元最強剣士、こっそり昇格試験を受ける
「ごめん、待たせたね。」
「んーん。そんなに待ってないよ。」
先生に喧嘩らしきものを売った翌日。俺は彼女とハンター協会に来ていた。
ハンター協会というのは、主に有力者、つまり俺たちのような戦闘職になりたい者のために作られたもの。昇格試験はここで申請すれば、受けることができる。
「うーんと、昇格試験、上級学園は…あ、やっぱり、受付は別だね。」
「本当に上級学園を受けるのかい?今からでもマリオネアルに変えたら?」
「?!む、無理無理無理無理!!あんなの私じゃ到底合格できっこないよ!」
「…なら、合格できるように教えてあげようか?魔法とか、剣技。君は自分の力の50%くらいしか引き出せてないからね。感覚さえ掴めば最難関、簡単なんじゃない?」
「…アレン君は私を買いかぶりすぎだよ…。」
「そうでもないよ。まぁ、お世辞でもめちゃくちゃ強いとは言えないけどね。たしか、試験は何回でも受けられるんだっけ?」
「え?うん。同じ試験は連続で受けるのは無理だけど、別の試験なら翌日には受けられるよ。」
「わかった、なら僕がマリオネアル受けてくるよ。アリスは上級受けて。僕が試験のレベルを見て、それから判断するよ。君なら、成長も飲み込みも早そうだしね。」
「…本気?」
「これでも、僕は強いからね。じゃあ、また後で。」
国立の総合、上級の学園は、割と受かりやすいらしい。
いや、上級はそうでもないけれど、でも、受付には総合に長蛇の列、ざっと500人くらい。上級者には、100人くらい。…マリオネアルには、受付の人がいるだけで、誰もいない。受付自体寝ている。仕事しろ。
俺はとりあえず申請をどうするか分かっていないので、とりあえず聞こう。
受付までのそのそと歩くが、周りからざわめきが上がる。最難関の学校を受けるのがそんなに珍しいか。
「あの、すみません。」
「…zzz」
「…あのー、すみませーん!」
「っ?!はっ、はい!…って、あれ?」
「昇格試験の申請って、どうやればいいんですか?」
「え?ええっと、まず受けたい学校の列に並んでいただいてですね…。」
「すみません、マリオネアルを受けたいので、ここであってると思うんですが。」
「っ?!?!?!!??!?!!?!」
ガタン、と椅子から転げ落ちて、逃げるように奥に消えていった受付さん。俺は逃げられたのか?それとも資料でも取りに行ったのか?
と、思っていたらまた奥の部屋からガタンガタンと音がした。なんかデジャヴを感じる。
しばらく待つと先ほど転げ落ちた受付さんではなく、別の、お硬そうなメガネをかけた男性が、紙を持ってやって来た。
「…国立マリオネアル学園昇格試験受験希望生の方でよろしいですね?」
「はい。本日受けられますか?」
「…可能です。受験されるのであれば、こちらに必要事項をご記入ください。」
「はい。」
名前、住所。いろいろ書いている間、メガネさんこらの視線が痛いほど伝わる。
-【心読】
『はぁ、なんでまたこんな子供が。見た目的にもひょろいし、こんなガキがあんなヤベェところ受かるわけねぇだろ。だいたい試験内容だって…』
「(おっとまずい、危うく試験内容まで聞くところだった。)」
心読は人の心が読めるけれど、別に過去が見えるわけでも行動が読めるわけでもない。別に読もうと思えば読めるけど、また複雑魔法を作らなくちゃいけないし、今は別に必要じゃない。
ただ、見た目的に舐められてるあたり気に食わない。こりゃ試験突破しないと笑われる。
「出来ました。」
「…確認してまいります。1時間ほど時間がかかりますので、こちらの番号札でお待ちください。ちなみに、試験は申請が通りしだいすぐ始めますか?」
「はい、それでお願いします。」
「かしこまりました。では、お待ちください。」
メガネさんは書類を持って奥へと消えていった。
1・マと書かれた番号札を持ち、控えようの椅子に座る。
座っているだけなのに、周りからの視線が痛い。そんなに大変なのだろうか。流石に下調べの一つや二つはするべきだったか。
俺は、前世、前前世共に、何が、どんな状況であっても他人との負けたことがない。座学もそうだ。本なんか一度読めばすべて覚えるから、わざわざ借りたりする必要も無い。
もちろん、部分的に、必要な部分だけ覚える効率駅な方法じゃないから、最初のページからパラパラ思い出していかないといけない。だから、ちょっとというか、本で知識を覚えるのは、なるべくやっていない。
でも、まぁそんな効率の悪いやり方でも、入った知識は抜けていない。座学も実技も、たぶん完璧、のはず。
でも、残念ながら俺の知識は1500年前のもの。それが現代で通用するのかどうか。
ただ、魔法学はたぶん、大丈夫のはずだ。教科書はさっと流し読みしたけど、ほぼ全て俺が作り出した魔法のあまりにもひどい超絶劣化版だった。
だから、たぶん問題は実技。魔法発動時に展開される魔法陣の内容を瞬時に読み取ってしまえば、【削除】が通用する。まぁ、通用しなくても強制魔法を使えばいいんだが。
「と、そう言えば、僕は魔術師ステータスで転生しちゃったんだよね。なら、新たに魔法が使えるってわけだ。」
丁度いい。ずっと使って見たかった魔法がある。
この1時間、暇でしょうがないのだが、試験を受ける人のために1人用と対人用の隔離闘技場が設けられている。
そこで、魔法の試し打ちをしてみよう。
辺りを見回し、マリオネアル学園受験希望生専用闘技場、と掲げられた看板を見つけた。
総合と上級は同じようだが、恐らくマリオネアル学園入学者はたぶん、頭1つどころではなく10くらい抜けているんだろう。遠目から見て、その空間内で発せられている魔性気の量が違う。
それだけ、マリオネアル学園の入学者は強い、ということなのだろうか。ただ、あの空間内の魔性気だけなら、どうってことない。
そもそも魔性気とは、魔力を使って作られた魔法から発せられる瘴気のようなもの。ただ、瘴気は発せられた魔法の物理的なサイズではなく、注ぎ込まれた魔力によって変わる。
これで、どれだけ強い魔法を使っているのか、使っていたのかと、痕跡もわかる。
マリオネアル学園受験希望生用闘技場は、総合、上級闘受験希望生用技場と比べると、およそ156倍。総合の魔力を1とするならばマリオネアルは156。俺はたぶん現時点、弱体化状態で1万に行くかどうか。
今の俺だと、闘技場の防壁は心もとなさすぎる。さらっとぶち壊しそうだ。
「ん、まぁ別に防護壁のなかから防護壁の魔法をかければいいだけか。」
闘技場に入るには番号札が必要らしい。俺の持っていたものを中に入れると、自動的に反応して、扉が開いた。
中に入ると、広がったのはコロッセオ。世界的な文化遺産…らしい。これ俺が商品欲しさにぶち壊したんだけどなぁ…。
「まぁいいか。さて、まずは防護壁の魔法から。これは何にでも使えるほうがいいな。」
まず普通に基礎魔法、【防壁】
そこに防壁強化用に、【複雑化】
そこに俺のオリジナルの【吸収】という魔法を付ける。
実際、個人オリジナル魔法は名前を自由につけられる。学校の教科書とか、世界規模で共通されていない限り、自分の好きなように魔法の名前を変えられる。というか、つけられる。
俺はどっちかと言うとかっこいい名前とか苦手だから、ある一定のもの以外は防壁、とか、浮遊って書くだけ書いて、読みをオリジナルにしている。わかりやすい方がいい。
分かっちゃいけないもの。例えば、煉獄の襲撃。読みだけじゃ何もわからない。まぁ強いて言うならたぶん火属性魔法だろうなーくらいしか分からない。それでいい。あまり手の内がバレてもいいことない。
「あ、そうだ、遠距離魔法が当たったらその魔法を消滅させる【消滅】も入れとこう。これで魔法攻撃に関しては完璧。あ、あれなら…。」
「【煉獄の襲撃】、【魔壁】!」
煉獄の襲撃は開始の合図をしない限りこちらを向いた玉のまま動かない。その間に魔壁を貼る。
魔壁の主な動作は、
物理攻撃を別の場所へ転移
魔法攻撃の衝突感知→消滅→反撃
といったもの。物理攻撃を別の場所へ転移、というのは、言うなれば物理攻撃が飛んできた場所にのみ空間の亀裂を発生させ、別の場所にもう一つの亀裂を作り、そこに攻撃を移す。言わばブラックホールとホワイトホールみたいなもの。それを瞬時に作る。
まぁ、ものは試し…っと。
「危ない危ない、剣の召喚を忘れてた。物理攻撃の効果も確かめないといけないのに。」
「【召喚】!」
召喚はその名の通り何かを召喚する魔法。自分で少し改良したため、どんなものでもいくらでも召喚可能なのだが、召喚するには引き出し用の格納庫、いわば別空間に、召喚したいものを突っ込まなくちゃいけない。まぁ、転生時に消えると思っていたウロボロスとかやばいのもまだ残ってるし…って、そうだ!!
「【現化干渉】!ウロボロス!」




