【第44話-協力者】
二人からお金を預かり、それから寮を出たアリスは、いつも通り寮の前で見張りをしていたミロの幻影に声をかけた。
「おはようミロ先生!」
「あぁ、おはようアリス。何かあった?」
幻影でも流石に、女子生徒の部屋に同居するのは良くないと思ってなのか、ミロはいつも外にいる。
わざわざアリスがミロの元に来たということは、何かがあったのは明白だ。
「あのね、ミロ先生…本当にごめんなさい。寮に戻ったらたくさん怒られる覚悟だから、その…今日も、お出かけに着いて来てくれない…?」
そんな声をかけられたミロは余程心外だったのか、予想以上に変な顔をしていた。
「またお出かけするの?えぇ?君、護衛対象って言葉の意味分かってる?」
「……はい、分かってます。それでも、どうしても助けに行かなくちゃ、いけないんです!」
ミロにはまだ、ツヴァイを救出しようとしている事を伝えていない。それはアリスも分かっていた。
だが、説明しようとするよりも先に、勝手に口が動いていた。
「なるほどね、訳ありか。いいよ、詳しく聞かせて」
優しくそう返してくれたミロに内心ホッとしつつ、アリスは今日の計画を手短に伝える。
説明を聞き終えると、ミロは「やれやれ…」とでも言いたげな顔で頭を抱えていた。
「確かに昨日はオレも、遠くから見てたから分かるよ?でもね、出会って一日の女の子のためにリスクを負う必要ある?」
「…普通なら、必要ないって言うべきなんでしょうけど、残念ながら、私の答えはもう最初から決まっています」
アリスのその手には、昨日みんなで買ったお揃いのイルカキーホルダーが握られていた。
「例え、たった一日の関係だったとしても、そんなの私には関係ありません!私、あの子と約束したんです!『絶対に助ける』って…!」
一拍置いてからアリスが続ける。
「──それに、私はまた、あの子の…ツヴァイの笑顔を見たいんです。もう一度、一緒に遊んで、一緒に買い物して、一緒に写真撮って…」
ミロは真剣な顔でアリスの話を聞いていたが、やがて口を開いた。
「でもさ、あの子…農場で働かされているんでしょ?そう簡単には連れ出せないよ?」
「えぇ、分かってます。普通に訪ねただけじゃ、すぐに追い返されることくらい」
そんな言葉を聞いて、ミロは思わず嘆息を漏らした。
「じゃあ、諦めるしかな……」
その言葉を遮る形で、アリスが再び会話の主導権を取り戻す。
「でも、私たちなら──できます」
「…ふぅん?どうやって?」
「これは、私の想像で全く確証はありません。でも、このお金と、先生がいれば…十分、可能なはずです」
その時、ミロは何かを理解したように、ポンと手を叩いた。
「あぁ、やっと理解した。そういうことか」
「はい、その想像通りだと思います」
そこでアリスは一息置いて、言葉を続けた。
「──だって、先生はこの国唯一の『大賢者』なんですから」




