【第27話-護衛開始】
次の日、大賢者は再び学園に向かった。
ミロが作り出す幻影は、強力ではあるが一つ欠陥があるのだ。
幻影は作り出されてから、身体を維持するために、経過時間で魔力を少しずつ消費するのだ。
今日はその幻影の魔力補充と、単に学園に来たかったという大賢者の私情だ。
「アリスは大丈夫か?」
「あぁ、問題ないよ」
……もちろん幻影は、思考が独立しているため会話が可能である。
ミロは自分の幻影と軽く言葉を交わしたあと、幻影の元に少し近付き、手を繋いだ。
周囲の人から見ればミロはドッペルゲンガーと握手をしているようなものだ。異様な光景である。
そして、ドッペルゲンガー(幻影)と手を繋いだ大賢者が何をするのか…それはもちろん、幻影の魔力補充だ。
手を繋ぎ始めてから少し時間が経ち、ミロが幻影への魔力補充を終えると、ミロはその場から立ち去りながら、ひと言だけ幻影に告げる。
「── アリス・ミラージュを任せた」
「あぁ、任せろ」
幻影のそれは、なんともミロらしい返しだった。
* * *
この日、アリスはいつも通り元気良く目覚めた。アリスは寝起きの体を起こし、座るような体制で背伸びと欠伸をした。
「ふぁぁ…はぁ、今日も学園に行く準備しなきゃ…」
アリスはせっせと身支度をして、必要な荷物を詰めて、寮の部屋から飛び出した。
すると、クラリスではなく一人の男が玄関ドアの前に立っていた。
その男には、とても見覚えがあった。
「おはようアリス、今日は良く眠れたかい?」
「おはようございます、ミロ先生……ところで、何でここに…?」
「それはね、とある人物に君の護衛依頼を受けたんだ」
アリスは率直な疑問を口に出した。
「え、なんで私、護衛対象になってるの?」
「その人物によると、未来が見えた…とか」
アリスは少しの間を置いて完全に理解した。
「ミロ先生、それ…個人情報ダダ漏れですよ」
「あれ、嘘、マジ?」
「それ、絶対アルミスさんの『予知』…ですよね?」
二人の間に沈黙が流れた。
(あぁ、やらかしてしまった。大賢者ともあろう人間が個人情報をばらまくとは…)
「……すまない、何も聞かなかったことにしておいてくれないか」
その言葉を聞いて、アリスの中で、また一つ大賢者の威厳が失われた気がした。




