浅眠ー2
「さて、みんな揃ったかな?」
いつもの会議スペース(真琴作)にみんなが集まる。
真琴がスクリーンを表示する。
「今日の候補はレベル4。」
画面には一人の女子高生。
「名前は七瀬ひまり(ななせ ひまり)ちゃん。16歳の高校二年生。クラスでは割と中心にいる人で成績良好、人当たりも教師からの評判もいい。まさにパーフェクトJK。」
写真には笑顔の少女。友達とも笑顔で映っており明るく、人懐っこい印象の女の子だった。
「思っていたより普通の子だね。」
あっけなく思いながら悠真が聞く。
「おっ、惚れちゃったかな?だめだよ〜JKは。おねーさんにしときな?」
「いや、惚れたとかじゃなくて、夢よりも現実の方が楽しそうな子だろ?なんでレベル4になるくらいになったんだろうなって、」
「そう。そこが問題。」
次の資料。
○月○日 突然眠り病を発症
原因不明。
外傷なし。
精神疾患歴なし。
現在昏睡状態のまま7日目を迎える。
部屋が静かになる。
「原因が何もわかってないの。」
「家庭も学校も調べたけど、大きな問題は見当たらない。」
「レベル4になった理由が見えないのよ。」
九条が腕を組む。
「難しいの。」
真琴が続ける。
「九条さんの時は『戦いたい』という願いが見えた。でも今回は入口すら分からない。」
「じゃあどうするの?」
澪が聞く。
沈黙。誰も手が思い付かない。そこで九条が笑う。
「夢はの。」
皆が九条を見る。
「行ってみな分からん。」
「剣でも人生でも同じじゃ。考えるだけでは前へ進まん。」
「まず見て、感じて、それから考えればええ。」
真琴が笑う。
「九条さんらしいね。」
悠真も苦笑。
「……そうですね。」
栞も頷く。
「行きましょう。」
車で移動し、病院の前へ。いつもの入り口の揺らぎを探す。
「あったよー!」澪が見つけたようだ。
「じゃあみんな準備はいい?」
緊張しながらも頷く。
みんなの頷きを確認してから
「じゃあひまりちゃんを起こしに行こう。」
揺らぎを広げ、穴にして突入。
光に包まれ、浮遊感が収まるとー
普通の住宅街だった。
「普通…だな。」
「…油断はしないでね。」
キーン、コーン、カーン、コーン…
突然チャイム。全員が警戒する。
前の通りを走っていく学生達。
「学生?」
「……驚いたわね。あれは、全員が夢人よ。」
「学校があるなら行ってみんか?ひまりちゃんとやらも学生じゃろ?そこにいるかもしれん。」
「そうですね。行ってみましょうか。」
学生の波と一緒にしばらく進むと大きな学校が見えてきた。
「おはようございます!」
校門では学生が元気な挨拶をしている。
その横を制服姿の生徒達が歩いていく。
木漏れ日の中で朝練をしている生徒、
笑い声。
「普通だね。」
前から様子を伺いながら真琴が言う。
「なんじゃ、今の学校っていうのはかなり広いんじゃなぁ?」
「……夢人がいっぱい。」
「いいな〜制服かわいい!」
生徒達全員が夢人で先生も夢人。今のところ夢人でない人は見当たらず、自然に登校している。
校舎も見える範囲ではおかしな所は無さそうだ。
「…じゃあこれからどうする?」
「どうもこうも入るしかないじゃろ?」
しかし、そのまま歩くと当然目立つ。
「俺達だけ浮いてるよな?」
突然、通報されそうな程学生を見つめていた真琴が振り向く。
「よし。イメージできた。」
「悠真くんはサイズLでいい?九条さんと澪ちゃんは…まぁ細かいところは各自調整して。」
指を鳴らす。
歩いていく学生達と同じ制服が生成される。
男子はブレザー。女子はセーラー服。
「すごい!かわいい!!」
受け取った澪が飛び跳ねる。
「じゃあ女子はその路地にでも行こうか。簡単だけど着替え場所作ってあげる。」
「俺たちは?」
「その辺で適当に。」
「扱いが酷い…」
「覗くなよ〜」
笑いながら女性陣が路地へ消える。
悠真達もせめて校門から見えない位置に行き着替える。
「久々の制服だな…」
「なぁ、着方はこれでえぇんか?」
九条さんがかっこよく…若返ってる?
「せっかくだからな。見た目も18くらいにしてみたわい。学生の中で浮かん方がええじゃろ?どうじゃ?」
「カッコいいですよ。今の気分は?」
「若返った気分じゃ。」
「違いない。」
話しながら戻ると
「お兄ちゃーん!」
飛びついてくる妹。よく見てみると
控えめに言って天使がいた。
「似合う!!!」
「えへへ。ありがとう。お兄ちゃんもかっこいいよ!」
「ちょっと〜おねーさん達には感想は無いのかなー?」
後ろには同じ制服姿の栞と真琴さんがいた。
「似合ってます。かわいいです。」
「そっ。ありがと。」
栞は真琴の影から出てこない。
「あの…こういう服は…初めてだから…」
「栞も似合ってる。かわいいよ。」
栞の顔が赤く染まる。
「でもやっぱり、一番似合うのはうちの妹かな。」
栞の目線に怒りがこもる。
パァン!
張り手1発。
「…なんででしょう。」
「…自分で考えるんじゃな。」
少し笑いが起きる。緊張が和らぐ。
「じゃあ。入ろうか。」
普通の生徒として歩く。
今のところ夢人達からも違和感なく受け入れられている。
教室。廊下。食堂。校庭。
どこも青春そのもの。
「ええ学校じゃ。」
「…急に真琴が話かけた時はヒヤッとした。」
「あはは。どうなるか試してみたくてね。」
再びチャイム
「かなり広いから手分けして探そうか。」
「悠真君は澪ちゃんと私。九条さんと栞ちゃんのチームで別れましょう。」
「栞、あれをお願い。」
「…わかった。」
栞が糸を伸ばす。各人の手首に巻きつき見えないくらい薄くなる。
「これは?」
「これも私の能力。繋がっている間は私には大体の位置がわかるし、強く念じれば意思も伝わる。」
《こんな風にね!》
口を開けて無いのに真琴さんの声が聞こえた。
「すっごーい!」《すっごーい!》
「澪、口にも出てるぞ。」
「えぇ!?そんな事ないもん!」
「じゃあ昼休みに集合で。話せそうな場所見つけたら今ので教えて。」
プンプンする澪を笑いながら別れて探索を開始した。
キーン、コーン、カーン、コーン…
学生達の動きを見るに昼休みになったようだ。
打ち合わせ通り屋上へ集まる。
「どこもかしこも普通だねー。」
「普通じゃな。目新しい物はたくさんあったが。」
「先生達も普通。なんなら質問したら普通に勉強教えてくれたよ。」
「特別教室や体育館も異常なし。」
「剣道部は少し見てみたかったのーこの後部活動まで見れるじゃろうか?」
「みんな優しかったよー!」
全員笑う。
しかし栞だけ黙っている。
「どうした?」
「……違和感がある。」
全員静かになる。
「みんな笑ってる。」
「それだけ。」
「……?いい事じゃないか?」
「怒ってる人も。眠そうな人も。落ち込んでる人も。一人もいない。一瞬顔が変わる事はあってもすぐに戻る。」
「まるでハンコを押したみたいにみんな同じ笑顔。」
悠真も思い返す。
確かに。先生も生徒も。掃除のおじさんまで笑顔だった。
「いいことじゃないの?」
澪が聞く。
「……本当に?」
空気が少しだけ冷えた。
前章と比べるとホラーっぽくなりそうです。




