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魔術と加護のアルカディア  作者: 蜃気楼
「護衛」編
30/33

【第29話-ミロ先生の楽しい魔術式講座】

 最後に教室に入ったアリスが着席すると、全員が揃ったのを確認して授業が始まった。


「よし、それじゃあこれから、ミロ先生の楽しい魔術式講座を始めたいと思いまーす!」


 なんだか凄くノリノリの大賢者を見て生徒たちは若干顔をしかめていた。


「えー、じゃあ最初はまず、超級魔術についての魔術式を解説していくね」


 その瞬間、場が静まり返った。


 普段の魔術式の授業では、中級魔術の解説がほとんどで、高くても上級魔術の解説だ。


 それに大賢者本人から超級魔術の解説をして貰えるなんて、まさに千載一遇の機会だ。生徒たちは、みんな揃ってわいわい喜んでいた。


 ミロは差を明確にするために最初は比較を用いて説明をした。


「さて、上級魔術と超級魔術の違いだが、あまり超級魔術は関わる機会が少ないからか、威力だけだと思っている者は多い」


 ミロはそう言いながら黒板に円を描いた。


「例えばこれは火の上級魔術の魔術式だ」


 そう言って、円の中にいくつかの文字や線を書き込む。


「火を生成する術式。形を維持する術式。射出する術式。基本的にはこれだけだ」


 コクコクと生徒達が頷く。


 だがミロは、その横にさらに巨大な魔術式を書き始めた。


「そして、これが闇の超級魔術の魔術式」


 教室が静まり返った。


 黒板いっぱいに広がる複雑な図形の数々、幾重にも重なる円、無数の線、数え切れないほどの文字列。


「な、長い……」


 誰かが思わず呟く。


「まぁな、当然だ。超級魔術は簡単な魔術ではないからな」


 すると、ミロは再び黒板を指差した。


 まずこれは、「まず魔力を集める集束術式」


 ミロは続けて、別の場所を指差す。


 次にこれは、「魔術の暴走を防ぐ制御術式」


 この辺りで既に、生徒の一人が脱落した。


 さらに別の場所。


 更にこれは、「魔力の流出を防ぐ固定術式」


 さらにさらに別の場所。


 最後にこれが、「発動後の乱れを防ぐ安定術式」


 大賢者の説明が一段落して、アリスが周りを見渡すと、その頃には既に、ほとんどの生徒が理解を出来ずに脱落していた。


 残っている生徒は、アリスを含め10人程度といったところだ。


 ミロは、そんな事を気にしていないかのように説明を続ける。


「このように、超級魔術というのは、簡単に言えば大量の魔術を一つに束ねた複合術式だ。だから難しい」


 すると、まだ脱落しないように頑張っている一人の生徒が声を上げた。


「先生、説明が抽象的なのと、早すぎて、全然理解が追いつきません……」


「え?そうなのか?」


 そう言うと、ミロの目線が急にアリスに移った。


「君ならもう理解出来ただろ?アリス、やってみて」


 少しの沈黙が流れ、指定されたことに気付いたアリスは嫌な予感がしてハッと息を呑んだ。


「……え!?む、無理ですよ!」


「そんな事言わないで、ほら!試しにやってみて」


「確かに、魔術式は理解出来たけど…うぅ…」


 アリスは、失敗を覚悟でミロに言われるがままに闇の超級魔術、空間転移の術式を頭の中で整理し、そして可愛らしく発動した。


「ふんっ!」


 その後、教室内が急にざわざわとし始めた。


 そして、ミロがポツリとただひと言だけ口にした。


「──あれ、アリスどこ行った?」


 * * *


 一方その頃アリスは…


「待って…教卓の辺りに移動先の狙いを定めてたはずなのに、何で今私、中等科の校舎にいるの?」


 突然現れたその少女に、周りの中等科の生徒たちがわいわい騒ぐ。


「お姉ちゃん誰?」「すごい!どうやって出てきたの?」「あれ、夢かな?急にボクの目の前に天使が舞い降りた…」


 色々な声を浴びせられた中で、アリスには聞き覚えのある声が聞こえた。そして、一つだけ分かったことがあった。


「なんで、ハイディがいるの」


「だってここ、ボクのクラスの教室ですよ!そんな事より、アリス先輩は今日も可愛いですね…!」


「……」


 その後、無言でハイディの言葉を無視して、アリスは無詠唱で再び空間転移を使い、ミロのいた教室に急いで戻った。


「お帰りアリス。流石の理解力だね」


「ありがとうございます……」

 アリスは、褒められたのになんだか不服そうな顔をしたまま再び席に座った。

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