憧憬
新章開幕です。よろしくお願いします。
ピッ、、ピッ、、ピッ、、
モニターから機械音が聞こえる。
窓からは西日が入っており、柔らかく室内を照らす。
ベッドには老人が1人。
(体が…動かん。)
老人は動く気力も無く、点滴や呼吸器、胃瘻等のチューブが繋がっている。
(また生きながらえてしまった…)
ピッ、、ピッ、、ピッ、、
(情けない…)
(もう一度…もう一度だけでいい)
老人の腕に僅かに力が入る。
ピッ、、ピッ、、ピッ、、
色々な物を忘れた。もう何を忘れたかもわからない。けれど、これは覚えてる。これだけは忘れられない。
(刀を思いっきり振りたい。昔のように。)
(それだけでいい…)
♢ ♢ ♢
「…協力するとは言ったが条件がある。」
真琴と栞の表情が少し引き締まる。
「何?」
悠真は澪の肩に手を置く。
「澪も連れて行く。」
「そして俺は、何よりも澪を守るし、あまりにも危険だと思ったら途中でも帰る。それが条件だ。」
少し沈黙。
「連れてった方が危ないかもしれないよ?」
「それも考えたが1人にして、お前らみたいな危ない奴がくるかもしれないと考えたらな…」
「褒めても何も出ないぞ〜まぁ私たちみたいなのがホイホイ出てこないとは思うけど…」
真琴は栞を見る。
栞は少し考えてから頷く。
「……いいんじゃない?あなたはそういう人だもの。」
真琴も笑う。
「よし!私も反対しない。むしろ澪ちゃんがいてくれた方が安心かな。楽しくなるしね。」
「がんばるのでよろしくお願いします!」
澪は少し照れながら笑う。
「えへへ。」
「もう一つある。俺が戦うのはいい。おれは3つ目の手段は最後まで選ばない。」
2人も真剣な表情で話を聞いてくれた。
「…もちろん。私たちもそのために説得を優先してる。」
「…ならいい」
悠真はようやく真琴に向かって手を差し出す。
「それなら協力する。」
「契約成立!」
真琴は満面の笑みで握手した。
「じゃあ最初のお願いの話するねー?」
「最後だけどな」
「続けるよー?」
真琴は丘に机と椅子、この前のスクリーンを出す。
「便利な力だな。」
「この天才あっての力だよ。仮にきみが同じ力を持っていてもフニャフニャしか作れないだろうね。」
「ほっとけ。」
確かにそうなりそうで俺は口を閉ざした。
「今回行く夢は、レベル4。場所は新東京中央病院。入院してる方だったから情報が集めやすかったよ。」
「他にも眠り病の人はいたけど、レベル4はこの人だけ。」
「ちなみに他の人は?」
「1か2の手段で丁寧に起こさせていただきました。」
「名前は、九条 恒一さん。えー、御年103歳。」
「はぁ?ちょっと待て、そんなおじいちゃんと戦うのか?ものすごくやりにくいんだが…」
「うんうん。私も最初はそう思ってたけどね〜」
真琴の雰囲気が変わる。
「その考えだと切られるよ。」
「この人のセカイはそれほど広くは無いの。せいぜい病院と同じくらいの広さ。」
「でもね。この人はセカイを改変してる。これを見て。」
スクリーンに写真が写る。農家のような写真に、焼け野原の写真。道場のような場所の写真。
「…これ、全部同じ場所なのよ。」
「はぁ?全部全然違う場所だろ?」
「もう一つ。これも見てほしい。」
そこに映ったのは子どもだった。次には40代くらいの大人。次には自分と同じくらいの人。
「…全部同じ人だと思うの。」
「はぁ?」
「…この人がセカイの主人。」
確かに年代は違うが顔は似ている気がする。銀髪なのも一緒。年代によって違うが刀に分類されるものを持ってるのも一緒。
「多分だけど、認知症の影響かもしれない。コロコロ夢が変わるから、認知面が影響してるんじゃ無いかな?っていうのがNESTの見立て。」
「…景色や姿や変わっても本人は同じ。」
「何回か入ったけど、この世界の仕組みは単純。入る襲ってくる。戦う。夢人やセカイの妨害も無いし、本当に戦うだけなの。多分だけど、自分のセカイを守りたいとかじゃ無くて戦いたいだけなのよ。」
「なんでこのセカイなんだ?」
「…理由は3つ。」
「1つ目は、この人が話が通じそうな主人だから。いきなり切りかかってくるとはいえ、戦っている間は話に応じてくれるの。」
「2つ目は、このセカイはレベル4だけど安全な方なの。子どもか道場の時は持ってるのは竹刀だったから。」
「めちゃくちゃ痛いけどね。一番長く話したのは私!48秒でした。」
「一ノ瀬さんは?」
「………言いたく無い。」
「開幕一本で退場。避けるまも無く終わったね。」
「〜〜〜!」
ポカポカと真琴を叩く。
「で?3つ目は?」
笑っている真琴を椅子ごと押し倒して戻ってくると、何事もなかったかのように続けた。
「3つ目はあなたの力が守るための力だから。お互いで傷つけ合うんじゃ無くて、あなたならうまく立ち回ってくれるかもっていうのにかけたの。」
「なるほどな。わかった。勝てるかどうかは知らないぞ。」
「…簡単に言うのね。もう少ししぶられるかと思ってた。」
「あぁ。なんかな、守る事についてはやれるって気がするんだ。変身した時と同じ感じがする。だから大丈夫かなって。」
「……そう。期待してるわ。」
悠真は手を差し出す。
「…これは?」
「短い間とはいえ一緒に何かするんだ。よろしくっていう握手のつもりだけど?」
栞は少し難しい顔をした。
「………ごめんなさい。握手は苦手なの。」
「そうか。まぁよろしく。」
悠真が手を引っ込めると、栞はその手を一瞬見つめていた。
苦手と言った一ノ瀬さんは苦しそうでまるで何かを我慢しているみたいだった。
間に合えば夜中にもう一話UP予定です。間に合わなかったらすみません。




