【第54話-アリスの目的】
目的の服屋はそれほどまで遠くはなかったようで、思いのほかすぐに着いた。
と言っても、単に二人が魔術を無駄遣いして先を急いだだけなのだが。
「やっと着いた!昨日来たばかりなのに、なんだか懐かしい気分になる!」
「その時のオレは、お前が視界から外れるタイミングだったから結構ヒヤヒヤさせられたんだが」
そう淡々と文句を口にするミロに、アリスは思わず苦笑した。
「あはは…あ!そんな事より、早く行きましょー!」
「…アリス話逸らすの下手すぎないか?」
「お姉ちゃん分かりやすいの!」
ミロはともかく、ツヴァイにまで言われてしまっているのであれば、もう返す言葉などない。
だが、アリスはそのまま話を逸らし続けて、
「あの、最初は二人でお洋服探しててください!私は用があるので少し別の場所に!あ、ぜっったいに来ないでくださいね?」
そう言いながら口を両手で覆い、緩む口元を隠すアリス。
そんなアリスの内心の焦りが表に出たのか、ミロから聞こえたのは、
「やけに早口だな、了解した」
そのたった一言だけだった。
当のアリスも気付いていなかったが、知らぬ間に早口になっていたらしい。
だが、何故か幸いにもミロは受け入れてくれた。恐らく隠したい事情があると察してくれたのだろう。いや、もしくは…
「あの、本当に絶対見に来ないでくださいね?」
それは、アリスにとっては渾身の圧かけだったが、傍から見れば微妙な圧かけだった。その何とも言えない圧かけを受けて、ミロは不敵な笑みを浮かべて、
「あぁ、もちろんだ」
そうして、三人は店内に入ってすぐに、二手に分かれて進み始めた。
* * *
「わあああああ…」
広い店内を少し歩き、アリスは昨日と同じ場所に来ていた。
アリスが向かったのは、昨日も立ち止まった店内の一角だった。
アリスが惚れ惚れとしている視線の先には、一つの服がマネキンに着せられた状態で置いてあった。
それは昨日アリスが釘付けになっていたもので、ハイディたちが見ていたから買えなかったものだ。
「えへへ、キラキラ猫ちゃん…可愛い…」
そう、スパンコールで猫を模していた、明らかに子供用のあの服である。
アリスは躊躇うことなく、その服を手に取りすぐさまレジに向かって駆け出す。
「バレずに買ってしまえば、子供だなんて思われない…私の計画は完璧、大丈夫いける…!」
擬音を付けるとすれば「うおおおおお」という表現が一番似合いそうななイメージで、アリスは鬼の形相のままレジに向かう。
──が、その計画はあっさりと無に帰した。
「アリス、何でそんなの片手に持って走ってるの…もしかして買おうとしてる?」
首を傾げながらそう問いかける男に、アリスは咄嗟に片手で背中に服を隠し、恥ずかしさのあまり、もう片手で顔を覆った。




