市松模様はもう描きたくない
メルヘーヌ地方の空に映える浮遊建造物『フロートキャッスル』。
足場となる床がいくつか浮かんでいて、その床と床を階段や通路が結びつけているという不思議なデザインだ。メルヘーヌ神話では『神がまだ子どものときにブロックで作ったオモチャの城』と語られている。オモチャの城、といっても小さな村ひとつくらいの大きさだ。
このフロートキャッスルには財宝の数々が眠っているとされ、冒険者や盗賊たちの憧れの地でもあった。しかし城は常に浮遊している上、強力な魔法結界と恐るべき罠、そして城に住むふたりの神の子たちによって強固に護られていた。
「ちょっと、あれケーキじゃない?」
「ワォ!」
神の子アオイーナとマッカーナは城を巡回中、ふわふわと宙に浮かんでいるショートケーキを見つけた。
「先にみつけたから、あれはアタシのね~」
アオイーナがケーキに向かって走り出す。
しかしこのケーキこそ、神がフロートキャッスルに仕掛けた恐るべき罠のひとつなのだ。
ケーキに夢中になっていたアオイーナは足元にあいている穴に気づくことなく落ちる。
このように、この城には恐ろしい罠がいくつも仕掛けられているのだ。
穴に落ちたアオイーナが、魔法のシャボン玉に包まれてふわふわと戻ってくる。彼女たちは不思議なちからで護られているので城から落ちても問題ない。
「あーびっくりした。この罠はちょっとひどすぎよ、ケーキで人を釣るなんてさぁ。こんなの誰でも落ちるわよ」
「神さまってモゴ、案外イジワルモゴね」
「アンタなにモゴモゴしてんの。あ、それアタシのケーキ!」
「モゴっ」
残りのケーキをぜんぶ口に頬張ってマッカーナが逃げ出す。それを追いかけようとしてアオイーナがまた同じ穴に落ちる。
「モゴゴwww(二度目www)」
神の子ふたりは、城の護衛にはあまり役に立っていない気がするが、まあ元気に毎日働いている。




