第6話 交渉決裂
その頃、ロシアでは・・・
「大統領!偵察衛星からの映像報告が上がって来ましたが、アメリカで発生したモンスター、ついにペンタゴンにも侵入して破壊し始めたようです!」
「おお、そこまで行ったか!」
「これは好機です!」
「うむ、お前の言いたいことは分かるぞ」
「はい。ペンタゴンを襲っている魔物をやっつけるためにミサイルを撃ち込んであげましょう!」
「そうだな、助けてあげないといけないな」
「近くにホワイトハウスがありますが、巻き込まれてもしょうがないですよね?」
「ああ、残念だがしょうがない!少しでも早い方がいいからすぐにやろう!」
「はい!」
ただちにロシアから大陸間弾道弾がペンタゴン目がけて発射された。
ホワイトハウスでは・・・
「副大統領!大変です!」
監視衛星のモニタを担当していた捜査員の一人が叫んだ。
「なんだ?どうした?」
「ロシアからこの国に目がけて大陸間弾道弾が発射された模様です!」
「なんだとお!?モンスターの対処だけでも大変だって時に、ロシアの野郎、なに考えてんだ!おい!迎撃システムはどうなってる!?」
「はっ!確認します・・・・・モンスターに破壊されていて機能していません!」
「なんだとお!アラスカのはどうなった!あそこは、まだ、モンスターに襲われてないだろう?」
「確認します・・・・・本土側にある制御装置が破壊されているようです!」
「なんだとお!・・・それで、目標はどこなんだ!?」
「今、確認します・・・・・ペンタゴンです!こっちに向かって飛んで来ます!」
「ウソだろ!?ここは、ペンタゴンから2マイルも離れてないんだぞ!到達時間はどれくらいだ!?」
「・・・・28分です!」
「うわあぁぁぁーーーー!」
それを聞くと、部屋の中にいた人間が一斉に逃げ始めた。
「こら待て!お前たちどこへ行く!仕事を続けろ!」
「バカ言ってんじゃねー!ここにいたら絶対巻き込まれるだろうがよ!」
捜査員の一人が走りながらそう捨て台詞を吐いて出て行った。
「おい!・・・おい!」
次々に部屋を飛び出して行く捜査員に対して副大統領は呼び掛けたが、もう、誰も振り返らなかった。
「・・・俺も逃げよう」
結局、副大統領も部屋を飛び出して行った。
大統領専用機が離陸する前、国務長官の車でも、大統領専用機のタラップの両側に立っているのが人間でないことに気付いていた。
そのまま見ていると、タラップの上にミノスが現れたので、この飛行機がモンスターに占拠されたことを悟った。
それでも大統領の車が動かないのでそのまま様子を伺っていると、大統領が出て来て何か話をしたあと首席補佐官を伴って飛行機の中に入って行った。
「私も行くべきかな?」
国務長官が護衛のSPに聞いた。
「いえ、まずは様子を見に行ったんだと思います。それで、状況が悪ければ国務長官だけでも逃がそうとされているのかも」
「なるほど、では、このまま待とう」
そう言った直後、タラップの両側にいたモンスターが機内に入り、タラップが収納されたと思ったら、すぐに飛行機が動き出した。
「あれ?滑走路に向かって行くぞ?」
それからは、あっという間に滑走を開始して離陸して行った。
「え~?置いてけぼりぃ?」
「これは、やはり国務長官だけでも逃げろと言うことではないかと思います。どちらに参りましょう?」
「そうなのかなあ?まあ、もうしょうがないからそこらへんの格納庫に行ってくれ」
「それは、どういう?・・・」
「ここまでの道路の状況見ただろ?車での移動は無理だから、格納庫の中にある機体をそこにいる整備兵に整備させて飛行機で移動するんだよ」
「なるほど!わかりました!」
国務長官の車が一番近い格納庫に向かい始めると、先導していた3台も追って来た。
「で、聞きたいことってなんだ?」
大統領専用機がある程度の高度に達したところでハーデスが大統領に向きなおって聞いた。
「貴殿は、なぜ我が国に攻撃を始めたのだ?大まかな理由はさっきの放送で聞いたが、納得がいっていないし、もっと細かい情報が欲しい」
「お前たちから攻撃を受けたから反撃した、ということだ」
「それがわからない。我々には、貴殿のいる冥界を攻撃した覚えはない。何かの間違いではないのか?」
「王都の半分が破壊されたのだぞ!間違いであるはずはなかろうが!」
ミノスが怒りのこもった声で言った。
「その王都というのは、この国の地図で言うとどのあたりだ?」
「お前たちが第14サイロと呼ぶ場所のそばにある地下実験施設の真下だ」
「あっ!」
そこで主席補佐官が声を上げた。
「なんだ、どうした?」
大統領が聞いた。
「その施設では、本日、新型の地下高性能爆弾の実験が行われていたはずです。もしかすると、それが冥界まで落ちて爆発したのかも」
「なに!?・・・あれは今日だったか」
「そうです」
大統領はハーデスの方に向き直った。
「申し訳ない。攻撃したのではなく不幸な事故だったようだ」
「事故で済むような状況じゃないだろうが!」
ミノスが再び怒鳴った。
「それはわかっている。ただ、こちらに攻撃する意思はなかったということが言いたかったのだ」
「なんだと?お前の国じゃ、誤って人を殺しても罪に問われないのか?」
「・・・いや、そういうことはないが・・・」
急にハーデスの表情と声音が変わったので、大統領は緊張した。
ハーデスは、立ち上がると大統領の前までやって来た。
「まだわかっていないようだな。お前たちの軍事施設の位置は全て押さえてある。我々がその気になれば、人間などすべて地表から消し去ることができるのだぞ」
ハーデスは、人間よりはるかに大きい手を使い、片手で大統領の頭を掴んで空中に釣り上げた。
「わかった!・・・いや、わかりました!なんでもしますから言ってください!」
「ふん」
ハーデスは手を離した。大統領は、ドスンという大きな音ともに尻からソファの上に落下した。
「お前の国が単独でやったことだと言うのは認めてやるから、今から言う条件を飲めばヨーロッパとアジアへの侵攻はやめてもいい」
「あ、ありがとうございます!」
大統領の顔は、すっかり恐怖で青ざめていた。
ハーデスは、ミノスにアゴで合図をすると先ほどまで座っていた椅子に戻った。ミノスは、机の上に置いてあった紙を取って読み上げ始めた。
「一つ、我々の一部は地表に定住することを目的とするので、この国の我々が決めた任意の場所を我々の居住地として提供すること」
ここで、大統領と首席補佐官の顔にひきつった驚きの色が浮かんだ。
「二つ、アメリカ中いる野生動物ならびに家畜、農作物について、定住者が希望する量を食料として提供すること。
三つ、我々の種族は多岐にわたるため、寒い場所を好む者、暑く湿気の多い場所を好む者等が存在する。よって、カナダ北部に点差在する島々と、南米に広がるジャングルを我々の居住地として提供すること。
これらの条件を飲めば、他国への侵攻を取りやめ、これ以上この国の民間人へ危害を加えることを行わない。以上だ」
「わ、わかりました!国内の要望については、すぐに手配します!」
そこで大統領は、一度つばを飲み込んだ。
「それと、カナダとブラジルとは、この機体が着陸次第交渉に入ります!」
「交渉だと?何を曖昧なことを言ってる!」
ハーデスが大統領を睨んで言った。
「あ、すみません、すみません!間違いなく指示通りになるよう至急連絡します!」
「そうしろ。ところで、この飛行機はどこへ行くんだ?」
「ハ、ハワイです」
「おう、あの海の真ん中に浮かぶ島か。海が良く見えてよさそうだな」
「はい」
ピーピーピーピーピー!
そこで室内にけたたましい警告音が鳴り響いた。
「どうした!?」
首席補佐官が後ろにあったインターホンに向かって怒鳴った。
「ロシアからICBMだと思われるミサイルが飛んできます!目標はペンタゴンです!」
「なんだと!」
大統領と首席補佐官とSPの二人が振り返って窓の外を見ると、高速で何かが飛んできてペンタゴンの辺りに落ち、眩しい閃光の直後、巨大なキノコ雲が立ち上っていくのが見えた。さらに、爆風の裾は大きく広がっていき、ホワイトハウスを含む周辺の施設が巻き込まれたのは明白だった。
ピピピピ!
その直後、ミノスが腕にはめていた腕時計状のものが鳴った。
「どうした?」
ミノスは、それを顔の高さまで上げて、それに向かって聞いた。
「少し離れたところから見ていたんですが、ペンタゴンに何かが飛んできて爆発しました!」
「ペンタゴンの中にいた者はどうなった?」
「爆発した瞬間、建物全体が溶けるように崩壊したので、恐らくダメかと・・・」
「貴様ぁ!指示に応じるふりをして油断させておいてこれか!」
ハーデスが怒りの表情で立ち上がって怒鳴った。
「い、いえ、これはロシアがやったことで、私の指示ではありません!」
「うるさい!言い訳するな!さっきの話はこれでご破算だ!ヨーロッパとアジアもこの国のようにしてくれるわ!」
「そ、そんな」
「お前たち二人は、まだ利用価値があるかもしれんからここにいろ。黒服の二人は、縛り上げて貨物室にでも放り込んでおけ!」
「はっ!」
ミノスが手を二つ叩くと、奥の部屋から魔族が出て来て、SPを片手で一人ずつ摘み上げると戻って行った。
文中の大統領専用機の写真はウィキペディアから、地図の俯瞰イラストは、Googleマップから引用しました。




