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魔術と加護のファントミラージュ  作者: 蜃気楼
「ダンジョン」編
15/32

【第14話-魔術師と名乗る男】

 貴族が使うような豪華な装飾が施された部屋で、薄い金色に縁取られたティーカップを手に、薄い白がかった水色の髪に碧眼の男、この国唯一の〈大賢者〉は優雅に紅茶を飲んでいた。


「はぁ、全く…暇で暇で仕方がない。」


 などと雲ひとつない快晴の空を見上げながらポツリと独り言を呟いていた。


 ティーカップに入った紅茶を飲み終えた頃に大賢者の元に1本の電話が入った。


 大賢者はすぐに受話器を取り耳に当てる。


『お忙しい中失礼します。ミロ様のお屋敷の正面から見て西側の方角に初級ダンジョンがあります。そこで異常な魔力を感知したため、至急確認を願いたい。』


 ミロと呼ばれたその男、ミロ・アルカディアはすぐに「了解した」とだけ答え、詠唱を始めた。闇の超級魔術、空間転移の詠唱だ。戦闘時でもないのに超級魔術を使用するような男のその魔力量は、加護の力で言えば、この世で2番目と言われている。


 地図でダンジョンの位置を確認しながら正確に頭の中で位置調整を行い、そして空間転移を発動した。


 * * *


 空間転移を使い、初級ダンジョンのボス部屋の手前まで瞬時に移動した大賢者は、電話で聞いていた通り、異常な魔力を感じた。


(これは…急がないと、このダンジョンに潜っている人達が危ない!)


 ボス部屋まで火の超級魔術を詠唱しながら走っていくと、今まさに覇竜のブレスで包まれそうになっている4人組のパーティーの姿が見えた。


 大賢者慌てて早口で詠唱を終わらせ、前にいる4人に当たらないように気を付けながら、即座に火の超級魔術で覇竜のブレスを相殺した。


 と同時にもう一度詠唱を始め、覇竜がブレスを再び放つよりも先に大賢者が火の超級魔術を再び放ち、覇竜を倒した。


 そして、先ほど死の淵に立たされていた4人を安心させるようにと話しかけた。


「このダンジョンから異常な魔力を感知したため、急いで助けに来た。怪我は無いか?子供達。」


 その問いかけに、1人の少女が答えた。


「あ、あのっ、私達は大丈夫です!だけど、メルトが、剣士の男の子が魔力を使い果たして倒れて…!」


「なるほど魔力切れか、それは大変だ。急いで休ませてあげないとな!」


 とにかく心配させないようにと、言葉遣いに気を付けながら、大賢者は彼女の言っていた剣士の男の子、メルトをお姫様抱っこで抱き上げた。


「それでは、オレは一度この子を連れて先に王都へ帰る。とても頑張っていたようだし、地面よりは良質なベットで寝かせてあげたいからね。」


 そう言って、すぐにその場を離れるために空間転移の詠唱を始めようとすると、先ほどの少女が1つの質問を投げかけてきた。


「待って!あなた、一体何者なの?急に現れて、しかも一瞬で覇竜を倒して…」


 そのごく普通な問いかけに大賢者は人差し指で軽く頭をかき、困ったなという顔をして、答えた。


「オレは、ただの通りすがりの魔術師さ。それと、本物の覇竜はこの程度じゃ倒れないよ。多分、何かが原因で"弱って"いたんだろうね。」


 それを言い終わると、ミロは再び空間転移の詠唱を始めた。


「あ、あの!私たちを助けてくれて、ありがとうございます!」


 その言葉に返事は返さず、にこりと笑みだけを返してミロはその場を去った。


 その時のアリスはまだ知らなかった。この通りすがりの魔術師を名乗る男が、国王陛下が直々に指名した、この国唯一の〈大賢者〉であることを…。

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