【第34話-ランチタイム】
ハイディが服屋を満喫したあと、三人は店の外に出た。
手提げ袋を持っているのはレイチェルだけなので、どうやら服を買ったのは一人だけのようだ。
「あれ?アリス先輩、あの猫ちゃんの服…買わなくて良かったんですか?」
猫の服…それは猫がスパンコールで描かれたものであり、要するにアリスが目を奪われていた服だ。
「ま、まさか!あんな子供用の服を買うなんて、ないない!私を子供扱いしないでよね…!」
「じーーーっ」
「何で擬音を声に出すのよ」
ジロジロと顔を見つめてきたハイディに、ナイスツッコミを入れるアリス。
そんな二人には目もくれず、時計を密かに見たレイチェルがポツリと一言。
「そろそろお腹が空きましたわ」
二人が街の時計を見てみると、すでに12時を指していた。
「確かにそうだね…だけどその、ボクご飯屋さんの目星付けるの、忘れてたんだよね…」
「「え?」」
思わずハモってしまうアリスとレイチェル。
「まさか、デートに誘っておいて、下準備してなかったの…?」
アリスの厳しい一言を浴びるハイディ。
「本当にごめん!だから、その…今からご飯屋さん探そ…?」
斯くして、お昼ご飯を巡る旅が始まった。
まず最初に先陣を切ったのは、ハイディだ。
「あ!あそこのパン屋さんとかどうですか?美味しそ…」
「お出かけでパンは流石に…」
「ちょっと、ないですわ」
せっかく考えたハイディの提案を、途中で遮り、その上でキッパリと否定してきた二人に、ハイディは「うぅ…」と悲しそうな顔をしていた。
次に声を上げたのはレイチェルだった。
「あそこのお店はどうかしら?」
レイチェルが指さした方向にあったお店は、『ジューシービーフ』と書かれた飲食店だ。
「わぁ、お肉!美味しそう…」
レイチェルの提案に乗り気なアリスを、こちら側に引き入れようとレイチェルが更に続ける。
「見てくださいまし!このお店、『料理の加護』を持った料理人さんが調理をしているらしいですわ!」
料理の加護とは、作った料理を食べた人に、ちょっとしたバフやデバフを与えられる加護である。それとは別に、普通に料理の腕も上がるので美味しい。
「えぇ!料理の加護を持っている人あんまり見かけないのに…!凄いよ!行こう行こう!」
アリスをこちら側に引きずり込む事に成功したレイチェルは心の内でガッツポーズをした。
だが、レイチェルには、ただこのお店に行きたいのではなく、別で本当の目的があった。
「そういえばハイディも、ハンバーグがお好きでしたわよね!」
そう、幼なじみの特権である、相手の好きな食べ物を把握する権利を充分に活用しようとしていたのだ。
レイチェルはすぐにハイディに視線を向ける。
「あっ、うん…ハンバーグ、好き、だよ」
そんなハイディは、好きなものを食べられるというのに、少し視線を下に向けていて、あまり乗り気では無い雰囲気だった。
「元気がないですわねハイディ、どうしましたの?具合が悪いなら、しっかりと教えてくださいまし?」
「食欲ないなら無理しちゃダメだからね!」
ハイディを心配するレイチェルとアリスに、これ以上心配させないようにとハイディは、手をパタパタと振りながら明るく振る舞う。
「…ううん、違う!ボクは大丈夫だよ、行こう!」
「あら、それでしたら早く参りましょう!わたくし、もう待ち切れませんわ!」
レイチェルがそう促すと、二人はコクコクと小さく頷いた。
それをレイチェルが確認して、三人は『ジューシービーフ』へと向かった。




