黎前ー2
遅くなりました。
腰のベルトへ手を添える。
「アストレンジャーなら……。」
静かに目を閉じた。
俺は何に憧れた。何を信じて変身した。
戦うためじゃない。守るためだ。
だったら。
「……そうだ。」
頭の中へ一つの映像が浮かぶ。
妹と一緒に見ていたテレビ。
巨大な獅子。
荒野を駆け、巨大な敵に立ち向かう赤い星獣。
幼い頃、テレビの前で澪と何度も応援した。
「ライガーだ……。」
自然と言葉が漏れる。
「ライガー?」真琴が聞き返す。
悠真は頷く。
澪も気づき、顔が明るくなる。
「ライガー!そうだよ!お兄ちゃんライガーなら!」
「アストレンジャーには、味方の星獣がいるんだ。」
「俺たちは毎週見てた。」
「最後にみんなの星獣が集まって戦うんだ!」
でも、呼べるのか?
いや、呼べる。
仲間の武器も呼ぶ事ができた。きっと呼べる。
仲間も。星獣も。全部あの世界にはあった。
だったら。
「できる。」
悠真はベルトに手を当てた。
静かに、でも思いを込めて。
「来てくれ。ライガー。」
ベルトから赤い光が空へ伸びる。
雲を貫き。夜空に巨大な星座が描かれる。
獅子座だ。
星々が一本の線で繋がる。
その光景に真琴が息を呑んだ。
「星座が……。」
栞も見上げる。
「これも能力……。」
異形が空を見上げる。
「……力。」
黒い刀を振り上げる。
「力を寄越せぇぇぇ!!」
こちらに気付き向かってきた。
その瞬間。
轟音。そして、まるで隕石が落ちるような衝撃。
道場跡の瓦礫が吹き飛び、大地が割れる。
赤い光の柱が俺たちと異形の間の地面に突き刺さる。
光が収まり土煙がはれると
そこにいたのは巨大な獅子。
赤い装甲。黄金の鬣。目は青白く輝き。
金色の四肢の爪が地面へ深く食い込む。
星獣ライガー。
「すげぇ……。ライガーだ……」
悠真自身が一番驚いていた。
ライガーは静かにこちらを見る。まるで主人を確認するように。
「乗れ……ってことか。」
ライガーが前足を下ろす。
悠真は迷わず前足に飛び乗った。
持ち上げられ鬣へ触れた瞬間。
視界が白く染まる。
気付けばテレビで見たのと同じ操縦席だった。
「え。」
思わず辺りを見回す。
操縦桿もレバーもない。
代わりに目の前へ星空のようなキーボード?らしき物が広がっている。
「確かアストレンジャー達は…」
星空に手をかざす。
頭の中へ自然に声が流れ込んできた。
『想え。守りたいものを。』
ライガーが動くのがわかる。操縦じゃない。一緒に戦うのだと。悠真は直感的にわかった。
「そういうことか。」
「俺は九条さんを止めたい。手伝ってくれるか?」
返事はない。しかしライガーの体に力が漲るのがわかる。
「行くぞ!」
異形も咆哮を上げながらこちらに巨大な黒刀を振り下ろす。
ライガーは真正面から受け止めた。
ギィィィィン!!
火花が夜空へ散る。
「負けてない!」
真琴が思わず叫ぶ。
「いっけー!」
澪も叫ぶ
ライガーは四本脚を踏ん張り、一歩も引かない。
悠真が叫ぶ。外にも聞こえる。「九条さん!聞こえてるんだろ!」
異形が暴れる。更に刀を振り回す。
ライガーも吠える。立ち上がり押し倒そうとしたり、体をぶつける。
「うおおおお!!」
その隙に栞が糸を放つ。
「私たちも!」
「オッケー!」真琴もすぐ動いた。
糸が異形の脚へ巻き付く。
「生成!」指を鳴らす。
「ボーラシューター!」
異形の副椀を発射したボーラで絡めていく。
ライガーが体当たりする。
ズドォォォン!!
異形が初めて膝をついた。
「やった!」澪が叫ぶ。
「このまま抑え込む!」
ライガーが抑え、真琴と栞が拘束を
しかし。黒い靄がさらに膨れ上がる。
「まだ……。まだだ。足りぬ。」
「もっと力を!」
拘束が軋む。
「まずい!」真琴が叫ぶ。
「まだ強くなるよ!抑え切れない!」
拘束が外れ始め、ライガーも押され始める。
それでも悠真は叫び続けた。
「九条さん!これでいいのか!あなたの求めた一太刀が、人生が、そんな姿でいいのか!」
話を。あなたを傷つけたくない。
異形の動きが一瞬止まる。
澪が一歩前に近づく。
「九条さん…がんばったんだよね。」
「もう一度だけ。本当の九条さんと話がしたいな。」
祈るような、語りかけるような声。
異形の動きが鈍くなる。
「……頑張った。」
老人の声。九条の声だった。
「そうだよ。」
澪がさらに前へ一歩出る。
みんなが止めようとする。
「澪ちゃん!」
「今はダメ!下がって!」
「澪!下がれ!」悠真も叫ぶ
「お兄ちゃん。大丈夫。信じて。」
澪はさらに近づきながら語りかける。
「九条さん。あなたが本当にしたい事はなに?」
「……わしは、、」
「大丈夫。いっぱい頑張ったね。」
その言葉に、異形の奥で、
老人がゆっくりと目を開いたような気がした。
黒い靄が、苦しむように揺らぐ。
できる。今なら九条さんを傷つけずに助けられる。
どこからかわからないがそんな確信があった。
ライガーの上に飛び出す。レグルスセイバーを構える。
お願いだ。俺に。
あの人を助ける力を!
願いに剣が答え、真紅のオーラが剣を包む。
「グァあぁぁア!!!」
異形が力を込めて拘束を振り払った。
体勢を崩したライガーから飛び降りる。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
その勢いで悠真はオーラを纏った剣を突き刺した。
「帰って来い!九条さん!」
「レグルス・フラッシュ!!」
剣を持ち替えてそのまま切り上げた。真紅の柱が立ち昇る。
真紅の光が異形を真っ二つに裂く。
裂け目から、一人の老人が静かに零れ落ちた。
「九条さん!」悠真が受け止める。
その向こうで、黒い怪物だけが地面へ叩き付けられる。
老人と怪物。二つは完全に分かたれた。
必殺技の名前は悩んだ挙句一周回ってシンプルにしましたが…いかがでしょうか?




