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堕天使ちゃんは逃げ惑う  作者: 霞灯里
第3章 聖百合園

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第55話 アルテナ・フレイスの後悔(1)

活動報告にキャラクターヴィジュアルイメージを掲載し始めました。最近ハマってる流行りのAI生成イラストです。作風コロコロ変わると思います。都度更新予定です、もしよければご覧下さい。



あれは――あの目は、この身の毛のよだつ怖気は……あいつと同じ……!



この身を貫くような死の気配、魂が凍るほどの怖気を放つあの目は、間違いなく()()()と同類だった。


圧倒的な捕食者を前に死の予感を感じながら沈むゆく意識。その夢の中で傷口を指で押し広げられるように、忌々しい記憶が走馬灯のように駆け巡り精神を削ってくる。




私はアルテナ・フレイス。焔嵐の魔女と恐れられるアダマンタイト冒険者。


名門貴族の家に生まれた私は幼い頃から完璧で天才だった。生まれついての二つの属性適正と膨大な魔力量に、神童ともてはやされた。そして私は美しい、誰も彼もが私の美貌を羨ましがった。


そんな私が憧れていたのは英雄という存在だった。幼い頃に何度も読み返した、名声を意のままに世界を旅して伝説を残した英雄達の冒険譚――特に剣の頂点へ到達した“剣聖”の物語は、私の胸を強く焦がした。


栄誉と名声が物語となって、後世まで語り継がれるような存在になりたかったのだ。世界に己の爪痕を刻み込む、そんな伝説的な英雄に並ぶことを、私は夢見ていた。


魔法学校では類まれな才能で主席、そして在学中に実力を見込まれルヴァニア王国の宮廷魔術師にスカウトされた。将来は王国最高の魔術師になると囁かれた、華やかに見える出世街道。だが魔法学校卒業と共に宮廷魔術師は辞めた。


国や貴族のカス共に、何故私が従わなければならない。年功序列で長く居るだけの無能なクズ共に何故、偉そうに使われなきゃならない。とにかく私は自分が一番じゃないと気に入らない。私は最高に偉ぶりたいの!


私は面倒な貴族社会を心から気嫌いし、家出して16歳で冒険者になった。実力主義で自由かつ自分本位でいられる環境は非常に心地よかった。天才の私は直ぐに頭角を現しゴールドランクまで順調に昇格していった。


しかしミスリルランクからは苦労し、そして剣聖の立つ冒険者の頂と言えるアダマンタイトへの昇格は更に困難を極めた。どれだけ努力し腕を磨き、世界に貢献しても昇格出来ない。天才の私が何故これほどまで苦戦しているのか。ありえない、気に入らない、許せない。


しかし、そんな私がアダマンタイトへと昇格出来たのは、四年後。その頃には二十歳になっていた。




アダマンタイト昇格の際は、王都で大勢の人が集まる厳かな任命式がある。そんな立派な任命式に立てる事に上機嫌でいた時に、耳を疑う話が舞い込んで来た。もう一人同時にアダマンタイトに十六歳の少女が昇格すると。任命式は二人の式典だと告げられた。


それが、黒聖女(ノクスメイデン)を知った瞬間だった。


私は荒れに荒れた。天才の私が死ぬ程努力しやっと手にしたアダマンタイトの証。それをたった十六歳の小娘が手にしたのだ。十六と言えば私が冒険者になった年齢。何故そんな小娘がアダマンタイトに昇格できる!?


任命式に現れた黒聖女に私は息を呑んだ。小娘は人外のような美しい容姿に神聖な雰囲気を纏い、大きな十字架を背負いながら、目を(つむ)り胸の前に手を組んで延々と祈り続けていた。祝辞は一切聞いておらず、式典など興味も無さそうに、小声で何かを(ささや)きながら。


私がここに来るまで、この式典に立つまで、どれだけ苦労したか分かってんの!?


私は任命式で隣に立つ若く美しいだけの黒聖女と、何の苦労も知らない小娘を昇格させた冒険者ギルドが、とにかく憎々しく気に入らなかった。


だから、任命式が終わった後に黒聖女に絡んだのだ。


「ねぇ小娘、あんた黒聖女なんて呼ばれて、いい気になってんじゃない?」

「………」


黒聖女は相変わらず目を瞑り何かを祈りながら、道を塞ぐ私を流れるように避けると無視して去ろうとした。私は一気に頭に怒りの熱が上がり、黒聖女の肩を掴んだ。


「無視すんじゃないわよ!あんた何様よ!!」

「………」


その時、黒聖女が薄目を開けて、僅かに私を見た。


「ヒッ……!」


その刹那(せつな)、全身に走る怖気。殺されたと錯覚する程の殺気。あまりの衝撃に腰を抜かし、無様にその場へストンと座り込んだ。


黒聖女はそんな私をつまらなそうな物を見るように一瞥(いちべつ)すると、そのまま立ち去って行った。


「……な、何……?何なのあれは……?化け物……!?」


まるで古龍に見つめられたかのような威圧の余韻(よいん)に、ガチガチに震えながらそんな言葉を呟く事しか出来なかった。




あまりの恐怖体験から、私は黒聖女についてギルドに話を聞いた。あの小娘は、あの若さでヒューマンという人種の限界を突き破った上位人種(ハイ・ティア)、ハイ・ヒューマンだと言うことを知った。半ばお伽噺(とぎばなし)のようにその呼び名は知ってはいたが、こうして実在していることに驚愕した。


上位人種(ハイ・ティア)は筋力も魔力も数倍に向上し、容姿は整い寿命までも大幅に延びるらしい。どういった経緯で上位人種へと進化するかは全く解明されていないようだ。


ある者は求道と探求の果てに、ある者は生まれ落ちて直ぐに、ある者は血に潜む遺伝に突然覚醒し、ある者は偶発的に、様々な要因から上位人種(ハイ・ティア)へと進化する。


上位人種を調べる中で知ってしまった。かの剣聖は剣を極める事でハイ・ヒューマンへ進化する道を探していたらしい。そんな剣の極致に、修羅の道に生きた剣聖でさえ、六十歳を超えても上位人種(ハイ・ティア)には成れなかった。


その現実に私は絶望した。そして、僅か十六歳の黒聖女が如何(いか)に化け物なのかを知った。


そういった者たちが真の上澄(うわず)みの強者(つわもの)だということを知った。そして、そんな化け物達が冒険者ギルドに実在することを知った。


私は天才では無く、只の秀才だった。アダマンタイトの下辺に位置する、有象無象(うぞうむぞう)。その現実を分からされた私は、暫らくの間立ち直れなかった。




そんな時だ、世界に煌めく新たな英雄が誕生したのは。


世界で初めて黒冠と黒葬(ブラッククラウン)を捕らえ、彗星のように輝く英雄が現れた。その大手柄により、冒険者登録からたった一か月の新米冒険者はアダマンタイトへと昇格し、私の領域まで一瞬で昇り詰めた。


そんな英雄の名声が、羨ましかった、欲しかった、憧れた。大手柄を上げた新米冒険者が憎かった、恨んだ、強烈な嫉妬に狂った。冒険者登録からたった一か月の新米が、実力で黒葬を捕らえられる筈がない、ただの強運が舞い降りただけだと、(あなど)り見下した。


そして、私の中に一つの考えが浮かんだ。そんな新米を手下にすれば、英雄の名声は私のものになると。


若い女で経験の浅い新米冒険者であるという情報は、私にとって都合の良い材料だった。支配して取り込み手駒にしやすい、お得で手頃な都合のいい女。優秀な部下の手柄は主人の手柄、そう閃き相手を舐めきった私が動き出すのは早かった。


そして今に至る――何故、私は考えが及ばなかったのか。浅はかだった。


「うぅ……」


エリュシェル・フォールンがただの運の良い新米冒険者ではなく、真の強者であるかもしれないと。あんな化け物がそうそういる訳が無いと思い込んでいた。


「目が覚めたのねぇ?」

「ヒッ……!?」


目を醒ました時、私は鏡に取り囲まれた神秘的な空間の中で、宙吊りにされ身動きができない状況にいた。

この物語を読んで頂き有難うございます。

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また、評価いただいた方、有難うございました!

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