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不透明統制部隊  作者: 芽生
第一部:記憶と想いは明瞭に
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23/24

第二章 12話 邂逅、再び

 ──約3時間後。

那月

「よし、気合い入れるぞ!」

 東京ドームの入口へ向かう途中、状況確認をすると、ドームの周りを迷彩服を着た体格のいい男性が囲んでいるのが見えた。あれが自衛隊だろう。

照夢

「ほんとに自衛隊も協力してるんだ。」

羽弛

「それだけ大きな事件なんですよ。」

 そんなことを考えていると、4人は入口に到着した。物静かで禍々しい空気を感じる。

正直半信半疑だ。こんなに堂々と、自衛隊やOCFと真っ向勝負をするのだろうか、本当にここに奴らはいるのかと。

ただ、異様な空気と、掲示板に貼られている『本日予定されているイベントはありません』という一文が、信憑性を高めている。


 そんな時、那月の肩がぽんと叩かれた。

颯太

「気張るのは悪くないが、気張りすぎて潰れないように。深呼吸でもしとけ。」

渚

「颯太さん……。」

 そうは言っているものの、颯太は何か思うところがあるような様子でやけに落ち着きが無い。

那月

「……大丈夫か?」

颯太

「ん、あぁ、悪い。……首謀者に心当たりがあるんだ。お前らが見つけた手記で確信に変わった。」

「そこに居るのは多分『シャノワール教団』幹部だ。そいつは俺がやる。」

羽弛

「そんな様子で、ですか?」

照夢

「そうだよ! 颯太さんいつもと全然違う! 冷や汗も凄いし、手だって震えてるじゃん!」

 颯太は自身の状態を把握できていなかったようで、指摘を受けて目を丸くした。

颯太

「……いや、これは武者震いだ。」

渚

「誰なのかは知らないけど、そんなに抱え込むことないんじゃない? 私たちもいるのよ?」

颯太

「そうじゃない。お前らじゃ手も足も出ないって話をしてるんだ。」

「悪い、大丈夫だ。お前らは自分の身を守ることを第一に考えろ。」

 今まで数々の死地をくぐってきた颯太は、自分を律する術(すべ)を知っている。

大きく深呼吸をすれば、もう既に冷や汗も震えもない。いつでも戦える状態に無理やり調整した。


 颯太は時計を確認すると、いつかのように一方的に話し始める。

颯太

「21時50分……よし。今から手順を伝える。」

「ドームの中に教団員がいるのが確認できた。全部で18人。少ないが見たところ全員かなりのやり手だ。邪神から力でも貰ってるんだろう。」

「5分後に自衛隊と一部OCF隊員が一斉に突入。教団員を分散しつつ拘束。」

「その3分後に俺らは裏から侵入。隙を見てお前らが言っていた"魂を保存できる棺"を破壊するんだ。」

 4人は静かに頷く。

颯太

「よし、それじゃあ作戦開始まで待機。連中は何をしてくるか分からない。集中を切らすなよ。」

羽弛

「ついに……母の仇が討てる。」

那月

「こういう時こそ、冷静になるのが大事だぜ。獲物を仕留める瞬間がいちばん無防備だって言うからな。」

 そんな時、突然ビデオ通話がかかってくる。

照夢

「……ハオ?」

ハオ

『もしもし! 見える?』

『ワタシも突入部隊に割り振られたから、状況がわかるように中継するよ!』

颯太

「無茶だけはするなよ。」

ハオ

『分かってるって! ワタシに任せて!』


*


 ──21時55分。

時間だ。予定通り自衛隊と一部の諜報員が突入する。

ハオ

『それじゃ行ってくるよ!』

 今ビデオ通話を繋いでいる浩宇(ハオユー)もその1人だ。

ドームの中は暗く、ライブ会場のようになっていた。

中央の地面には幾何学模様が、その上には手記に書いてあった棺が置かれており、それを取り囲むように数十人の黒いローブを纏った人間が理解不能な言葉を繰り返している。


「いあ! いあ! くとぅるふ ふたぐん!」

「いあ! いあ! くとぅるふ ふたぐん!」


 黒いローブを纏った狂信者たちは入ってきた自衛隊に目もくれず、謎の言葉を呪文のように繰り返しながら儀式を続けている。

照夢

「……気持ち悪いね。」

羽弛

「これが、召喚の儀式……。」

渚

「この棺を壊すのが私たちの目的ね。」


自衛隊員

『──ッ!!』

 呆気に取られていると、先頭の自衛隊員が悲鳴を上げた。

カメラに映った隊員の胸部には鋭い爪痕がつけられ、鮮血が流れている。

目の前にはいつか見た魚面の怪物が立っていた。

そこでハオとの通話が突然切れる。

颯太

「通信妨害か。流石に用意周到だな。」

「とはいえ、向こうの心配をしている暇はない。……そろそろ3分だ。準備はいいか?」

那月

「当然だ! オレらはオレらのやるべきことをやる。」


*


 ──21時58分。

颯太、那月、羽弛、照夢、渚は裏口から侵入する。

客席には戦っている自衛隊員の姿が、ドーム中央には先程確認した様子が見える。


「いあ! いあ! くとぅるふ ふたぐん!」


 その瞬間、チリンと鈴の音が聞こえた気がした。

???

「──貴方(あなた)がたは背後を取っていると思いました。予想は的中しましたね。」

「招待状も無事に届いたみたいで良かった。ようこそ、『不透明統制部隊』の皆さん。また会えて嬉しいですよ。」

 ──背後から声がした。

ふと声の主に意識を向けると、そこには刀を持った白髪の男がいた。

耳元のピアスと首のタトゥーが目を引くが、派手な見た目とは裏腹にキッチリとスーツを着こなしている。

羽弛

「あ、貴方は……!」

 なぜ忘れていたのだろう。コイツとは、あの商店街で会っている。

その妖艶な、深い深い瞳に覗かれ、一瞬身体が固まる。

レクトル

「ふふ……正義の反対が悪なんて、誰が決めたのでしょう。正義の反対も、また正義です。両者共に、それなりの正義があるのですよ。」

「今回の儀式は是非とも皆さんに見て頂きたかった。魂こそ至高、時空を超えるためには魂を捧げなければ。」

「……おや、これはこれは、神崎君、お久しぶりです。5年ぶり、でしょうか。」

 レクトルは視界の端に捉えた颯太に名指しで挨拶をする。颯太が言っていた"心当たり"は正解だったようだ。

颯太

「……嫌な予感はしていた。まさか当たっちまうとはな。お前が生きてて嬉しいよ、レクトル。」

「だが因縁もここまでだ。今度こそ、殺してやる。」

レクトル

「ふふふ……諦めが悪くてすみませんね。」

「遅ればせながら改めて自己紹介を。『シャノワール教団・特別特殊行動隊|"LECTOR"《レクトル》』隊長、レクトル・ヴラディスラフと申します。」

「勝者だけが正義です。始めましょう。」

 レクトルは携えた日本刀の鞘に手を添える。

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