【第33話-うげっ】
「気を取り直して、そろそろ行っちゃいましょー!」
いつにも増して元気のいいハイディが微妙な雰囲気を紛らわせるために精一杯明るく振る舞う。
アリスとレイチェルは「「おー!」」とだけ言ってハイディの後について行った。
人通りの多い賑やかな商店街を歩き始めて、最初に口を開いたのはレイチェルだった。
「ところでアリスさん、先ほどからずっと思ってたのですけれど、アリスさんの周りにずっと張り付いている、そのおびただしい量の結界は何なんですの?」
「あぁ、これはね、ミロが…じゃなくて大賢者様が『やっぱりお前を一人で無防備にさせるのは不安だ』って言って、遠距離からずっと防御結界を張ってくれてるみたいで……」
その言葉を聞いてレイチェルはピクっと震えた。
「え?つまり、大賢者様がアリスさんの護衛を務めていらっしゃる…という事ですの?」
「あぁ、そっか、そうなっちゃうよねぇ…」
「この国の魔術師トップである大賢者様に護衛させるなんて、アリスさんは一体何者なんですの…」
アリスは可愛い後輩に恐れられたのを身に感じて、少し落ち込んだ。
そんな会話をしていると、いつの間にか最初の目的地に着いたようだった。
「着きました!最初の目的地は服屋さんです!!」
そこでアリスは瞬時に気が付いた。
「ねぇ、ハイディ…ここって女の子用の服ばっかり売ってるお店じゃない?」
その問いかけにハイディは、「うげっ」 と声を漏らしていたのでほぼ確信犯だ。
「もしかして、私を着せ替え人形みたいに、色々な服着せて楽しむつもり?」
「ハイディ!わたくしはいつでも準備出来ていましてよ!」
なんか急にレイチェルが横槍を入れてきた。
「待ってレイチェル、何で乗り気なの?」
「なぜって、友達に選んでもらった可愛いお洋服って心がウキウキしませんこと?」
そう答えるレイチェルの目に、何故か闘争心が微かに感じられた気がして、アリスは苦笑いをした。
お店に入ると、様々な可愛らしい色合いの服が並べられていた。
中でも、ピンクや紫といった色が多く見られた。
「わぁ、なんかキラキラしてる…」
装飾をキラキラと凝らした服に、10秒ほど目を奪われているアリスがそこには居た。
「アリス先輩って、そういうキラキラとしたお洋服がお好きなんです?」
「あ、ううん!別に!そんな事ないよ!キラキラしてたから気になっただけ…」
そう言ってアリスは服から目を逸らしたが、その2秒後には再びチラリとスパンコールを散りばめられたその服を見ていた。
「アリス先輩、欲しいなら欲しいって言ってくださいね?ボクは男の子なので、奢っちゃいますよ!」
「待ってハイディそれはダメ、絶対にダメ。後輩に奢らせるなんて、そんな事したら、先輩の尊厳というか、私のプライドというか、色々なものが失われる気がするからなしで」
「やけに早口ですね、アリス先輩」
「すごーく早口ですわね」
アリスはこの時点で、既に先輩としての尊厳はほとんど失われているのではないか?という結論に至った。
「そんな事より、ハイディ!わたくしの服も選んでくださいまし!」
「あぁ、レイ今行く!アリス先輩も、欲しい服の目星付けておいてね!」
そんな、全然後輩の発言とは思えない言葉を残してハイディはレイチェルの元へ駆け寄っていった。
「あの子、私の話ちゃんと聞いてた…?」
* * *
ハイディを呼んだレイチェルは、先に目星を付けていた服を、試着室に持って行っていた。
試着室で商品の服を試着し終えたレイチェルは、試着室の中から再びハイディを呼んだ。
「ハイディ見てみて!この服とかどうかしら?」
その服は、オレンジ色の髪をした明るい雰囲気のレイチェルと良く似合う、黄色のワンピースで襟元だけが白く染められた服だった。
「──!すごく可愛い!レイってやっぱり何でも似合うよね…子供の頃からずっと思ってた!」
ハイディのお世辞ではない本心からの褒め言葉に、レイチェルは少し驚いた目をしていた。
「そ、そんなに真っ直ぐ褒められると流石に照れてしまいますわ…」
頬を赤らめて、自分が元々試着前に着ていた服で口元を隠す彼女は、まるで小さな天使のようだった。




