【第53話-残りのお金】
少し時が過ぎ、ツヴァイと会話をしていたアリスだったが、いつの間にかツヴァイはアリスの背中に乗っていた。
懐かれているのは良いことなのだが、アリスはツヴァイの顔が見えなくて少し寂しさを感じていた。
「ねね、アリスお姉ちゃん!今からどこ行くなの?」
「今から行くお洋服屋さんはね、すっごく可愛い服がいっぱい売ってるの!ツヴァイちゃんにも似合うお洋服もきっと見つかるよ!」
「お洋服!?嬉しいなの!……あれ、でも、わたしもお姉ちゃんもお金がないの…」
忘れかけていた現実を思い出されて、思わず苦笑いするアリスだったが、少ししてニヤッと軽く笑い、それからツヴァイに向き直り、
「あっ、バレちゃった?でも大丈夫!実はあれで全部じゃないんだー!聖金貨は全部なくなっちゃったけど、ちゃんと銅貨とかは残ってるから!」
普段のアリスなら、きっと後先のことを何も考えずに、全財産を差し出していただろう。
何があったのか、それはとても明白で、もちろんミロに教えられたのだ。
「『銅貨まで含めて全財産使ったら、何も買えなくなるよ?』って、先生に笑われたな…」
そんなアリスの独り言に、置いていかれていたツヴァイの存在を思い出し、慌てて話題を転換する。
「あ、ほらあそこ!あのピンク色の壁の建物見える?あれがお洋服屋さんだよ!」
「見えるなの!わあ、すっっごく大きいなの!!」
その間にも、なんとかツヴァイに話題を振ろうと、アリスはさらに頭を巡らせる。
──が、そんな必要はなかったようだ。
「はぁ、はぁ、お待たせ…」
後ろから女子二人を、息を切らしながら追いかけてくる一人の男。
言葉だけで見ればなかなかに怪しさ満点の男だが、もちろんそんな変態では無い。
「ミロ先生、勝手に飛び出してごめんなさい…」
「いいよいいよ、それで?次はどこ行きたいの?銅貨と銀貨は数枚なら持ってるけど」
その言葉にアリスがすかさず反応する。
「あれ?幻影だからお金持ってないって言ってませんでした…?」
「お前なぁ、聖金貨は持ってないって話だ。流石に無一文で幻影に外を出歩かせるほど大賢者は廃っちゃいないよ。だから、ちょっとくらいは持ってるよ」
「ほんと!?それなら安心だね!今から行きたいのはね、昨日のお洋服屋さん!」
昨日の、と聞いてミロが「あぁ、」と声を漏らす。
「あそこなら特に問題ないだろうね。オレが言うことじゃないけど、そうと決まれば、早く行こうか」
少しは足しになる程度の金額を持った幻影は、そう言い終えるとスタスタと歩き、お洋服屋さんに向かって進んで行った。
「わたしも早く行くなのー!楽しみなの!」
そして、アリスの背中に乗っていたツヴァイも、いつの間にか地面に降り、ミロと共に早足で進んでいた。
この場で唯一出遅れたアリスは、状況に気付き咄嗟に声を上げて走り出した。
「え、二人とも!?──ちょっと、待ってよ〜!」




