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re:Dream  作者: 夜更かし虎
仮面の夢

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28/35

醒夢ー2

大変お待たせいたしました!!!

「笑え!!」

巨人の叫び声が、崩れかけた街に響き渡った。

悠真は栞とひまりを抱えたまま、地面へ着地した。

「2人とも大丈夫?」

「……私は大丈夫。ひまりちゃんは……気絶してるけど大丈夫だと思う。」

「わかった。とりあえず急いで離れるよ。2人にも、裂け目集合で伝えて!」

「もう伝えたわ。来るわよ!急いで!」

笑い声を響かせながら

腕を振り下ろす。

砂煙の中から栞とひまりを抱えた悠真が飛び出して走り出す。

「頼む!ライガー!」

すれ違いに獅子が巨人に体当たりをしていた。

「飛ばすぞ!」

巨人は身体を震わせながら、こちらを見下ろしていた。無数の窓が歪み、貼り付けられた笑顔が一斉にこちらを向く。

「笑って……。」「笑って……。」「笑ってよ……。」

「ひまりちゃん……。」「一緒に笑おう?」

後ろから楽しそうで悲痛な声が重なる。

ひまりの肩が震えた。

「大丈夫。もう聞かなくていい。」

栞がそっと耳を塞ぐ。

糸がイヤーマフのようになりひまりの耳を塞ぐ。

悠真が急に止まった。

「……裂け目は?」

栞も探す。

来た時には揺らぎながら見えていたはずの裂け目は、どこにもなかった。

「……ない。」

「消えた?」

「……わからない。たぶん、閉じこめられた。」

「ひまりちゃんを逃がさないように?」

栞がうなずく。

「……このセカイそのものが、ひまりちゃんが起きるのを拒んでる。」

「そんな……。」

「お兄ちゃん!」

「澪!」

澪がかけてきた。

「無事で良かった。どんどん町が壊れていってるの。」

「澪も大丈夫だったか?」

「大丈夫!一度出るんだよね?……出口は?」

誰も答えられない。

「みんなそろったよ!早く出よう!」

「あの獅子が頑張っとるうちがチャンスじゃよ!」

足止めしていた真琴と九条も合流する。

「出口が……ない?」

真琴が愕然としながらも裂け目があった場所を探る。

空間が揺らぐ。

「境界は動いてない。じゃあ、ひまりちゃんかな……」

「どうする?この場合、あいつを倒したら戻れるのか?」

悠真が巨人を見る。

「分からない。」

栞は巨人を見上げた。

「でも、このままここにいたら……何が起こるか分からない。」

「……いいことにはならなそうじゃな。」

九条が虎徹を肩に担いだ。

「学校も街も、どんどん壊れて巨人に吸い込まれとる。あれがこのまま広がれば、わしらだけでなく、このセカイそのものがどうなるか分からん。」

「じゃあ……。」

悠真はレグルスセイバーを構えた。

「やるしかない。」

「うん。」

栞が糸を構える。

真琴が指を鳴らす。境界近くにシェルターができる。

「澪ちゃんはひまりちゃんと入ってて。」

「……分かった。」

澪がひまりの手を握る。

「一緒にいるからね。」

「……一緒に帰れるようにする。」

「ライガー!」

悠真が叫ぶ。前方から後ろに飛ぶように巨体が飛んできた。悠真が乗り込む。

「行くぞ!」

ライガーが駆け出す。

巨人の足元へ突っ込み、その巨体を押し倒そうとする。

「九条さん!」

「任せい!」

上に乗っていた九条が背中から飛び、斬り込む。

ズンッ!

切られた巨人の膝が沈む。

「今じゃ!」

「分かってる!」

無数の太い糸が巨人の身体へ絡みつく。

腕を縛り、脚を縛り、首を引き倒す。

「真琴さん!」

「はいはい!」

真琴が指を鳴らす。

巨人の周囲に鉄パイプが複数現れ、体ごと地面へ突き刺さった。

「これで動きを止める!」

巨人の身体が傾く。

「悠真くん!」

「九条さん!一緒に!」

「おう!」

悠真がライガーから頭を蹴って飛び出す。

九条が腕を駆け上がり、胸元へ飛び移る。

「レグルスセイバー!」

「どりゃぁぁぁ!」

2人の斬撃が巨人の胸を切り裂く。

切られた箇所から大量の夢人が溢れ出した。

「うわっ!」

「笑って!」「笑って!」

「ひまりちゃん!」「戻ってきて!」

悠真と九条が夢人を薙ぎ払う。

しかし、倒れた夢人たちはすぐに黒い泥へ変わり、巨人の身体へ戻っていく。

その間に傷口の中でも夢人達が手を繋ぎ増えて笑いながら傷を塞いでいく。

「またか……!」

《悠真くん、離れて!》

栞の声が頭に響く。

直後、巨人の腕が振り抜かれた。

悠真が吹っ飛び、地面が砕ける。

「くっ……!」

「再生が早すぎる!」

九条が巨人の足元へ斬り込む。

瞬く間に三閃。

切り裂いたそばから、夢人たちが群がり、傷を埋めていく。

「これは……切りがないのう!」

「なら、吹き飛ばす!」《九条さん!もう一度!》

《おう!》

九条が一閃。合わせて真琴が指を鳴らす。

空いた穴に手榴弾が落ちる。

ドゴォン!

巨人の膝が大きく吹き飛んだ。巨体がバランスを崩す。

「やったか!?」

「真琴さんそれダメなやつ!」

しかし、大きく空いた穴から無数の手が体が顔が出てきて伸びる。

「笑って。」「笑って。」「笑って。」

吹き飛んだ部分を、何十人もの夢人が繋いでいく。

「……本当にしつこい!」

真琴が歯を食いしばった。

巨人の口が開く。

「笑え。」

今までより低い声だった。

「――笑え!!」

巨人の身体から黒い靄が噴き出した。

「危ない!」

栞が全員を糸で引き寄せる。

直後、黒い靄が地面を覆った。

「うわっ!」

「触れるな!」

「あれは……触っちゃダメ。」

靄に触れた建物が、音もなく崩れていく。

瓦礫を取り込んだ靄が瓦礫と夢人が合わさったような歪な人型に変わった。

「わらってー?」

「……増えた?」

真琴が呟く。

靄があちこちで集まり

その一つ一つの生徒たちが笑いながら語りかけてくる。

「ひまりちゃん。」「一緒に帰ろう?」

「学校に戻ろう?」「笑おう?」

「悠真!こいつらはわしらが抑える!お前は大元をやれ!」

「わかりました!」

九条が切り掛かり、真琴が道を作る。

巨人への道を加速しながら駆け上がりー

巨人が腕を一振り。作った道が壊される。

「悠真くん!」

赤く輝く閃光が煙から飛び出し、巨人に迫る。

「レグルス……」

ガシッ

胸まで後一歩のところで悠真が止まる。

窓から伸びた手が悠真を掴んでいた。

「悠真くん!!」

栞が叫ぶ。真琴と九条も囲まれている。

「どうしたら……」

その時この場には不釣り合いなシルクハットが空を裂いた。


       ♢ ♢ ♢


時間は少し戻る。

「…………ここは?」

頭が痛い。何かの中にいるようだ。

「ひまりちゃん!!良かった!大丈夫?」

澪がひまりが起きたのに気づいた。

「……澪ちゃん?」

「そうだよ!」

「私は……そうだ。アレに捕まって……逃げられなくて……」

大きな音が響く。

「……あれは?」

「今ね。みんながひまりちゃんと帰るために頑張ってるの。」

「お兄ちゃんだけじゃないよ?真琴お姉ちゃんに、栞お姉ちゃん、九条のおじいちゃんも!」

少し覗く。暴れる巨人とその下で動き回る影が見える。

「笑って」「笑って」「笑って」

ひまりが聞こえた声に反応して震え出す。

「……嫌……。もう、あそこには戻りたくない。」

「戻らなくていいよ。」

澪が言う。

「うん……。」

ひまりは頷いた。どこか気になって巨人を見てみる。嫌なはずなのに目が離せない。

巨人のその顔は笑っている。なのに――

ひまりには泣いているように見えた。

「……ひまりちゃん?」

「……。」

巨人の奥から、微かに声がした。

「……助けて。」

ひまりが顔を上げる。

「……今、何か……。」

「ひまりちゃん?」

「聞こえた。」

ひまりが巨人を見る。

「この子……。」

「……。」

「笑ってるんじゃない。」

ひまりは一歩前へ出た。

「泣いてる?」

途端に靄がひまりを包む。

「ひまりちゃん!」

「笑って。」「笑えば楽しいよ。」

「笑えば嫌われないよ。」「笑えば一人にならないよ。」

「……違う。」

ひまりが呟く。

「それは……私じゃない。」

「私は……ううん。そっか。()()()()()()()。」

胸に手を当てる。

「笑ってれば、みんなに合わせれば、嫌なことなんてないって言えば大丈夫。そう思ってたの。」

一歩。また一歩。

澪が止めようとする。

「ひまりちゃん、危ない!」

「……うん。」

ひまりは振り返らない。

「でも、わかったんだ。」

「私……逃げたくない。」

靄の中ひまりは巨人を見つめた。

「だって、あれも私なんでしょう?」

誰も答えなかった。

「ずっと笑わなきゃって思ってた私。」

ひまりが手を伸ばす。一歩。

「一人になるのが怖かった私。」

一歩。靄が薄く光る。

「嫌われるのが怖かった私。」

一歩。靄がより光る。

「怒りたかったのに怒れなかった私。」

一歩。靄が光ったままひまりの周りを周り出す。

「泣きたかったのに笑ってた私。」

一歩。光が集まり、一枚のトランプに変わる。

「だから……。」

黒いケープ、シルクハットが出てくる。

「もう、隠さない。」

持っていたトランプを空へ放る。

「1、」

ひらり。

一枚だったはずのカードが、二枚になる。

「2、」

四枚。八枚。十六枚。

「3!!」

一気にカードが増えて辺りを舞う。

「わー!!!」

澪が状況も忘れて笑う。

「ありがとう。澪ちゃん。」

「えっ?」

「私に色々教えてくれて。」

「なーんにもしてないよ?」

「それでもありがとう。」

巨人を見る。

「今ならなんでもできそう。じゃあお兄ちゃんたちを笑わせてくるね?」

「え?」

「ワン、ツー、スリー!」

シルクハットを投げる。ポンという音と少量の煙が上がり、ひまりが姿を消す。

「ひまりちゃん?」

シルクハットは巨人の方へ飛んでいった。


       ♢ ♢ ♢


「なに、あれ……。」

飛んできたシルクハットが悠真に当たると煙が吹き出した!

「悠真くん!」

巨人が腕を振る。

煙が晴れると悠真が姿を消していた。

「……えっ?」

次の瞬間――

「じゃーん!!」

栞の後ろに悠真とひまりが立っていた!どこからか紙吹雪が空を舞う。

「……ひまりちゃん?」

「笑って!」「笑って!」「笑ってよ!」

中型の夢人たちが手を伸ばす。

「もう大丈夫。」

トランプを投げる。途中でトランプが鳥に変わる。

夢人を鳥が覆い、動きが止まる。

「これは……。」

「マジック?」

真琴も合流してひまりを見つめる。

栞がひまりを見る。

ひまり自身も驚いていた。

「私……こんなこと……できたんだ。」

巨人の腕が、ひまりへ向かって振り下ろされる。

「危ない!」悠真がかばいに入る。

「大丈夫!」

ひまりが何かを地面に叩きつけると煙幕がでる。

腕が煙を叩くが誰もいない。


ポン!少し離れた位置に全員が姿を現した。

「瞬間移動?」

「…すごい。」

「なんじゃ!」

近くにいた九条が合流した。

ひまりは、みんなを見る。

笑っていない自分を見ても、離れていかなかった人たち。

ひまりは、ゆっくりと一歩前へ出た。

そして――

「……私も。」

手の中でカードを扇状に広げる。

「私も……一緒に戦う!」

その言葉と同時に、無数のカードが空へ舞い上がった。

大変お待たせして申し訳ありません。活動記録でも言い訳してます。

お楽しみいただけてたら嬉しいです。

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