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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第12章 東の国の陰謀 東からの使者

「レイン侯爵様」


 バイロン=レイン侯爵の部屋を宰相であるサロム=ランズレア伯爵が訪れた。他国からの使者の到着を知らせに来たのだ。


「着いたか」


「はい、さきほど」


「それで?」


「ズィーイ国外交省次官、リン=ソウシュクと名乗っております」


「本物か?」


「間違いありません。こちらの間者からの報告とも符合しております」


「ではあの話も本物ということだな」


「そう見えます」


「見えます?」


「ズィーイの腹は判らない、という意味です」


「なるほどな。で、その者の彼の国での立場はいかほどなのだ?」


「現ズィーイ皇帝の弟の孫だそうです」


「皇帝に連なるものではあるのだな」


「はい。そしていずれどこかの国の国王となる予定だとか」


 ズィーイ皇国は皇帝リュウシン=ソタンが絶対権力者であり中央集権国家ではあるが配下の貴族はそれぞれ国を治めており国王を名乗っている。現在ズィーイには12の国があり12名の国王が居るのだ。


 ズィーイは徹底した魔道主義の国だった。剣士と言えばただの雑用と立場は変わりがない。皇帝を筆頭に魔道士が国全体を治めているのだ。


 十五年前ズィーイ皇国はシャロン公国に攻め入って来た。北方の国キースノア同様、肥沃な大地を擁するシャロン公国に版図を伸ばしたいズィーイがその自慢の魔道士部隊を擁して攻め入って来たのだ。


 地理の関係上ズィーイからの軍はシャロン公国東端のプレトリア州が対処することになった。そしてプレトリア州魔道士団は見事ズィーイの軍勢を跳ねのけることに成功したのだった。


 その時の経験も踏まえてバイロン=レイン侯爵は魔道の重要性を再認識し、元々魔道が比較的重要視されていたプレトリア州を魔道によって立つシャロン公国としては異例の州に大きく舵を切ったのだった。


 ラキンの戦いと呼ばれるズィーイとの戦争が終結し賠償金をズィーイ皇国がシャロン公国に支払う事で休戦協定が結ばれて十五年。


 実際には賠償金は一度も支払われてはいなかった。しかしシャロン公国からは督促の使者すら派遣されていなかったのだ。


 そのズィーイ皇国からの内密の使者がザグレブを訪れたいと知らせを受けたレイン侯爵は、その申し出を受けることにしたのだった。

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