【第43話-救出準備】
農場へ戻るツヴァイを見送り、三人もそれぞれの帰路につこうとした頃だった。
ふと一人の少女が声を上げた。
「ところで、二人とも、ちょっとお金貸してくれない…?絶対返すから!お願い…ね?」
「アリス先輩、急にどうしたんですか?まさかギャンブルで大負けでもしたんですか?」
「わたくし、今の所持金は聖金貨10枚程度しか持ち合わせていませんの…」
その一言に、場が凍り、驚愕で二人の口が大きく開いた。
「え、レイチェルって常時聖金貨10枚も持ち歩いてるやばい人だったの?」
「レイ、流石にそれは…ないよ」
そんな二人を見てキョトンとするレイチェル。
まるで、常時大金を持ち歩くのが普通だとでも言いたげな態度。
「あら、この程度のお金でしたら、持ち歩いても大して問題ありませんでしょう?」
「「いや十分大金だから!」」
アリスはコホンと咳払いをして場の空気を戻す。
「…って、そうじゃなくて、明日の朝に念の為、聖金貨を数十枚、出来れば50枚くらい借りることってできません…か?」
「あら、なかなかの大金ですわね。何に使うんですの?」
「やっぱりギャンブルで負けたんじゃ…」
「ギャンブルなんてした事ないんだけど!」とムスーっとしたままアリスは答える。
「── ツヴァイちゃんを助けるために、一緒に協力してくれない?」
* * *
柔らかなベッドの上で、昨日の疲れを静かに癒していたアリス。
そんなアリスの元に、ピンポンという音でインターホンが鳴らされた。
「はーい、今行きます…」
まだ寝ぼけながらも、しっかり足元に気を付けて歩くアリス。
──ピンポーン。ピンポンピンポンピンポン…
「っ、うるさい!!!」
ガタンッ!と力任せにドアを開けるアリスに、目の前の二人はなんとも言えない顔をしていた。
「おはよう、ございます…アリス先輩…」
「ご機嫌よう、アリス先輩」
「はいはい、おはよう。それで、私の部屋のインターホンを執拗に鳴らしたのはどっち?」
「アリス先輩、顔が笑ってませんよ!可愛い顔が台無しです!ほらスマイルスマイ…」
そんな言葉を口走りながらも、目を合わせた瞬間に逸らしてきた事から察するに、犯人は間違いなく…。
「ハイディ、インターホン鳴らすのが好きなの?」
「いや!違いますよ!?ボクが好きなのはアリス先輩だけだって…!あっ、やっぱり今の聞かなかった事にしてください」
「朝から元気だね?」
それから、アリスは、軽口を叩くハイディの頭を軽く指でチョップしてから、本題に入る。
「それで、二人とも、お金は持ってきてくれた…?」
「もちろんですわ!ここに聖金貨50枚ちょうど、ツヴァイちゃんを助けるためなら惜しみませんわ!」
「絶対助けられるって決まった訳じゃないんだけどね…」とアリスは少しだけ苦笑いを浮かべた。
続いてハイディが声をあげる。
「えぇ、もちろん!ボクもここに聖金貨30枚…って、待ってくださいそんな目で見ないで、これはレイの家が異常なだけなの!」
そんなハイディを見て思わず「ふふっ」と微笑んだアリスは、二人に向き直り感謝を述べた。
「二人とも、ありがとう!あとはこっちで何とかしてみるから!」




