【第55話-ボロい書店】
レジで購入を済ませて隠し切れたのなら、それが最善だったがバレてしまっては、もはやアリスは無敵の人である。
ミロに見られてしまった今のアリスに、引くという選択肢などもうなかった。
「…私は買っちゃダメですか?子供用なんて関係ありませんよね!私が買いたいから買うんです!だからそんなに見つめないでください、恥ずかしい…」
それだけ言い残して、ミロから遠ざかるように再びレジに走ったアリスは、残りのお金で無事に会計を済ませ、猫の服をゲットした。
その頃には既に先ほどまでの羞恥心などはアリスからは消えていて、「えへへ」といつも通り笑顔を浮かべていた。
アリスが買い物袋を手に下げ、ミロの元に駆け足で戻ると、ミロは何やら試着室を眺めていた。
「…ミロ先生、なんでボーッと試着室を眺めてるんですか?」
「決まってるでしょ、あの子が試着終わるの待ってるんだよ」
ミロがそう言い終わると、試着室の中から声が聞こえてきた。
「お着替え終わったなの!」
大きな声とともにカーテンが引かれ、中から一人の少女が飛び出してきた。
そこには、白のみを使った半袖のワンピースを着たツヴァイの姿があった。
おおよその予想はついていたが、思わず目の前に出てきたツヴァイを見てアリスは咄嗟に、
「可愛いぃぃぃ〜!」
元々が可愛らしいツヴァイではあるが、農場の汚い服に比べればワンピースは格段に彼女の可愛らしさを感じさせる。
アリスは目の色を変えて、キラキラとした視線のままミロに向き直り、
「買いましょう!これが一番似合います絶対に!!もう、これ以外ありえません!!!」
だが、そんな興奮したアリスに対し、ミロは淡々とごもっともな意見を述べた。
「いや、まずは本人に聞きなよ…」
「…あっ、確かに…」
そうして、我に返ったアリスは、ツヴァイの元へ駆け寄り、ツヴァイの了承を得た後に、白のワンピースを購入した。
* * *
三人が服屋を出て、数分が経った頃アリスは考え事をしていた。
「うーん、何だろう、何か忘れてる気がする…どこかに行こうとしてたような…」
「どうしたのアリス?考え事?」
そのミロの問いかけに「そうなんです」と答えようとしたアリスが、ミロの方を見てハッとしていた。
その視線の先には、一軒の少しボロめな書店があった。
「そうだ、本屋さんだ!私が行きたかったところ!あれ、でもあんなお店、昨日あったっけ…?」
「ん?アリス、書店に興味あるの?」
ミロに聞かれ、話を切り出すか一瞬迷ったが、今のアリスには躊躇う必要などなかった。
何せ買おうとした猫の服は既に見られた後だ。次に猫が主人公の本を買っても、あれに比べれば気にもならない。
決心がついたアリスは向き直った体勢のまま、ミロとツヴァイに尋ねた。
「…ちょっと新しく出た本が買いたくて、付き合ってもらえますか…?」




