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果てしない海 ~終焉の魔眼と白黒の勇者~  作者: kooy
第1章 転生

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第15話 部活に参加

十二月の朝。


水瀬家の食卓には、焼き魚の匂いが漂っていた。


「わあ、お味噌汁の湯気すごいわねぇ」


「なんか雲みたーい」


母が楽しそうに笑う。


「お母さん!火ついているから危ないよ!」


澪が即座に突っ込んだ。


「あら、そう?」


「そうだよ」


水瀬家ではよくある光景だった。


涼は黙って味噌汁を飲んでいる。


美味しかった。


そして最近、妹の澪は食事の時も受験勉強の参考書を開いている。


年が明ければ高校受験。


志望校は決まっている。


だが不安は消えない。


「お姉ちゃん」


「なあに?」


「高校ってどう?」


涼は少し考えた。


そして真面目に答える。


「面白いよ」


「何が?」


「毎日クエストが発生することかな」


「は?」


澪は固まった。


「困っている人がいるのね」


「うん」


「助けるでしょ」


「うん」


「感謝されるの」


「うん」


「そして、次の日も発生するの!」


「ゲームじゃないんだけど」


母が感心したように頷く。


「高校ってすごいのねぇ」


「お母さんも信じないで」


澪は思わずツッコんだ。


涼は続ける。


「あと先生が知識を与えてくれるしー」


「それは学校だからね」


「非常に効率がいい」


「うん」


「部隊でも活動しているかな」


「部活のこと?」


「うん、最近入ったの」


澪は再びため息をつく。


姉の説明はよく分からない。


だが最近の姉は楽しそうだった。


以前よりよく笑う。


学校の話もする。


少し悔しい。


だが少しだけ安心もする。


涼が通う高校は県内でも有名な進学校だ。


真面目な生徒が多く、進学実績も良い。


自分もそこへ行きたい。


「……同じ学校に行けたらいいな」


小さく呟く。


涼は頷いた。


「うん、一緒に行こうね」


その言葉は不思議と温かかった。



その日の放課後。


特別棟の一室。


インターアクトクラブ。


国際理解と地域社会への奉仕活動を目的とした部活である。


元々は部員不足で存続も怪しかった。


だが今年は違う。


きっかけは涼だった。


活動内容に興味を持った涼が入部し、ヒナも誘った。


その後。


なぜか学年上位常連の白石莉乃も入部した。


さらに小坂美羽や女子生徒たちも加わり、部員は一気に増えた。


「みんな集まったね!」


顧問の佐伯由香が手を叩く。


三十五歳。


少し熱血。


だが、かなり小心者。


そして妙に「ね」が多い。


「えーとね、今年の年末もね、地域ボランティア団体の皆さんとね、一緒に清掃活動をするのね」


部員たちが頷く。


「それでね、今年はこんなにもたくさんの部員が参加してくれるからね、先生すごく嬉しいのね」


「始まった」


ヒナが呟く。


「始まったわね」


莉乃も呟く。


「先生、“ね”多くないですか?」


美羽が言った。


「あっ」


佐伯は固まった。


「そ、そうかな……ね?」


さらに増えた。


部員たちから笑いが起きる。


涼は特に気にしていなかった。



その説明を聞きながら。


涼は少しだけ胸が高鳴っていた。


国際理解。


地域社会への奉仕。


人のために活動する組織。


勇者だった頃。


そんな言葉はなかった。


人を助けたいと思う者はいても。


集まり。


協力し。


社会のために動く仕組みは存在しなかった。


だから少し羨ましく思う。


「水瀬さん」


莉乃が声を掛ける。


「なに?」


「年末清掃、参加するでしょ?」


「もちろん!」


即答だった。


莉乃は少しだけ笑う。


彼女は塾へ通っている。


勉強だけでは測れない何かがある。


涼の存在が気になる。


そんな思いが入部のきっかけだった。


だが今では活動そのものも嫌いではなかった。



「おっ、やってるな!」


勢いよく扉が開く。


神宮寺蒼真だった。


「なんでいるの?」


ヒナが即座に聞く。


「暇だった」


「空手部は?」


「終わった」


「帰れ」


「ひどくないか?」


蒼真は勝手に席へ座る。


顧問の佐伯が戸惑う。


「神宮寺くんって部員じゃないよね?」


「いいと思います」


莉乃が即答した。


「だよな!」


蒼真も頷く。


「それに奉仕活動は大事だろ」


「それはそうなのね……」


顧問の佐伯は納得してしまう。


「あと清掃活動のあと豚汁とか出るか?」


「それが目的!?」


部室に笑いが広がった。



その頃。


駅前の飲み屋街。


体育教師の村上は一人で歩いていた。


寒い夜だった。


生徒には怖がられる。


威厳といえば聞こえがいいが、生徒指導が下手なのだ。


同僚とも上手くいかず、職員室では孤独を感じる。


誰も自分を見ていない。


(俺は間違っていない)


(ちゃんと指導している)


(なのに誰も分かってくれない)


だがそれを口にすることもできない。


その時だった。


「先生」


声がした。


振り返る。


一人の女性が立っていた。


夜乃は柔らかく微笑む。


その瞳は村上の奥にある闇を見ていた。


孤独。


劣等感。


承認欲求。


利用しやすい黒だった。


「少し、お話しませんか?」


村上は戸惑う。


そして。


その誘いに足を止めた。


夜はまだ始まったばかりだった。


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