浅眠ー3
活動報告にも書きましたがX始めました。
これからは更新したらそちらでも告知します!
栞の言葉を聞いて真琴も少し考える。
「確かに……。職員室にいた教師も、用務員さんも。保健室の先生も。疲れた顔をしてる人が一人もいない。」
「わしは今の学校は知らんがな?学校っちゅうのは子どもたちが泣いたり笑ったりしてもっと騒がしいもんじゃ。」
「ここは確かに楽しそうじゃが、気づいてみると気味が悪いの。」
「あの笑顔に何か意味があるって事ですかね…?」
真琴が立ち上がる。
「じゃあ試そう。こういう時は思いついた事をやってみてデータを集めるんだよ。」
みんなで校舎に入って、いつでも離脱できるようにしながら夢人へ話しかける。
「こんにちは。」
「こんにちは!」
「今日暑いですね。」
「はい!今日も最高ですね!」
自然だ。違和感なし。
まるで暑い日が本当に素晴らしいと思っているみたいに。
真琴が強く違和感を感じたようだ。
「…よし、次行こう。」
「こんにちは。」
「こんにちは!」
「あの先生って怖いですよね?」
すると夢人は
一瞬だけ笑顔が止まる。
「…………。」
次の瞬間、また笑顔に戻った、
「またまた〜先生は素敵な先生ですよ!」
まるで
誰かに笑顔に訂正されたみたいに。
全員の違和感が確信に変わる。
その後もパターンを変えて話しかけてみたが
「テスト嫌じゃない?」
「………楽しいです!」
「宿題多いよね?難しいでしょ?」
「………そんな!自分の力になるので嬉しいです!」
「部活きつい?」
「………毎日できて幸せです!」
決定的だったのは学食だった。
ご飯を運んでいた学生が九条さんとぶつかり、跳ね返され、食事がこぼれてしまった。しかもこぼれた一部が座っていた他の生徒にもかかってしまう。
「おっと、すまんかったの。」
一瞬学生の表情にノイズが入る、、、笑顔。
「大丈夫です!そちらも大丈夫でしたか?」
「お…おう。大丈夫じゃ。」
「それは良かった。君もごめんね!」
かけられた学生にも声をかける。かけられた方も笑顔で「大丈夫!」
九条さんも固まった。
何があっても全部いい笑顔で全部楽しいような返事になるようにに改変されている。
「気づいて見ておると気味悪いの……。」
「えぇ……これは酷いセカイよ。」
ふと校庭に目を向けると人だかりができていた。その中心にいるのは笑顔で友達と話す少女。
「やっとみつけた!」
七瀬ひまり。
笑顔で周りの人と会話をする様子はまさに中心人物。人当たりも良さそうで誰からも好かれている感じがする。
「普通の子だね。」
澪がポツリと言う。
「見てる場合じゃ無いよ!近くに行って話しかけないと!」
指を鳴らし出てきたボタンのような物を栞に渡す。
「やってみて。」
「えぇ。」
糸を伸ばす。話しているひまりに近づいて…靴に先程のボタンを貼り付けた。
「あれは?」
「発信機。このセカイの中なら追跡できる。」
「まさかあっさりつけさせてくれると思わなかったけど。」
「…追いかけて話をしてみましょう?警戒はしたままで。」
今は休み時間だろうか。廊下にたくさんの学生が出ている。
「…いた。」
「誰が行く?」
「そりゃナンパに慣れてる悠真くんでしょ。」
「慣れてない。」
「……慣れてるの?」
栞さんの目線が厳しい!
「慣れてないって!」
「お兄ちゃんはナンパが好きなの?」
澪が素直に聞いてくる。
「やった事もないんだ。信じてくれよ…」
俺はその場に崩れ落ちた。
「まぁ冗談はさておき、1番話しやすそうであの中に入って違和感無いのが悠真くんなんだよ。」
「冗談にしてはダメージが大きいです…。」
「お兄ちゃんナンパ頑張って!」
「ナンパはしないけどな。行ってみるよ。」
仕方なく悠真が近付く。なんとか人をすり抜けて、見える位置へ。
「七瀬さん。」
「はい?」
不思議そうにこちらを見る。
ー可愛い。
(いや、何考えてるんだ。)
反応は普通。受け答えも自然。
違ったのは周りだ。
悠真が次の言葉を出す前に周囲の女子達が
スッと集まってきて
「ひまり!」
「次移動教室だよ!行こう!」
「急がなきゃ!」
自然に話を遮り、ひまりを連れて行ってしまった。
その後も追いかけて声をかけるが
「少しだけ話を——」
「ごめんね!私が先!」
笑顔。笑顔。笑顔。
やっとひまりまで声が届いても
「帰るとこだからまたね!」
笑顔で去ってしまう。すぐに後ろは学生で固められた。
屋上で反省会。
「全然ダメだった…」
「偶然?なのか毎回邪魔が入る。」
「悠真くんのナンパが下手だったのかは置いといて、あれは偶然じゃ無いね。」
2回目は男子。その次は先生。今度は女子グループ。
必ず誰かがひまりを囲む。
「メンバーが違っても必ず誰かがひまりちゃんのカバーに入って1人にしないようにしてる。まるで私達と接触させないようにしてるみたい。」
一人にならない。話すらさせてもらえない。
「護衛かな?無理な話すとみんな敵に回るかも。」
「…私は違うと思う。」
栞が続ける。
「あれは多分監視の目。それも私達じゃなくてひまりちゃんを見てる。」
「それは…どう言う事?」
「…まだわからない。し、確信もない。」
その時澪が小さく言う。
「ひまりちゃんねニコニコでかわいいんだけど…目が笑ってないの。」
一瞬静まる。
「ちょっと怖かったかな。」
栞だけが頷く。
「……私もそう思った。」
真琴が立ち上がる
「ダメだ!今日はここまでにしよう!」
「情報が少なすぎる。これ以上無理に動いて警戒されたら困る。」
「でも……。そうしてる間にもひまりちゃんは、」
指を立てられ止められる。
「だから、現実で調べよう。」
「学校のこと、家族のこと、友達、過去。前よりも詳しく。」
「助けるためにはまず知らないと。説得できないしこのままじゃ話もできない。」
九条さんも立ち上がる。
「そうじゃな。夢だけ見ても分からん。現実も見んとな。」
笑顔で帰宅する夢人たちと一緒に学校を出る。
みんな笑顔。笑顔。笑顔。
1人、教室の窓からひまりが笑顔でその様子を見ている。
そのひまりがほんの一瞬、誰にも見えない角度で笑顔を消す。
疲れ切ったような無表情。
「あの人たちー笑ってなかったな…」
書き溜めた分は放出してしまったので更新ペースは落ちます。毎日できるようにはがんばりますのでよろしくお願いします。




