↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
果てしない海 ~終焉の魔眼と真理の瞳~  作者: kooy
第1章 転生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/41

第2話 魔王(転生3日目)、入院!

目を開いたとき、そこは見慣れた魔王城ではなかった。


白い天井。

規則正しく点滅する光。

そして鼻を刺す、薬品の匂い。


魔王は、わずかに目を細める。

(薬品……)初見だが存在は理解できた。


そして、この空間は“戦場”ではない。


 ⸻


「若頭(ワカ)……!目ぇ覚ましたっすか!」

軽い声が飛んだ。

ベッドの脇に、男が立っていた。

御堂組の舎弟、タク。


若い。

軽い。

そして、危機感が薄い。

魔王はその存在を観察する。(弱い)


「いや~ほんと若頭、生きててよかったっすよ」

間合いが近すぎる。


不可解な存在だ。


「歩いていたら急に倒れて、病院に運ばれて、ずっと意識戻らなくて、三日目すっよ」

「ほんと!良かったっす!」

耳障りな奴だ。


ここは、病院。治療施設。

人間を延命する場所。

この器の記憶が補う。

そして、私は御堂誠司(みどう せいじ)、27才。

誠司は静かに理解する。


(死に損なった、という状態か)

(くだらない)


誠司の記憶は曖昧だが、この世界の人間としての経験を感じることができた。

しかし、細かいところで確認が必要のようだ。


「ところで、タク。この魔法陣は何だ」

「心電図っすよ。心臓の動き見るやつっす」

「心臓の“動き”を外部化しているのか……合理的だな」


「これは何を流している」

「点滴すっか、栄養っす」

「魔力供給ではないのか」

「魔力……?若頭、大丈夫っすか?今、親父さんに、報告してくるっす」


その言葉に、誠司はわずかに反応する。

(親父)

御堂誠司の父。


この器の“支配的存在”。


 ⸻


舎弟が出ていき、暫くすると、扉が開いた。


静かな男だった。

声は低く、感情の波も少ない。

御堂組組長、御堂恒一郎(みどう こういちろう)。


「……大丈夫か」

それだけ言うと、誠司を見下ろすでもなく、

哀れみでもない。

ただそこに立っていた。


誠司の内側に、微かな警戒が走る。

(これは……何だ)

圧倒的な力でもない。

魔力でもない。

だが逆らえない関係。

初めての感じた圧力。


「問題ない」

誠司は短く答える。


「好きにしろ。だがあまり親に心配をかけるな」

恒一郎はそれ以上何も言わず、背を向けた。


扉が閉まる。


『親』か。

誠司は、恒一郎が去った扉をしばらく見つめていた。


理解ができない。

ただ、あの一言の裏にあった、

ひどく不器用で、ひどく重い響き。


舎弟のタクが息を吐く。

「いや~親父さん、相変わらず怖いっすけど、カッケーっすね」


誠司は無言で組長の出ていった扉を見つめていた。

この無防備で不器用な『心配』という刃に対して、どう反撃すればいいのか、


誠司は、魔王は知らなかった。


 ⸻


窓の外の見慣れぬ都市。

だが秩序はある。

人は生きている。

恐怖の中ではなく、“日常”の中で。


誠司は理解する。

(ここは終わっていない)

(まだ滅びていない)

(ならば――)


誠司の目がわずかに細くなる。

その奥に、冷たい理性が戻る。


誠司はベッドから立ち上がる。

その瞬間、わずかに頭痛が走る。

断片的な未来。

意味不明な映像。

白と黒の揺らぎ。


そして――見えない“何か”。


誠司は目を細める。

(……まだ終わっていない)


誠司はわずかに口角を上げた。

「面白い」


誰にも聞こえない声で、誠司はそう呟いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。