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果てしない海 ~終焉の魔眼と白黒の勇者~  作者: kooy
第2章 この世の闇

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第24話 勇気

「澪ー、行くよー」


玄関から姉の声が聞こえた。


「お姉ちゃん、待ってよ!」


慌てて靴を履く。


「行ってきます!」


「行ってきまーす!」


母に見送られ、姉妹は家を出た。


今日は高校生活二日目。


昨日は入学式だったため、本格的な学校生活は今日から始まる。


期待もある。


不安もある。


だが、それ以上に嬉しかった。


憧れていた姉と同じ高校へ通えるのだから。


待ち合わせ場所には、すでにヒナが立っている。


「おはよう!」


「おはようございます」


澪が頭を下げると、ヒナは満面の笑みを浮かべた。


「澪ちゃんも高校生かー。早いねー」


「ありがとうございます」


「お姉ちゃんと同じ学校へ行けて良かったね」


「はい!」


思わず声が弾む。


受験勉強は大変だった。


けれど頑張った。


だからこそ、こうして同じ制服を着て歩いている今が嬉しい。


「私、一人っ子だから羨ましいなー」


ヒナが肩を落とした。


すると澪は笑顔で言う。


「ヒナお姉ちゃん!」


「えっ?」


「私、まだ学校のこと何も分からないので、いろいろ教えてください」


「もちろん!」


ヒナは胸を張った。


「何でも聞いて!」


その様子を見て、涼も思わず笑う。


澪は本当に頑張った。


だからこうして楽しそうにしている姿を見ると嬉しくなる。


三人で話しながら登校していると、校門の近くに見慣れた男子生徒が立っていた。


神宮寺蒼真だった。


「おはよう!」


蒼真が手を振る。


「おはよう」


涼が返事をする。


その瞬間だった。


澪は固まった。


(えっ……)


背が高い。


顔も整っている。


まるでドラマに出てくる俳優みたいだった。


(もしかして……)


頭の中に一つの答えが浮かぶ。


(お姉ちゃんの彼氏!?)


「あっ、初めまして!」


澪は慌てて頭を下げた。


「水瀬涼の妹の澪です!」


蒼真が目を丸くする。


「妹!?」


そして何かを言いかけた。


「これから長い付き合いに――」


そこまで言ってから慌てて咳払いをする。


「いや、違う違う。俺は神宮寺蒼真。お姉ちゃんのクラスメイトだ」


そして爽やかな笑顔を浮かべた。


「蒼真お兄ちゃんって呼んでもいいぞ」


「えっ」


澪の目が輝く。


しかし。


「蒼真!」


涼が即座に睨んだ。


「何言ってるの?」


「いや、ほら。親しみやすくな」


「意味分かんない」


ヒナは苦笑する。


(また始まった)


蒼真は涼の妹に良い印象を持たれたかっただけなのだが、


涼に予想外に反論され落ち込む。


澪はというと、


(かっこいい人だなぁ)


と素直に感心していた。


もしこんな人がお姉ちゃんの彼氏になったら――。


そんなことまで考えてしまう。


だが、それを口に出すほど子供ではなかった。


校門をくぐり、澪は一年生の校舎へ向かう。


「じゃあ放課後ね」


「うん」



涼たちと別れ、澪は自分の教室へ入った。


教室にはすでに多くの生徒が集まっていた。


同じ中学校だった生徒同士で話している人たちもいる。


だがほとんどの生徒は席に座り、緊張した様子を見せていた。


昨日入学したばかりなのだ。


無理もない。


そんな中。


一人だけ異質な存在がいた。


校庭側の窓際。


最後列の席。


そこに座る男子生徒だった。


足を組み、そのまま机の上へ乗せている。


周囲を気にする様子もない。


そして――。


その席の横には、一人の男子生徒が立っていた。


困った顔をしている。


なぜなら。


そこは本来、その男子生徒の席だからだ。


教室には妙な空気が流れていた。


誰も声をかけない。


誰も止めない。


まるで見て見ぬふりをしているようだった。


澪は小さな違和感を覚える。


しかし、何も言えなかった。


やがて担任の塚本先生が教室へ入ってきた。


「起立!」


日直の号令が響く。


全員が立ち上がる。


だが。


窓際の男子生徒だけは動かなかった。


「礼!」


「お願いします!」


「着席!」


生徒たちが座る。


塚本先生は教室を見渡し、立ったままの男子生徒へ視線を向けた。


「ああ、渡辺くん」


澪は思わず耳を疑った。


「黒崎くんの席が空いているから、そこに座ってください」


それだけだった。


注意もしない。


叱りもしない。


教室に重い空気が流れる。


黒崎蓮くろざき れんは薄く笑った。


そして何事もなかったかのように窓の外を見た。


澪は胸の奥がざわつくのを感じた。


何かがおかしい。


だけど何がおかしいのか、うまく言葉にできなかった。


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