【第28話-本物みたい】
大賢者と共にアリスが寮を出ると、いつも通り一人の少女が佇んでいた。
「おはようアリス!…って、待って?何で後ろに大賢者様がいるの?」
「あはは…なんか、私もよく分からないんだけど、護衛対象になっちゃったみたい…?」
「なるほどなるほど、大賢者様を護衛につけるとは、この上なく贅沢ですなぁアリス殿」
クラリスはあまり信じていないようで、いつものように茶化していた。
* * *
「……ねぇ、もしかして本当に護衛対象になってたりする?」
先ほどまでは、信じていなかったクラリスだったが、学園に着いてもまだ着いてくる大賢者を見て、少しずつ話を信じ始めた。
「あぁ、本当だよ。オレは護衛依頼を頼まれたからね」
「待って、その言い方だと私が依頼したみたいになるから早く訂正して」
「……ふぅん、大賢者様に護衛依頼だなんて、アリスちゃん大胆〜」
否、本当に護衛対象になったと信じ始めても、クラリスはいつも通り茶化すようだ。
* * *
一時間目の授業が終わり、本日1度目の休み時間。
アリスは、フリルから聞いた情報を確かめるために、とある場所に向かっていた。
「えっと、確かここの辺りを右に曲がれば…あった!」
それは、学園が集めてくるダンジョン募集の掲示板だった。
「これは…まさか、護衛対象になっているのにダンジョンに潜る気かい?」
「違う違う!フリルが『最近、誰だか分からないけど、上級ダンジョンが独占されてて困ってる』って言ってたから、本当なのか見に来ただけ!」
「あぁ、なるほどね。それで、実際どうだったの?」
掲示板をまじまじと眺めるアリスは、まだ全て見終わってなかったのか、少し間を開けて答えた。
「本当だ、初級と中級募集はどっちも10個ずつくらいはあるのに、上級募集だけ一つもない…」
「きっと、どこかの魔術師団が訓練がてらで使っているんじゃないか?まぁ、それにしても流石に独占は酷いが…少し妙ではあるな」
「可哀想だけど、私には関係のない事だから、別に気にしないでいっか…」
その時、のんびりとした時間を過ごしすぎて、忘れていた次の授業の始まりを告げるチャイムの音が鳴った。
「「あっ…」」
アリスとミロはせかせかと教室に戻った。
「えっと、次の授業は確か...あ、そうそう。魔術式の授業だった」
「いいね、魔術式はオレの得意分野だ。アリスが望むなら、オレが教えてあげようか?」
大賢者から魔術を教わるなんて、普通の学生なら絶対に経験できない貴重なものだ。
だが、その問いかけに駆け足のアリスはただキッパリとひと言だけ言い放つ。
「遠慮します」
やがて、魔術式の授業が行われる教室に着いたアリスは、目の前で起きている光景に言葉を失っていた。
教室の前方から男の声が聞こえる。
「あぁ、アリス。遅いじゃないか、実は今日の魔術式の授業は特別に、このオレが教える事になった」
アリスは絶句した。
「な、なんで大賢者が二人も…?」
その問いかけに、アリスの真横からミロの声がした。
「あれ?気付いてなかった?オレ、幻影だよ」
「えっ、てことは私が今まで話していたのは、大賢者じゃなくて…」
つっこむように教室の前方から再び声が聞こえる。
「うん、幻影だね」
「最近の幻影ってこんなにしゃべるんですね…本物みたい」
「最近も何も、幻影なんだから、しゃべるだろ」
ダメだ、やっぱりこの人は世界観がおかしい。とアリスは密かに心の中で思った。




