↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てしない海 ~終焉の魔眼と真理の瞳~  作者: kooy
第1章 転生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/41

第5話 魔王(転生6日目)、キレる

誠司がこの世界に来て、数日が過ぎた。


誠司は公園のベンチに腰掛け、空を眺めている。

夕暮れ。

雲が赤く染まる。

ただそれだけの光景。


前世なら価値などなかった。

空を見ても力は増えない。

敵も倒せない。

生き残ることにも繋がらない。


なのに最近は違う。

足を止めてしまう。

風が吹けば心地良いと思う。

空を見れば綺麗だと思う。

理解できなかった。


今の俺は、無駄が多すぎる。

俺は変わったのか。


誠司は自分の掌を見る。

魔力は戻らない。

いや、正確には不安定だった。

集まる時は集まる。

だが維持できない。

まるで意思を持っているように散っていく。


この器、不快だ。

それなのに。

どこかで受け入れている自分がいる。


この身体の記憶が蘇る。


 ◇


煙草の匂い。酒の匂い。大きな背中。


『強い奴はな』

組長が言う。

『弱い奴を守るもんだ』


当時の誠司には意味が分からなかった。

だから聞いた。

『何でだよ。親父(おやじ)』


親父は笑った。

『格好いいだろ』


その時の俺は、親父を確かに恰好いいと思っていた。


 ◇


「若頭―!」

声が飛んだ。

振り向く。

タクがいつものように纏わりついてくる。


「また空、見てたんすか」

「ああ」

「なんか悩みでもあるんすか?」

「そうなのかもしれん」

タクは少し驚いた顔をした。


「……、最近の若頭、変わったすね」

「ん、何が変わったというのだ」

「うぅ……。前はこう、考えるってより、突っ込むって感じだったっす」


「……、」

確かに、以前のこの器も、余も、悩むことなど必要なかった。


力が全てだった。


しかし、変わってきた。

少しずつ。

確実に。


二人は並んで歩いた。

取り留めのない会話をしながら。

以前なら沈黙を選んでいた。

今は違う。

タクが話し続けることを当然のように受け入れていた。


気付けば日も落ちていた。


 ⸻


人通りの少ない路地に入った。


その時だった。

前方に人影が見える。

後ろからも足音が聞こえる。


誠司は足を止めた。

タクも止めた。


「……あー」

タクが頭を掻いた。

「そういう感じか」


前方には鋭い目つきの男。

数日前。

少年を脅していた男だった。

その後ろには数人。

後ろにも数人。

完全に待ち伏せだった。


男は笑う。

「待ってたぜ。お前らいつも同じところを通るからな」


タクがため息を吐く。

「ガキは、暇なんだな」


「舐めた口きいてんじゃねぇぞ!」

男の顔が歪む。

恨み。

怒り。

屈辱。

そんな感情が見えた。


タクは肩をすくめた。

「悪いことしたとは思ってねぇよ」


その一言が合図のように、男たちが一斉にタクへ襲いかかる。


数は力だ。

確かに、タクは強い。

だが限界がある。

一発。

二発。

三発。

タクの体に、鈍い音が響き始める。


誠司は、ただ見ていた。

地面に倒れるタクを。男たちの笑い声を。


胸の奥が軋んだ。

嫌な感覚だった。

呼吸が乱れる。

わずかな魔力がざわつく。


なぜだ。

理解できない。


前世なら興味もないこと。

弱者が倒れようが知ったことではない。


なのに。

目の前の光景が不快だった。

酷く。酷く不快だった。


組長の声が蘇る。

『弱い奴を守るもんだ』


意味は分からない。

今も…。


だが。

男たちを見ていると。

妙に腹が立ってきた。

誠司は一歩前に出る。


男たちが振り向いた。

誠司の纏う空気が変わっていく。

男たちの笑いが、余裕が消えていく。


誠司は自分でも分かっていた。

怒っている。

他者のために心の底から、怒っている。


そして、その感情が、どこか心地良かった。


口元が歪む。

笑っていた。

魔王の笑みだった。

「面白いじゃないか」


その声に。

男たちは本能で悟った。

自分たちは今。

絶対に怒らせてはいけないものを怒らせたのだと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。