイン侯爵から招いたと?」
「いいえ、それも無いと思います。父との会話でズィーイの事が出たことはありませんから」
十五年ぶりの突然の使者。とてもいい話だとは思えなかったが、逆にいい話でもないのに十五年ぶりに使者を送ったりはしない、とも言える。
「ズィーイの商人とは現物取引以外の商売をするな、と言われる程信用できない国でもあります。父が何か騙されたりしなければいいのですが」
リロン所長は本気で心配しているようだった。ただリロンとしても実際にズィーイの人間と関わったことなどない。
「探りを入れてみましょうか?」
ルークの提案にリロンはすぐに反応する。
「お願い出来ますか。あの使い魔さんですね」
「そうです。ジェイに少し探ってきてもらいましょう」
ルークは時々思い出してはジェイに用事を押し付けるのだった。




