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勇者とチートと物語  作者: 紫藤 霞
ギルドと学園と
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アイリの暴走と「クリスティン」

 私が私として”きちん”とこの身体の持ち主になったのは前にも言った通り、アイリ姉が姫騎士として覚醒し暴走した時だ。

 だが、それ以前に私は私としての意識があった。

 父や兄、姉達にうそをつく形になったがこれはクリスティンとの約束でもあった。

 あれはまだクリスティンが今より更に幼少の時の事だったか。

 身体を動かそうにも動かせない。

 何を考えても誰も気が付いてくれない。

 そんな状況だった。

 当時は慌てたものだ。

 一体どうしてと毎日悩んでいたら其処に声が聞こえてきた。

 その声こそ、誰であろうこの肉体の本来の持ち主、クリスティンであった。

 私は彼と心の中で話すことに成功しさまざまな事を知った。

 此処が異世界であると言う事。

 自分が王家であると言う事。

 そして、王位継承権を保持しているが兄達が大好きだから自分は継ぎたくないということだ。

 それからは中々に楽しい毎日を遅らせてもらった。

 美しい景色を見る為に外に出歩いて貰った。

 美味しい物を食べる為に城下町にこっそりと出歩くことを教えた。

 勉強が苦手なクリスティンに苦手なところを一緒に学んだ。

 それこそ、アイリ姉……いや、アイリが暴走するその時まで、私はクリスティンの傍にいたのだ。

 私は別段クリスティンからこの肉体が欲しいといったことは無かった。

 何故なら私は既に一度死んだ身なのだ。

 新たに肉体が欲しいからと言って元の肉体の物を殺そうとなど露も思っていない。

 そして、クリスティンは賢く優しい人間だった。

 そんなクリスティンを私は好んでいたのである。



 そんなある日、私達は森でコボルトに襲われるときがあった。

 初めて出会う本物のモンスター。

 クリスティンは幼い子供であり本気の殺気に身体がすくみ動けなくなってしまった。

 このままではクリスティンが殺されてしまう。

 そう思った私はとにかく彼に語りかけた。

 こんな所で死んで良いのか、兄や姉を思い出せ、と。

 既にこの頃アムド・カラド・アイリは騎士として、セレスティンは魔法使いとしてその道を進んでいた。

 その姿を見てクリスティンもあんなふうになりたいと私に告げていたのだ。

 そして私はいつもこう返していた。


 必ず、クリスティンも兄や姉達の背中を守ることが出来るようになる、と。


 だから、今このときがその時だと何度も伝えた。

 コボルトは低い知性でありながら幼い子供の此方をただの餌だと思っているようでゆっくりとしか近づいてこない。

 相手に慢心があるならば此方の方が有利なのだと教えゆっくりとその持っている剣を握るようにクリスティンに伝える。

 クリスティンが剣を握った瞬間にコボルトも一瞬警戒するがその警戒も直ぐに溶けた。

 クリスティンの剣は手の震えをじかに伝わってしまい振るえてしまい更には足もガクガクと震えてしまっているのだ。

 こんな相手、脅威でもなんでもない、唯の食べ頃の餌だと思われたのだろう。

 そして襲い掛かってきたと同時に彼に私はこういった。


 今の君は一人ではないのだ、と

 私が付いているのだからこの程度の相手など敵ではない、と


 それを聞いたクリスティンは必死に剣を振るい、見事モンスターを切り伏せることに成功したのだ。

 だがそれでコボルトを倒すところまでは至らなかった。

 此方に最大級の警戒を示したモンスターだったがもはやこちらを獲物と見て見下して慢心していた時間が長すぎた。

 直後、モンスターに火の魔法が直撃しそれに続いて一陣の風の如くアムドが私達の隣を通り過ぎコボルトを切り伏せた。

 あの後はそれはもう凄かった。

 アムド・アイリには怒られ外出禁止令を出されるわフォンとエイプリル両親には目の前で泣かれてしまうわで凄かった。

 実際、あの時は死すら覚悟していた。


 この世界は酷く死に近い。

 それは魔物、モンスターがいるからだ。

 一般人はまず勝ち目が無い。

 そしてギルドのDランクになったばかりであっても、否、なったばかりの時こそ死にやすい。

 モンスターたちはコボルトやゴブリンといった弱い、と元の世界で思っている人も多いがこれらは知性が低い分攻撃に特化した存在だ。

 その為、CランクやBランクの物でさえ慢心し、気を抜けば簡単に死んでしまう。

 それほどの物なのだ。

 この時、生き残れたのはクリスティンの力があってこそだ。

 そう私は思っていた。

 だが、クリスティンはこの時私とは全く違うことを考えていたことを、私は知らなかった



 そして、運命のあの日。

 アイリが姫騎士として覚醒し、しかし自らの魔力に溺れてしまい暴走してしまった日。

 あの時、私は死ぬはずだった。

 精神体のこの身は魔力の暴走をもろに直撃した。

 そして消滅する、そう思ったときにクリスティンが私を身体の中に押し込めたのだ。

 無論、押し込めるなんて無茶をすればクリスティンの精神と私の精神が入れ替わってしまう。

 止めろと、止めてくれと彼に私は頼んだ。

 だが彼はこういった。


「僕は、貴方が居なかったらきっと死んでいた。あのコボルトに殺されて、もういなかったと思う。僕がここにいるのはきっと今日この日のため。貴方を生かすためだと思ったんだ。」

 止めてくれ、私は一度死んだ身。再度死のうと何の問題も無い!

「でも僕にはある。貴方を死なせたらきっと僕は僕で居られなくなる。だから生きて。生きて僕の代わりに世界を知って。」


 そういって、彼は私と入れ替わり、彼の精神は私と入れ違いに死んだ。

 私がクリスティンとなったときは私は一時的に精神を病んだ。

 アイリ、アイリ姉と同様にいきながら死んでいたのだ。

 それでもこうして生きているのはあの時彼と約束したこと。

 彼が生きろと言った事が私を私として生かしている。

 命の恩人である彼の為に生きていた。

 そして彼ら、和也と徹夜の二人がやってきた。


 今彼らと共にアイリ姉の暴走の理由を聞いている。

 暴走の理由はいたく単純だった。

 これはアイリ姉が悪いという事ではない。

 姫騎士として変身した時身体の中を駆け巡った魔力が多すぎてそれの制御が出来なかったということ。

 姫騎士として覚醒する場合殆どの者が最初の覚醒の際にこういう事を起こしている。

 徹夜のときと同等に変身した時に余剰の魔力が暴力となって辺り全てをなぎ払ってしまった。

 和也が変身した時そうならなかったのは魔力の制御がきちんとされていたからだ。

 和也の変身した時こそ、例外に当てはまるのである。


 なぁ、クリスティンよ。

 お前が見せたかった未来は私にとって驚くことばかりだ。

 だからどうか安らかに眠って欲しい。

 どうか、我らを見守って欲しい。

 今度はこの二人を、私が助けることが出来るように、と

気がつけば、ユニークが7000……見てくださり本当に有難うございます

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