【第9話-初めてのお誘い】
アリスが闘技場を出て少し経った頃、ふと忘れかけていた疑問を思い出した。
(ミロ先生が全員の転移先をバラバラにしていたはずなのに、どうしてあの3人は一緒にいたの…?)
その疑問を忘れぬうちにと、慌ててアリスは疑問を解明するために頭の中で色々な可能性を考え始めた。
(ルーフは風魔術が得意…中級魔術の飛行も使えていた。となると風の初級魔術、探知は使えるはず…探知を使って人のいる位置を探し出して……そうだ、ルーフは『千里眼の加護』を持っているから少しの障害物があっても遠くまで見ることができる。つまり、戦闘実習が始まって1分ほどで、その2つを使って仲間を見つけ、仲間の近くに矢を飛ばして、自分のいる方角を伝えたとか…?)
「…リス!…アリス!」
大体の考えがまとまった所で、アリスは先ほどからずっと自分の名前が呼ばれていたことに気付いた。
「うぇっ!?」
と謎の声を出しながらアリスが先ほどの声がした方を振り返り見た…そこには、クラリスの少し不貞腐れた顔があった。
「もう!やっと気付いたか小娘!私の呼びかけを10回も無視するとは、一体どういう事かね!」
クラリスは両手を腰に当てて頬をぷくーっと膨らませながら文句を言い、文句を言い終わると、いつもの優しい笑顔に戻っていた。
「ごめんごめん!ちょっと考え事してて…そういえばクラリスは闘技場で誰かと戦ったりした?」
「んー?もちろん何もしてないわよ、精霊達だけだとまともに戦えないし、いつも通り精霊ちゃん達と戯れてたわ。」
クラリスの周りにいつもいる微精霊は魔力を注ぐと、一時的に小さな体を得て精霊になる、精霊と言っても中級魔術を使える程度の強さだが。
クラリスらしいなぁ。とアリスが微笑んでいると、後ろから背中をつんつんと突つかれ、声を掛けられた。
「アリス・ミラージュと、隣の子は誰だっけ…あっそうだ、クラリス・ロンドさん、で合ってる?」
その問いかけに2人がこくこくと頷くと話の続きが述べられた。
「突然で悪いけど今週末に私達とダンジョンに潜ってくれない?あ、拒否権はないよ。わたし今2人の体に触れてるから断ったら…分かってるよね?」
小柄ゆえ肩ではなく背中を突ついたフリルは発言内容とは反対に可愛らしくウインクをしながらそう淡々と告げる。
そんな突然のお誘いに2人は戸惑いながらも少し時間を空けて「分かった」と答える。
何せ今まで、攻撃魔術の使えないアリスと大精霊とまだ契約していないクラリスは、ダンジョンではほとんど役に立たず、2人だけで行っても火力不足…そして誰からも拾われることがなかったため、未だに一度もダンジョンに潜ったことなどなかった。
実戦経験を多く積ませたい学園側が新しいダンジョンの募集を基本的に拾ってくるため、もちろん実技の単位も得られる。これは寧ろ好都合であり、アリス達に拒否する理由などない。
「あと、わたしの事はミザリーさんじゃなくてフリルって呼んで。2人とも、今週末よろしくね?」
とだけ言い残すと、フリルはアリス達を置いてせかせかと教室に戻って行った。
その日の午後の授業ではクラス内での自己紹介があったが、たくさん走って疲れ切っていたアリスは、そのまま寝てしまい、ほとんど記憶に残っていなかったらしい……。




