表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ランキング1位をとれる話を考えて」「よろこんで」  作者: gramgram


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/21

第18章:夜気を裂く者

研修旅行の間、生徒と護衛が宿泊する高級ホテルが並ぶ通りは、夜の静けさに包まれていた。人の気配はまばらで、風の音に遠くで犬の鳴き声が一度だけ響いたあと、また沈黙が戻る。


しばらくして、ひときわ大きな建物の窓から、細いひもが垂れた。

月明かりに照らされて、揺れる影がゆっくりと下りてくる。

――リアナだった。

昼間とは違い、装飾を抑えた黒の上衣に、膝までのブーツ。

認識阻害の魔術かアイテムか、巡回の兵士は彼女に気づく様子すらない。

そのまま、人気のない路地へと進み、灯りの届かない場所で足を止めた。

そして、こちらを振り返る。


「確かミレイユの護衛だったかしら。私に何か用?」

声は落ち着いていて、驚いた様子はない。

「聞いてなかったのか。本業は連絡係だ」

言葉が口をついて出た。

「金のために引き受けただけで、詳しいことは知らない。

ただ、興味本位で聞かせてもらえるなら――あんたはいったい、何者だ?」

「説明しても、多分信じないでしょうね」

リアナは少しだけ目を細めた。

冷静というより、何かを見透かすような表情。

一歩、彼女に近づこうとした瞬間――

その影から、何かが滑り出すように現れる。


男だった。

背が高く、肩幅もある。

濃紺の外套を羽織り、髪は短く整えられ、瞳は灰色。

月の光を受けても、奥に冷たさが残っている。


「聞いてないぞ。魔族とお友達なんて」

「そう? こちらは、あなたに用があるみたいだけど?」

リアナが言った瞬間、男の周囲の空気が、膨れ上がるように変質した。

魔力の気配――それも、尋常じゃない。

俺のような半端な使い手でも、はっきり感じ取れるほどの濃密さ。

殺される。

本能が、皮膚の内側で警鐘を鳴らす。


空気が張り詰め、次の瞬間に裂けたような圧が走る。

反射的に身をすくめたその瞬間、 男の腕が、粘り気のある破砕音とともにねじれあがった。

絞った雑巾のように、関節ごと砕け、逆方向に折れ曲がった。

皮膚は裂け、骨も砕けたはずなのに、流れるはずの赤い血はどこにも見当たらない。


「ほう」

男は、感心したように声を漏らした。

痛みの色はない。

砕けた腕を見下ろすでもなく、視線をゆっくりと廃屋の屋根へ向ける。


そこに、ハルトがいた。

月光を背に、屋根の端に立っている。

風に揺れる外套の裾が、静かに夜気を裂いていた。


「なるほど。穀潰(ごくつぶ)しでは歯牙にもかからぬわけだ」

男の声は、驚きではなく、興味だった。

まるで、珍しい玩具を見つけた子供のように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ