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第76話 物流網再生

第76話 物流網再生

王都救出作戦は最終段階へ入っていた。

青白い避難橋を渡る人々の列は途切れない。

泣きながら歩く子供。

荷車を押す老人。

傷付いた兵士。

誰もが生きようとしていた。

そして。

その光景を見ながらカイルは思う。


---


まだ終わっていない。


---


これは始まりだ。


---


王都を救っただけでは意味がない。


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世界そのものが壊れている。


---


第四認証鍵は崩壊を続けている。


---


残り時間。

三十九日。


---


アリアの表示した数字が全員の前に浮かんでいた。


---


司令室。

作戦会議。

物流網全体図。

世界そのものの断面図。

そこに七つの赤い光が浮かんでいる。


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物流網断裂点。


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世界を蝕む本当の傷。


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アークが説明を始める。


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「これが最後の修復対象だ」


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巨大な立体図が回転する。


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第一断裂点。

北極物流脈。


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第二断裂点。

東部魔力流路。


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第三断裂点。

世界境界固定域。


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第四。

第五。

第六。


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そして。


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第七断裂点。


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世界中心。

第四認証鍵中枢。


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静寂。


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栞が地図を見る。


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《世界観測》が全力で稼働していた。


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七つ。

本当に七つだけ。


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そこを繋げれば。


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物流網は再起動できる。


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第四認証鍵も救える。


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神代が小さく息を吐いた。


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「つまり」


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「七本橋を架ける」


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カイルが頷く。


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「そうだな」


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また橋だった。


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もはや誰も突っ込まない。


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世界規模になってもやることは変わらない。


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その時だった。


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ルナが前へ出る。


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第三認証鍵。

アダマス中枢。


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その少女が静かに言う。


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「一つ問題がある」


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空気が変わる。


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良い話ではなさそうだった。


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ルナは地図の中心を指差した。


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第四認証鍵。


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その深部。


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ゼノンがいる場所。


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「最後の断裂点だけ」


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「普通に修復できない」


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神代が眉をひそめる。


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「どういう意味?」


---


ルナの表情が少し曇る。


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「第四認証鍵は世界そのものだから」


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「修復には管理権限が必要」


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静寂。


---


その言葉の意味を。


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レギウスが理解した。


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エリオスも。


---


アークも。


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そして。

顔色を変えた。


---


「最終権限か」


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レギウスが呟く。


---


ルナは頷く。


---


三千年前。


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管理局最後の保険。


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《最終権限》


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物流網。

認証鍵。

世界炉。

観測者。


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全てを統括する最終命令権。


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元々は管理局最高責任者だけが持つはずだった。


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だが。


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管理局は崩壊した。


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持ち主もいない。


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だから。


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第四認証鍵はずっと更新されないまま壊れ続けていた。


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その時だった。


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ゼノンの映像が現れる。


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全員が振り向く。


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第四認証鍵中枢。


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巨大な崩壊の中心。


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そこに執行者は立っていた。


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相変わらず感情の薄い顔。


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だが。


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以前とはどこか違う。


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「判定結果を報告する」


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静かな声だった。


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誰も遮らない。


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世界が聞いている。


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そんな気がした。


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「修復者カイル」


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「補佐官栞」


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「継承者神代」


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「管理端末アリア」


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順番に名前を呼ぶ。


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そして。


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「管理局後継者条件を満たす」


---


静寂。


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誰も喋れなかった。


---


それはつまり。


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三千年前から続いた選定。


---


その答え。


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物流網が出した結論。


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後継者は決まった。


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カイルたちだった。


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神代が思わず頭を抱える。


---


「やっぱりか」


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栞も遠い目をする。


---


「なんかそんな気はしてました」


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そして。


---


カイルだけが聞く。


---


「だからどうなる」


---


実にカイルらしい質問だった。


---


肩書きに興味がない。


---


必要なのは結果だけ。


---


ゼノンは答える。


---


「最終権限を継承できる」


---


静寂。


---


世界地図の中心が光る。


---


第四認証鍵。


---


その核。


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最後の修復箇所。


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「そこで待つ」


---


ゼノンが言う。


---


「証明しろ」


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黄金の瞳が真っ直ぐカイルを見る。


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「管理局より正しいことを」


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初めてだった。


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執行者が試験官になった。


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敵ではない。


---


判定者になった。


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映像が消える。


---


静寂。


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そして。


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ヴァルドが笑う。


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豪快に。


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三千年ぶりに心から。


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「いいじゃないか」


---


「ようやく管理局が答え合わせを始めた」


---


アークも苦笑する。


---


レギウスも。


---


エリオスも。


---


誰も否定しなかった。


---


三千年前。


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彼らは失敗した。


---


だが。


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今は違う。


---


一人で世界を背負う時代は終わった。


---


修復者。

補佐官。

継承者。

管理端末。


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みんなで支える。


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それが新しい答えだった。


---


その時。


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窓の向こう。


---


崩壊していた物流路の一つが小さく光る。


---


栞が気付いた。


---


「繋がった……」


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避難作戦中に修復された支流物流網。


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最初の一本だった。


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ほんの小さな光。


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だが。


---


世界を救う最初の一歩でもあった。


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カイルは立ち上がる。


---


そして言った。


---


「行くぞ」


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七つの断裂点。


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七つの修復。


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そして。


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世界中心部。


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第四認証鍵。


---


最後の修復作戦が。


---


いよいよ始まる。


---


第77話 修復者へ続く

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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