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re:Dream  作者: 夜更かし虎
親子の夢

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34/37

幼夢ー3

告知より遅くなりました。……誰か眠気との戦い方を教えてください。

「……っ」

悠真は目を開けた。

「ここ……は……?」

周囲を見渡す。

さっきまでいた住宅街とは違う。壁も、家具も知らない部屋だ。

「……ここはどこだ?澪は?」

「お兄ちゃん!」

隣から声がした。

振り向く。

「澪……!」

そこには澪がいた。

「よかった……急に手に捕まったからびっくりしたよ。」

「何言ってるの?おかしなお兄ちゃん。まだ夢見てるんじゃない?」

悠真は立ち上がろうとした。

だが――。

「……あれ?」

()()()()()()()

「どうしたの?」

「いや……なんか変だ。」

手を動かそうとする。

動く。体は問題ない。

「……なんだ?」

その時、下の方から声がした。

「悠真ー!澪ー!ごはんできたよー!」

悠真と澪が同時に顔を見合わせる。

「……今、なんて聞こえた?」

「私たちにご飯できたよーって。呼ばれてるんだよ?お母さんに。」

悠真の中に知らないイメージが出てくる。ここは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「行ってみよう。」

「うん。」

二人で部屋を出る。

来たことは無いのに知っている廊下を通り、階段を降りてリビングへ。

そこには――。

「おはよう。朝ごはん冷めちゃうよー。」

「……ちょっと待って。」

台所には一人の女性が立っていた。

フリフリのエプロンをつけて、お玉を持った真琴がそこにいた。

「どうしたの変な顔して。」

真琴(母さん)が笑う。頭が痛み、ノイズが入る。

「……母さん?」

口から勝手に言葉が出た。

「なぁに?」

「うふふ。どうしたの?変な悠真。」

「……俺、いや、あれ?」

「これから学校でしょ?遅れるわよ?」

女性が笑う。

「もう、お兄ちゃんったら。」

澪が笑いながら悠真の腕を引く。

「ほら、早く手洗ってご飯食べよ。」

「いや、待って。」

悠真は立ち止まる。

「ここは……」

「何言ってるの?」

澪が不思議そうに首を傾げる。

「私たちの家でしょ?」

その瞬間、さらにノイズが走る。頭の中に映像が流れ込んできた。知らない記憶。澪と一緒に学校へ行く。

母さん(真琴)が朝食を作ってくれる。

帰宅すれば母さんが待っている。

そんな日常。

「……なんだ、これ。」

胸の奥がざわつく。

自分の記憶ではないはずなのに確かに自分のものとして感じる。

「悠真?どうした?調子良くないか?」

「……大丈夫。」

そう答えた瞬間だった。

「お兄ちゃん、今日どうしたの?」

澪が心配そうに顔を覗き込む。

「……いや。」

悠真は澪を見る。違和感がある。澪はいつも通りだ。

笑っている。いや、いつもの澪じゃない。いつもと同じだろ?変なところはない。

なのに――。

「……澪。」

「なに?」

「俺たちって……」

そこまで言った時、頭の中にまた別の声が響いた。

『お兄ちゃん』『今日は学校どうだった?』

『晩ご飯できてるよ』『二人とも仲良くね』

知らない記憶がどんどん流れ込んでくる。

「……っ」悠真は頭を押さえた。

「お兄ちゃん!?」

「大丈夫……。」

「大丈夫じゃないよ。顔真っ青だよ。」

澪が心配そうに手を握る。

その手の温かさに、少しだけ落ち着く。

「……ありがとう。」

「ううん。任せてよ。お兄ちゃんは私が守るから。」

「……え?」

「だって、私はお兄ちゃんの妹だもん。」

「……そう、だな。」

違う。

何かがおかしい。

だが、それが何なのか分からない。

「悠真さーん!」

外から声が聞こえ、インターホンが鳴る。

「悠真大丈夫?ひまりちゃんが来たけど、上がってもらうね?」

「ひまりちゃん?」

悠真が顔を上げる。

「こんにちは!お邪魔します!」

そこには制服姿のひまりが立っていた。

「悠真さんこんにちは!大丈夫ですか?調子良くないんですって?」

「……ひまりちゃん?」

「どうしたんですか?」

「いや……。」

ひまりは悠真を見ると、当たり前のように笑った。

「やっぱり調子悪そうですね。学校休みます?一緒に行けないのは少し寂しいけど……」

「……一緒に?」

「うん。だって私、悠真さんの彼女ですから。」

「………………は?」

悠真の思考が止まった。

ズキン!さらにノイズが走る。したはずのないお出かけやデート、告白の記憶がある。

「ちょ、ちょっと待って。」

「どうしたんですか?」

ひまりが首を傾げる。

「俺とひまりが……彼氏と彼女?」

「はい。」

「いつから?」

「え?」

ひまりが困ったように笑う。

「ずっとですよ?」

「……ずっと?」

頭が混乱する。ひまりは当然のように自分を見ている。澪も。真琴も。全員が「それが当たり前」だと言っている。

「……おかしい。」

悠真が呟いた。

「みんなわからないのか?俺は……あれ?」

言葉が出ない。再びインターホンが鳴る。

「お兄ちゃん。」

澪の声が聞こえる。

「どうしたの?」

「……いや。」

澪は悠真の顔をじっと見ていた。

「……なんでもないよ。」

「…………そっか。何かあったら言ってね?」

澪も笑う。

だが――その目だけは笑っていなかった。

「悠真大丈夫?陽太君もきたよ?」

「陽太君?」

「今日はみんなで遊ぶんでしょ?」

促され玄関に行く。

「こんにちは!」

見覚えのある男の子と老人、知らない女性がいた。

「あら、九条さんも一緒なのね。」

「うむ。陽太君に誘われましてな。」

「はっはっは。」

ものすごく違和感を感じるのにこれが当たり前なような気もする。

「さぁみんなでピクニックに行きましょう!」

嬉しそうな声が上がり、真琴まで一緒に行くらしい。

「あれ、いや、俺たち学校は?」

「悠真さん何言ってるの?今日は陽太君達とピクニックでしょ?」

再びノイズ。鋭い頭痛が走る。

「あれ?いや?……でも、」

「……ねぇ。本当に大丈夫?」

真琴が心配そうに口を開く。

「ごめんなさいね。ちょっと悠真は調子が悪いみたいで。」

「お兄ちゃん調子悪い?どこか痛い?」

陽太君が心配そうに見ている。

「あぁ。大丈夫だよ。元気元気。」

よくわからないがひとまず合わせるしかないか。


♢ ♢ ♢


「……ふぅ。」

部屋で一息つく。ピクニックに行き、動物園に行き、公園で遊び、とても疲れた。

陽太君は記憶にある通りとてもいい子だ。

また明日も一緒に遊ぼうと言っていた。明日もまた遊んであげよう。

コンコン。

「お兄ちゃんいる?」

「いるよー。」

澪が入ってくる。

「お兄ちゃん大丈夫?」

「何が?」

「……ううん?今日調子良くなさそうだったから。明日も陽太君のところに行くんだよね?」

「そうだな。」

「……じゃあ早く寝なきゃね。」

どこかぎこちない。何か悪い事をしただろうか?

()()()()()()()()()()()()()()()

「…………ねぇ、お兄ちゃん。」

「……栞お姉ちゃんのこと、覚えてる?」

「栞お姉ちゃん?」

頭にまたノイズが入る。見覚えのある女の子。素直じゃないけどすごく周りを気にしてる。強がりなのに怖がりで、周りをよく見ている……少し気になる女の子。

ズキン!頭痛が酷い。

「……ちゃん!?お兄ちゃん!?」

澪が呼んでる。不安にさせちゃいけない。

「大丈夫。大丈夫だよ。」

危なかった。またセカイの主人から変な記憶を入れられてたのかもしれない。

「なんともないから。澪も何かあったらすぐに呼ぶんだぞ。」

「……うん。わかった。お休み。」

澪が部屋に戻る。今日は早く寝よう。明日もたくさん遊ばなきゃ。


「……そう。……しいのね?……とは……めね。」

「……しは……うぶ。……んも……を……て。」

「…………なった……こちら……起こしに行く。」

夢を見た。女の子が何かを必死に呼びかけてくる。どうやら引き止められているらしい。「そっちへ行ってはダメ」とか「戻ってこられなくなる」とか。

まぁ夢だろうな。かわいい女の子だったが。

そういえば夜中何か声が聞こえた気がする。窓も開いてないし澪が誰かと電話でもしてたかな?

「おはよう、お兄ちゃん。今日は大丈夫?」

「あぁ。すっかり元気だ。今日もたくさん遊ばなきゃな。陽太君はいつくるかな。」

「まずはご飯食べよ!もうお母さん起きて作ってたよ。」

部屋を出ようとする澪に、

「なぁ……昨日の夜電話とかしてた?」

「……なんで?してないよ?」

「いや、じゃあ気のせいだな。大丈夫だ。さぁ食べに行こう。」

「…………。」

悠真は窓の外を見る。まだ陽太君は来ていない。

気がつくと家の前に夢で見た女の子が立っていた。

こちらを見ている気がする。そのまま立ち去ってしまった。

「なんだったんだ?」

気にせず下に降りる。ご飯を食べて澪とお隣へ。

家の中から、小さな声が聞こえた。

「ままー!」

「はーい。今行くわよ。」

女性が笑顔で答える。

「陽太君、今日も元気そうだね。」

「うん。また走り回るよ〜。」

「全力で逃げなきゃな!」

ガチャ!ドアが開く。

「まーまー!はーやーくー!」

「今行くから、もう少し待って!」

飛び出してきた子と追いかけてくる母がいる。

悠真はその光景を見つめる。

いつも見ている、ただの、幸せな家庭なのに――。

「……なんだ?この感じ……。」

胸の奥が痛い。

どこかで知っている。大切なものを失う恐怖。

それを失いたくないという気持ち。これはよく知っている。

「……澪。」

「なに?お兄ちゃん。」

「変なこと聞いてごめんな?俺たちは今何をしてるんだ?」

澪は答えなかった。ただ、悠真の手を握った。

ガチャ。

「おはよーお兄ちゃん!お姉ちゃん!」

陽太君が来る。

「おはようございます。今日もよろしくお願いしますね?」

お母さんに挨拶された。

「あの……」

お母さんが、笑いながら振り返る。

「何か?」

なんともないはずなのにすごい圧を感じる。

「さぁ、すぐにみなさん揃いますよ。今日はどこに行きたい?」

「今日はねーゆうえんちに行きたい!その後は車のおもちゃで遊ぶんだ!僕はバス!運転手さん!」

「全部やりましょうね。」

キィ……門が開く音がした。

「次に来たのは誰かな〜?」

そこには、夢で見た女の子が立っていた。

「おねえちゃん、だれ?」

「こんにちは。私は――」

「ママ。」

陽太が走って母親の後ろに隠れる。怖がっているようだ。

「このひとだれ?なんか僕は嫌だ。」

母親が女の子を見る。笑顔で。

けれど――。

「……知らない人ね。」


その瞬間、住宅街の空気が変わった。

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