【第31話-デートの約束】
視線の正体がハイディであったことに、ひとまず安堵したアリスとミロだったが、ミロは落ち着く様子もなく、すぐさま視線をハイディから更に別の場所に移していた。
どうやら「探知」でハイディ以外にまだ他の生徒がいることも把握したらしい。
ハイディに見つめられているアリスも同じように目を逸らしてそちらを見る。
そこには、もう一人、堂々と歩いていて、隠れてこそいないのだが、明るい雰囲気を醸し出しているオレンジ色の髪をヒラヒラと揺らしながら、ジッとこちらを眺めている一人の少女がいた。
その少女は二人と目が合うなり、踵を返してその場を去って行った。
「…あの少女、一体誰なんだ」
ミロは追いかけるか悩んだが、アリスを一人にすることのリスクを考えて、追跡を諦めた。
話は戻るが、二人が視線を別の場所に逸らしてもなお、ずっとアリスを見つめていたハイディは、何やら少しずつアリスに近付いてきた。
ミロも念の為にアリスに近付く。
アリスと三歩分ほど離れた位置についたハイディは、現在のアリスが護衛対象である事を知らないからか、とんでもない発言をした。
「そんな事より、アリス先輩、今週末にボクとデートしてくれませんか?」
子供のようにはしゃいだ声でニコニコと問いかけるハイディに、ミロが釘を刺す。
「残念だけど、そいつ護衛対象だから無理だ」
そんな無情な言葉にハイディは一瞬で顔を曇らせながらも、アリスを覗き込むように言葉を続ける。
「でも、どうしてもボク、アリス先輩と一緒にデートしたいの…その、一回だけでいいから!」
「…どうして、そこまで今週にこだわる?今週じゃなきゃダメな理由があるのか?」
ハイディは、手をもじもじとさせながらミロの問いに答える。
「ボク、アリス先輩とどうしても行きたいお店があって…でも、そのお店がもうすぐ閉店しちゃうみたいで…だから、その、ダメ…かな?」
上目遣いを効かせた年下からの強烈な可愛らしいお誘いに、アリスはしばし悶絶した。
別に好きという訳ではないのだけれど、こんなに可愛くおねだりされたら嫌でもキュンと来るものがある。
長い沈黙が流れた後、悶絶していたアリスは仕方なさげに一言だけ言い放った。
「…1回だけね?」
その回答に、大賢者は凄く嫌そうな顔をむき出しにしながらアリスに聞く。
「君、一応護衛対象な訳で、そんな中で呑気にお出かけだなんて流石に危険だと思うのだけど」
そんな至極最もなミロの発言に、アリスは少し悩んだ末に答えた。
「その…陰から護衛する、とかじゃダメですか?」
そこにアリスが付け足す。
「あと、デートがしたい訳ではないんですけど、私、予知が出ていたとしても、いつも通りの生活を送りたいので、その、予知に縛られたくはない…です」
それを聞いたミロは「はぁ」とため息を漏らしていたが、やがて観念したように顔を片手で覆いながら、それはもう面倒くさそうに言葉をかけた。
「ぜっっったいにオレの視界から離れるなよ?」
アリスとハイディはコクコクとすぐに頷いた。




