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闇夜を照らすマジカルミナ  作者: 水瀬はる
「新学期」編
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【第7話-可愛い女の子】

 一体どのくらい走っただろうか、ただ走って逃げるだけのアリスを、ルーフはちょんちょんと弓矢や風魔術を使って弄びつつ、飛行で移動して接近し続けていた。


 ルーフとの開いていた距離もかなり近付き、疲れ果てていたアリスは逃げるのを諦めて後ろ歩きで後ずさっていた。


「ねぇ、ちょっと話し合わない?一方的な攻撃って良くないと思うのよね!1人ずつでどうかな…?」


 アリスが体をふるふると震わせつつ怯えた声で問いかける。


「ふははっ!へぇ、面白い。君が僕相手に交渉するなんて、意外と度胸あったんだね。アリス?」


 不気味な笑みでじりじりとこちらに迫ってくるルーフに対してアリスは小動物のように怯えていた。


「ち、違うの、そんなつもりじゃ…!」


 そんな意味のないやり取りを続けて、時間を稼いでいたつもりだったアリスは、また1歩後ろに下がって気付いた。


 ── 壁だ…アリスはいつの間にか闘技場の端に来ていたのだ。


 アリスはハッと息を呑んだ。だが、もう遅い。


 アリスが3人の方に向き直ると、ルーフは弓を構え、両サイドの男子生徒2人は風の魔術の詠唱を始めていた。


「──さぁアリス、そろそろ遊ぼうか?」


 ニヤリと笑いながらルーフがそう言い放った時、アリスは彼らの後ろに人影があることに気付いた。


 その人影の大きさから、アリスはなんとなく小柄な女性だと思った。


(なっ、まさか、こんな所に生徒が!?来ちゃダメ!早く、早く逃げて…!)


 そんなアリスの祈りは届かなかったようで、その人影はそろりと動き出した。

 かと思うといきなり持っていた杖を投げ捨て、ルーフ達3人の背中を両手を器用に使って触り、何やら短い詠唱をした。


 それに気付き、後ろを振り向いたルーフは何故か鼻息を荒くして激怒していた。

 何を怒っているのだろう…などとアリスが考えているとルーフがすぐに大声で叫んだ。


「お前か、またお前か!!邪魔をするなといつも言っているだろう!!おい、フリル!!」


 どうやらこの少女はルーフに絡まれているアリス以外の、他の生徒も助けているらしい。


 フリルと呼ばれたその少女は、長い黒髪に宝石のような碧眼の、小柄で華奢な女の子だった。

 それは、とても呪術を扱っている人間とは想像できない風貌だった。


 アリスはその辺りで、ようやく彼女のことを思い出した。

 彼女がフリル・ミザリー。『呪術の加護』の継承者で、名門ミザリー家の長女だ。


 フリルは、ルーフ達を見上げて淡々と告げた


「今あなた達に他者への攻撃を禁止する呪いをかけた。もう良いでしょ?早く諦めて、大人しくこの場を去って。」


 こういったものは本来、相手を見下しながらの方が格好良いものなのだが、小柄なフリルにとっては冷酷な視線で相手見上げる事が精一杯らしい。


 そんなフリルの仲裁を受けて、少しの沈黙の後にルーフは、


「……ちっ。」


 と舌打ちだけを残して悔しそうにその場から去った。


 アリスは助けてくれた恩人に礼を言うために、すぐに口を開いた。


「…助けてくれてありがとうミザリーさん!本当に、とっても助かったわ!」


 アリスが心からの感謝を述べると、フリルは顔を背けて答えた。


「別にあなたを助けた訳じゃないわよ、男子生徒が3人も寄ってたかって弱い者いじめをしているものだから、呆れて止めただけ。」


 その言葉を聞いてアリスは少しの間硬直した。


 フリルがたった今告げた言葉に、ひとつ引っかかるものがあった。


「……え?弱い者…いじめ?つまり、私が弱いって、こと…?」


 その疑問に間髪入れずに「そうだけど。」とフリルがトドメの一言を放つと、アリスは先ほどまでうるうるしていた目から綺麗な涙を数滴こぼし、手で顔を覆った…。

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