元最強剣士、圧倒する
更新遅れて申し訳ないです。
評価、ブックマークともにありがとうございます!
現在は週一の投稿ですが、三日に一話投稿できればいいな程度の更新ペースで行こうとは思っています。
ただ、一話3000文字前後は崩したくないので、きちんとやるため遅くなることもご了承ください。
「…まぁいいだろう。話はあとだ。ルールは簡単。俺たちを倒せ。実際、お前があそこに入学できるかどうかは、監視カメラを通してこの状況をみている学園長が判断する。」
「なるほど。わかりました。」
「開始の合図は学園長の気分だ。いつなるかは俺達もわからん。最長でまるまる1日待たされたこともあったし、いま、こうしてルール説明をしている最中に開始の合図がなったこともある。」
「えげつないことしますね、学園長。ところで、戦っている最中でも、入学可能と判断すれば、その時点で試験は終わりになるのでしょうか?」
「そうだな、結果がで次第そこで終了だ。いつでも始められるように準備しておけ。」
「わかりました、ではよろしくお願いします。」
なんとなく、本当になんとなくだが、まだ開始に時間がある気がする。だから、さっき作り出した杖、固形魔力で作られたそこそこの性能の杖。試しうちしよう。
「うーん。たしか、杖の強さでも魔術のランクは上がったよな…?よし。召喚!」
自分の真後ろにダーツ盤を召喚する。とりあえず速度と威力を見れればなんでもいいだろう。
前にも言ったように、魔法に名前をつけるのはなんとなく、そしてカッコいいから。まぁ、正直、もう召喚とか吸収とか、無言でやるのが一番早い気がする。
事実、僕は当たり障りない攻撃魔法に関しては無言で、「とりゃ」、とか、「ていっ」、とかの簡単な掛け声みたいなものでほいほい出している。
今回は軽い、火の玉。魔術師の基礎の基礎。基礎と言ってもかなりあるが。前にも基礎を応用したなぁ。
今回のは全方位、さすがに対戦相手には向けないが、コロッセオの壁もいい具合に威力確認ができるだろう。
「ていっ。」
杖の先から放たれた火の玉は、ダーツ盤と、周りの壁に向かって飛んでいく。距離的な問題で第1に攻撃が当たるのはダーツ盤。その次に壁。
まずダーツ盤。火の玉が当たって、大きく爆発。ダーツ盤は粉々、火属性で燃え上がり、灰になった。的が小さいから威力反応も小さかったっぽい。
でも、少し遅れてえげつない音がした。爆発音の後に、パリーンと、何かが割れる音。多分、ここにかけられていた防壁魔法が壊れてしまったのかもしれない。やけにうっすい物だから、防壁魔法だとは思ってもなかった。よく見たら本当に極少の瘴気がでている。こんなに少ないと気が付かない。
やれやれ、と思い防壁を貼りなおそうとした時、後ろからガシャンと、なにか重たいものが落ちたような音がした。
振り向くと、強面の人が、顔を青ざめビクビクと震えている。
「…どうされました?お腹でも下しました?」
「お、おま…え、そ、それは…。」
「…あ…りえなイ。」
喋った。一度も喋らなかった、ぼーっとしてるだけの、やる気のなさそうなほう。ちょっと最後の言葉がへんに音を外しているけれど、喋ったことに間違いない、「ありえない」、と。
「ありえない、とは?」
「…ここの防壁魔法は再構築をしなくても済むように、この国の最高賢者、ウルア様が1日を費やして構築した防壁。あなた、一体どうやっテ。」
「…いや、その方がありえない…。むしろ、どうしたらこんな薄皮の防壁が破れないのですか?」
「…ハ?」
信じられない、とでも言いたげな顔で僕を見つめるふたり。反応が面白い。少しからかってみよう。
「じゃあ、僕がここの防壁を絶対に誰にも破れない防壁に変えてあげましょうか?」
「?!き、貴様は何を言っている!そんなこと不可能だ!」
「いーや、できるできる、できますとも。」
先ほどの防壁を反撃が無いように再構築し、反撃で埋まっていた魔法式の部分は全部防壁強化に当てた。
たぶん、この強度なら僕が全力で命を犠牲にした大技でも繰り出さないとヒビすら入らないだろう。
「【防壁・改】!」
闘技場全体を囲むように貼られた防壁。その瞬間、上空からけたたましいブザー音が聞こえた。
「…開始の合図だ。問答無用、行くぞっ!!」
「おわっと、本当に急に始まりますね。【重力】!」
「んごっ?!」
言い終わる前に俺に突進してきたもんで、ビックリしてついつい押さえ込んでしまった。でもこれは常に発動し続ければ、多分重さでこの人は動けない。だから別に気にすることなくこのままにしておこう。
「…めんどいなぁ。次はアンタか。」
「強いね、君。【流星雨】!」
前世に使っていた接近戦攻撃で倒そうと思ったけど、目の前から細長い粒子が次々飛んでくる。流星雨の癖に、近づけない。上から降らせろよ。
「まぁ、そんなの無意味ですけどね。【魔壁】!」
まさか、早速使う時が来るとは思わなかった。物理魔法ではないので、当たれば反撃が飛んでいく。流星雨、その名の通り雨のように大量の弾幕が。…しかし、俺には届かず、かわりに何倍もの威力と速度を誇る俺の弾幕が、彼女に向かって飛んでいく。
「っ?!防…ぐはっ!!」
あまりの速さに、防壁を展開する前に当たってしまったらしい。一度当たった弾幕はその場で大爆発。彼女はその一撃で片腕が飛び、意識も飛んだ。無抵抗で宙に浮く彼女に弾幕が連鎖し、彼女の体はどんどん穴だらけに。
さすがにこれ以上やるとちょっと可哀想、というか、かなりやばい事になるので、魔壁を解く。
「うわあっちゃー…。どーしよ。」
とりあえず目が飛び出そうなほど彼女を見つめている強面の彼の重力を解いてやり、やり過ぎた彼女のほうへ駆け寄った。
「…【解析】。」
両腕、右足の破損、内臓破裂、骨折9箇所、出血多量、バイタル0。死んでる。たぶん即死。
「な、ま…。み、ミルエ…!」
慌てて駆け寄り、血塗れの亡骸を抱き抱える強面さん。彼女はミルエという名前らしい。
「お前、なんてことを…!」
「いや、そう言われましても…。こんな初歩的な威力に近い魔法を防げない方が予測難しいですし…。治しましょうか?」
「……馬鹿かお前は。死んだ人間は…もう…。」
「【蘇生】。」
蘇生は体の細胞やらの時間を巻き戻す魔法。これは回復魔法の分類ではなく時間魔法の分類だ。蘇生をかけた範囲は体全体。体の時間をすこし前、つまり攻撃を受ける前の状態に戻すことが出来る。
…まぁ、この魔術を使うにはちょっと、いや、かなりいろいろ大変なんだけど、僕にはあんまり関係ない。
「…ちなみに、学園長からの判定はまだ出ていないんですか?」
「いや、実は、もうとっくに出ている。俺もわかっていなかったのだ。最初に一際大きいブザー音が鳴っただろう?俺はアレを開始の合図だと思った。だが違った。開始とともに終了の合図でもあったんだ。やけにブザー音が大きいと思ったが、まさか同時に鳴らしてるとは思わなかったんだ。突進したが、お前の魔法で地面に貼り付けられている間に、笑われながら伝えられたんだ。まぁ、体が重すぎてまともに声すら出せなかったから伝えられなかったんだが…。」
抱き抱えたミルエの体が元に戻り、体を少し動かし、元に戻ったのをみて彼はまた目が飛び出しそうなほど驚いていたが、俺の質問には答えてくれた。
つまり、俺が全体的に悪い。…のだろうか。あまりよく分かってないが、とりあえず謝ろう。そして帰ろう。
「いや、待てよ。」
「うん?どうした?」
「…うぅ、みゅ…。」
「!み、ミルエ!大丈夫か?!」
「うん…?あれ、私たしか…。」
「彼が治してくれた。良かった…。」
「…すみません、仕切り直し出来ませんか?」
「な、なに?」
「僕、実はとある子と一緒に入学したいんですが、彼女の実力でもあなた達を倒せそうなら受けさせる予定なんです。でも、実力を見る前にさらっと終わってしまったので。」
「つまり、俺たちを試したい、と。」
「そうなりますね。」
「この子は、強イ。君の言う子は、強いノ?」
ミルエさんは体を起こし、探るような目つきで聞いてきた。
「えぇ、アリス・ルイナーという子です。」
「アリス・ルイナー?!まさか、国外で魔物を軽々と倒したと、噂の…。」
「そうらしいですね。私立総合の試験の時に会ったんですけど、彼女なかなか出来ますよ。」
「…戦ったのか?」
「えぇ、必然的に、運良く当たりまして。彼女、【千本櫻の開花】まで発動出来てましたよ。」
「え…。あなたとの戦いで、奥義を使っていたノ…?」
「はい。ちょっと避けるのめんどくさかったので、奥義ごと打ち消しちゃったので全貌は見てないんですけど…。」
「奥義を打ち消した…?み、ミルエ、そんな魔法はあるのか?」
「私の知る限りでは、なイ…。」
「話遮ってすみません、一方的でもいいので攻撃をお願いします。もちろん本気で。先ほどの魔壁は使いませんから、とりあえずあなた達の実力が見たい。彼女と入学するにはそれが手っ取り早いですし。」
彼は不意に後ろを向いた。こめかみに手をあて、うん、うんと小刻みに頷いている。すると、慌てたように、「いいのですか?!」と、耳を塞ぎたくなる声の大きさで言った。ミルエは既に塞いでいた。遠慮がない。
少しすると、彼はこちらに向き直った。そして、おもむろに一言。
「…彼女は上級学園に合格したそうだが、こちらの学園でも問題ないレベルらしい。映像でも確認されたが、秒もかからず瞬殺したらしい。彼女の希望があればこちらの学園に、学園長自らが君も含め、特別優良生として入学させたいらしい。…どうだろう?」
「なるほど、それは彼女は?」
「しらん。伝えていないからな。入学願書は番号札返却時に渡される。もちろん、マリオネアルからは彼女の分も、だ。入学する決意があるなら、願書と現在在学中の学校の学生証を持って、いつでもいい、マリオネアル学園学園長室へ行ってほしい。」
「分かりました。では、後ほど。」
わざわざへんに実力を見ずとも合格できるなんて、なんて楽な入学試験だろう。ただ、これならきっとアリスも一緒に入学してくれるだろう。
少し楽しみだ。




