【第35話-いつまでも子供】
扉を開くと、店内は大勢のお客さんで賑わっていた。
客の手元を見てみると、ハンバーグにも様々な種類のものがあるようだ。
更によく見てみると、白米はお店のサービスなのか、かなりの量が盛られていた。
「いらっしゃいませ〜!3名様、ですね…?」
何やら変な表情を浮かべ始めた店員。
顔に何かついてるのかな?と思ったアリスが、口周りを触るが何も付いていない。
「アリス先輩…多分、大賢者様の…」
そこでアリスはハッと気付いた。
「うわぁ!?あぁ、そっか…私、防御結界まみれで店内に…」
服屋で視線を感じなかったのは単に、服を買っておらず、会計をしていなかったからだ。
それもあって、アリスは結界の事を完全に忘れていた。
「あ、あはは…すみません、このままでも店内って、入れますか…?」
入店拒否されてしまったらどうしようと、アリスが恐る恐る尋ねる。
「え、えぇ、はい。特に問題ありません…ですが何故そのまま…?」
アリスはすかさず誤魔化しの苦笑いをした。
何か凄く変なものを見るような目で見られた気がして、早くもアリスは、正直ここから早く出たい。と思い始めていた。
それはともかく、店員に案内されて、3人は空いているテーブルの座席に腰をかけた。
「まぁ…凄く美味しそうですわ!」
レイチェルを中心に広げられたメニューを、アリスも横から眺める。
メニューには、デミグラスハンバーグにチーズハンバーグ、照り焼きハンバーグなどと、様々な種類のハンバーグが並べられていた。
もちろん、ハンバーグ以外にも、カレーや唐揚げなど、ハンバーグとは別の料理も並べられていた。
「やばい、どれもすっごく美味しそう…私は何食べよっかな〜」
そんな事を言っていたアリスの目が、何かを見た瞬間に突然見開かれ、キラキラと輝き出した。
「え…?」
アリスの様子に気付いたレイチェルが声をかける。
「どうしたんですの?」
「──待って、これ…パンケーキ?」
「え?嘘ですわよね、ここハンバーグのお店ですわよ?パンケーキなんてあるはずが…って、え!?本当に、ある…?」
レイチェルが驚いていることには気にも触れず、アリスの視線は、メニューに載っているパンケーキに、釘付けになっていた。
「待ってくださいまし、まさかハンバーグのお店に来て、パンケーキを注文する気ではありませんわよね?」
もはや、その声もアリスには届いていなかった。
直後、ピンポンという音が店内に響いた。注文の際の呼び鈴だ。
まだ全員の注文が決まっていないのに勝手に呼び鈴を押した少女、そのアリスの口からはよだれが零れ落ちそうになっていた。




