↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に玉の輿  作者: 伊部九郎
序章 冥界の始動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/17

第5話 アメリカ大統領

 その頃、アメリカ大統領のニューカムはホワイトハウスにいたが、大統領執務室ではなく大会議室にいた。

 そこには多くの通信機材、各地の固定カメラと人工衛星カメラの映像を映す複数の大型スクリーンなどが設置されており、30数名の人員がそれぞれの機材に割り当てられていた。

 室内には、大統領以外にも、副大統領のローリー、大統領主席補佐官のライアン、国務長官のジェンキンスがおり、それぞれが椅子にも座らず、イライラした様子で細かく動き回っていた。

 スクリーンのいくつかには、人工衛星カメラによる破壊されつくされた軍事基地の様子が映し出されていた。


「まだどことも連絡がつかんのか!」

 一人、椅子に座っていた大統領が通信機材に向かっている者たちに向かって怒鳴るように言った。

「はい!すでに1時間経ちますが、どの基地からも応答がありません!」

「このワシントンDCにまでは被害は及んでいませんが、あの基地の様子からすると、すでに他のすべての基地は破壊しつくされているのでないでしょうか?」

 主席補佐官が、破壊された基地が映っているスクリーンを指さして言った。

「そんなバカなことがあるか!我がアメリカがこんなに簡単にやられるはずがない!」

「そのお気持ちはわかりますが、もう、事実として受け入れて次の策を考えた方が・・・」


 そこで、ホワイトハウスの前庭を映したカメラに、多数の小さい黒い影が左から右に斜めに高速で移動して行く様子が映った。


「なんだあれは!」

 国務長官が叫んだ。

「各基地を襲ったモンスターだと思われます!」

「なにっ!?・・・あの方向は国防総省(ペンタゴン)じゃないのか!?」

「そうです!」

「空軍はなにをしている!」

「・・・もう機能していないと思われます」

「そんな・・・」

「大統領、ペンタゴンにはろくな防衛施設がありませんから、ここも襲われる可能性があります!すぐにアンドルーズ空軍基地へ移動を!あそこはまだ被害にあっていません!」

 主席補佐官が言った。

「まだだ!まだ、ここで連絡を待つんだ!」

「それは、ほかの者に任せましょう。大統領に何かあったら、本当にこの国の機能が失われてしまいます!」

「同感です!」

 国務長官も同意した。


「・・・わかった・・・・・ローリー、ここに残って引き続き各地からの連絡を待ってくれ」

「ええええっ!ほかの者って私のこと!?絶対あいつらこっちに来るじゃないですか!」

「そうとは限らんだろう。大統領が移動して行くのを見つけたら、そちらを追って行く可能性もある」

 主席補佐官が言った。

「ええええっ!?じゃあ、ここにいた方が安全じゃない?」

 大統領がひきつった顔で言った。

「いえ、ただの可能性の話ですから。車の中までは見えないと思いますので、基本的には大丈夫かと」

「じゃあ、やっぱり私が危ないんじゃないか!」

 副大統領が主席補佐官に噛みついた。

「大統領の次の権限を持つのはあんたなんだから、あんたがここにいなきゃダメでしょ?」

「そうだぞローリー」

 大統領は、椅子から立ち上がると、副大統領の両肩をポンと叩いて言った。

「・・・それでは、行こう!」

 大統領は、主席補佐官と国務長官を引き連れて部屋を出て行った。


「そんなあ・・・」

 一人残された副大統領は、呆然とした顔で立ちつくしていた。



 大統領は、主席補佐官、および護衛のSP二人と大統領専用車に乗り込んで3台の護衛車両に先導されながら移動を開始した。国務長官の乗った車はそのあとに続いた。

挿絵(By みてみん)


 ルルルルル!


 走り出して5分もすると、主席補佐官の携帯電話が鳴った。


「副大統領からです」

 電話に出た主席補佐官は、大統領に携帯電話を渡した

「なんだ?」

「大統領!さっき飛んで行ったモンスターたちがペンタゴンの壁を破壊して侵入しました!建物のそこらじゅうで大きな被害が出ています!」

 携帯電話からは副大統領の悲痛な声が聞こえて来た。

「・・・そうか」

 大統領は、この事態を予想していたので返事はそっけないものだった。

「私、というかこのホワイトハウスにいる者たちも避難した方が良くないですか?」

「ダメだ。お前は引き続き、そこで各地の監視と連絡待ちを続けてくれ」

「そんな~!」

 副大統領の悲痛な声が聞こえてきたが、大統領は電話を切った。


「やはり侵入されましたか」

 主席補佐官が携帯電話を受け取りながら言った。

「ああ、あそこはもうダメだろうな」

 大統領は、渋い顔で腕を組んだ。



 移動することを見越して事前に交通規制はしていたものの、道路のあちこちで衝突事故と、それに伴ういさかいが発生していたため、通常は30分で移動できる距離に1時間を費やした。



「大統領専用機は事前に準備させていますので、すぐに離陸できるはずです」

 アンドルーズ空軍基地が近づくと首席補佐官が言った。

「うむ。それでどこへ行く?」

「アメリカ本土はどこに行っても危険でしょうから、ハワイへ行きます」

「なるほど、良い選択だな」

 そう言ったものの渋い顔は変わらなかった。



 アンドルーズ空軍基地に着くと、車はそのまま大統領専用機が駐機しているスペースに乗り入れたが、そこで運転手が異変に気付いた。

「主席補佐官、様子がヘンです!」

 後席の車内スピーカーに運転手の声が響いた。

「なにっ?どうした?」

「静かすぎますし、周りにも人の姿が見当たりません!・・・あ、でも大統領専用機のタラップの両脇には人が立っています」

「では、問題なかろう。タラップの前まで行け」

「はっ!」



 5台の車は、大統領専用機のすぐ横に進み、大統領の乗った車がタラップの目の前の位置に来たところで止まった。


「あっ!」

 しかし、機体の方を見たSPの一人が声を上げた。

「どうした?」

 主席補佐官が聞いた。

「タラップの両側に立っているのは人間じゃないです!」

「なにっ!?」


 大統領と主席補佐官がタラップの方を見ると、その両脇に立っていた人影は、SPのような黒いスーツを着て帽子は被っているものの、ライオンか豹のような顔立ちをした者たちだった。



 その少し前、大統領専用機のコクピットでは・・・


「おい。なんだか人が少なくないか?地上の誘導係はどうした?」

「いつあいつらが襲ってくるかわからないから、直前まで建物の中にいるんじゃないか?」

「ああ、そういうことか」

 そこで、パイロットの一人は左側の窓に顔を近づけて下を見下ろした。

「タラップの両側にはSPが立ってるみたいだから大丈夫だろ」

「そうか。管制塔にも人の姿があるし、黙って待とう」

「ああ」


 この時すでに管制塔は魔族に占拠されていたが、遠目にはそこにいるのが人間かどうかはわからなかった。




 大統領と主席補佐官が見ていると、タラップの上の機体の搭乗口に人影が現れた。


「あれは!・・・ミノス!」

「車を出せ!」

 SPの一人が怒鳴るように言ったが、

「待て!あいつと話がしたい」

 と、大統領が止めた。


「・・・わかりました」


 SPの二人は、先に車から出ると後席ドアの両側に立ち、上着の内側から拳銃を取り出してミノスに向けた。

 それから大統領は、あえて威厳を示すように悠然と車を降り、SPの間に立った。主席補佐官は、車の中に座ったまま心配そうにその様子を見ていた。


「遅かったな。お前がこの国の大統領か?」

 ミノスが聞いた。

「そうだ!お前は先ほど放送を流していたミノスだな」

「いかにも」

「なぜこんなことを始めた?ここまで徹底的にやる理由は何だ?」

「それはさっき説明しただろう?まあ良い。詳しいことが知りたければこっちへ来い。中でハーデス様がお待ちだ」

「なに?・・・わかった」


 大統領は、振り返って腰をかがめ、主席補佐官に向けて言った。

「ハーデスと話ができるらしいから行くぞ」

「は、はい」


 主席補佐官は、慌てて車から降りると、タラップに向かって歩き始めた大統領を追った。二人の前と後ろには、拳銃を両手で構えたSPがついた。


「その拳銃をこっちによこせ。死にたくなかったらな」

 前を歩いていたSPがタラップに足を掛けた瞬間、タラップの右側に立っていた者が言った。

「渡してやれ」

 大統領がそう言ったので、二人のSPはその者に拳銃を渡した。


(ミノスだけじゃなく、こいつらも普通に会話ができる人間並みの知能を持った生き物ということか)

 大統領は思った。



 大統領がタラップを上り始めた時には、すでにミノスの姿はなかったので、上りきると右に折れて、普段自分が使っている執務室に入った。


 中央の机の左側にある自分の席には、身長が7フィート(※約213cm)を超えると思われる顔立ちの整った見た目は人間の男が座っており、その脇にミノスが立っていた。


「この椅子、俺でもゆったり座れるし、座り心地もいいな」

 椅子に座っている男が、椅子を揺らしながら気さくな様子で言った。

「こちらが冥界の魔王ハーデス様だ」

 ミノスが言った。


「私がアメリカ合衆国大統領のニューカムだ。お前には色々と聞きたいことがある」

「ハーデス様に向かってお前とは、この不届き者!」

 ミノスが怒鳴った。

「まあ、良い良い」

「これは失礼した。では、貴殿と呼ばせていただこう」

「まずは座れ。それで、話は空に上ってからだ。離陸指示を出せ」

 ハーデスの言葉に、大統領は後ろにいた主席補佐官に向かって頷いた。

 首席補佐官は、横にあったインターホンを使って操縦席に離陸指示を出した。


 それから、二人は右側のソファに座ったが、SPの二人にも座るように言った。


「ほお、こんな感じなのか。飛行機というものには初めて乗るが、結構、振動が来るな」

 離陸滑走が始まると、ハーデスが窓の外を見ながら無邪気な顔で言った。


「おっ!振動が止まった!」

「浮かび上がったようです」

 ミノスが言った。

「そういうことか!」

 ハーデスは、楽しそうにしばらく外を見ていた。

 ウィキペディアから引用した大統領専用車(通称キャデラック・ワン)の写真を入れ忘れていたので追加しました(202610/13 1:14)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。