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第69話 管理局最後の秘密

第69話 管理局最後の秘密

オリオンは出発準備に入っていた。

流浪方舟アダマス。

北方物流中継局。

解放派拠点。

それぞれの勢力が慌ただしく動いている。

残された時間は四十五日。

それが世界全体に突き付けられた期限だった。


---


だが。

出発直前になってレギウスが言った。


---


「まだ話していない事がある」


---


その一言で全員が止まった。


---


場所はアダマス中央会議室。

三千年前の最高管理者しか入れなかった場所。

巨大な円卓。

物流網の立体投影。

そして。

この時代を知る生き証人たち。


---


レギウス。

アーク。

ヴァルド。

エリオス。

セレス。


---


三千年前から生き続ける者たちが顔を揃えていた。


---


カイルたちも席に着く。

栞は嫌な予感がしていた。


---


今までの経験で分かる。


---


こういう時に出てくる情報は大体ろくでもない。


---


そして予感は当たった。


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レギウスは世界地図を表示した。


---


そこには四つの光が存在する。


---


第一認証鍵。

第二認証鍵。

第三認証鍵。

そして。

第四認証鍵。


---


カイルの故郷エルドバルト。


---


しかし。

今までとは違う情報が表示された。


---


その下に。

もう一つ。


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見たことのない表示。


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《最終権限》


---


静寂。


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神代が口を開く。


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「何ですかそれ」


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レギウスは答えなかった。


---


代わりに。

ヴァルドが苦々しく笑った。


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「やっぱり隠してたか」


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空気が変わる。


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エリオスも顔をしかめる。


---


アークは目を閉じた。


---


誰も驚いていない。


---


つまり。

全員知っている。


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知らないのはカイルたちだけだった。


---


「説明してくれ」

カイルが言う。


---


レギウスはしばらく黙っていた。


---


そして。

静かに語り始める。


---


三千年前。

物流網崩壊が始まった頃。


---


管理局はある結論へ辿り着いた。


---


修復は可能。


---


だが。

その後の維持は不可能。


---


世界の数が多すぎた。


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文明は増え過ぎた。


---


物流網は巨大化し過ぎた。


---


観測者。

世界炉。

認証鍵。

全て延命策だった。


---


根本的な解決ではない。


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そこで作られた計画。


---


《継承計画》


---


静寂。


---


聞いたことがない。


---


神代の能力すら反応しない。


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本当に最上位機密だった。


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レギウスが続ける。


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「管理局は失敗した」


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「だから次の時代へ引き継ぐ必要があった」


---


次の時代。


---


つまり今。


---


カイルたちの時代。


---


「認証鍵はそのための選別装置だ」


---


栞の顔色が変わる。


---


補佐官能力が情報を繋げる。


---


認証鍵。

管理者。

観測者。

共同管理方式。


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全てが一つへ収束する。


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そして。

最悪の答えへ辿り着いた。


---


「まさか」


---


震える声。


---


「後継者選び?」


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レギウスが頷いた。


---


静寂。


---


誰も喋れない。


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つまり。

これまでの旅。


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第一認証鍵。

第二認証鍵。

第三認証鍵。


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全部。


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後継者選定試験だった。


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神代が立ち上がる。


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「待ってください!」


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珍しく感情的だった。


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「じゃあ最初から」


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「僕たちは誘導されていたんですか!?」


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その問いに。

レギウスは首を振った。


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「違う」


---


すぐ否定した。


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「資格がなければ認証鍵は反応しない」


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「お前たちは自分の意思で来た」


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その言葉に嘘はなかった。


---


実際。

誰も強制されていない。


---


栞は自分で選んだ。


---


神代も。


---


カイルも。


---


それでも。

複雑だった。


---


その時だった。


---


ルナが静かに言った。


---


「でも」


---


全員が見る。


---


眠そうな瞳。


---


少し幼い声。


---


しかし。

第三認証鍵そのもの。


---


彼女が言った。


---


「もう終わってるよ」


---


沈黙。


---


「何が?」

神代が聞く。


---


ルナは首を傾げた。


---


「選定」


---


静寂。


---


「え?」


---


全員が固まる。


---


ルナは本当に不思議そうだった。


---


「だって認証終わってるもん」


---


「観測者救出で」


---


空気が止まる。


---


アリアが反応した。


---


「確認」


---


「認証状況照合」


---


数秒。


---


そして。

結果が出る。


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「認証完了」


---


「共同管理候補選定終了」


---


全員が絶句した。


---


いつの間に。


---


答えは簡単だった。


---


修復者。

補佐官。

知識継承者。

管理支援端末。


---


観測者すら救った。


---


その瞬間。

物流網は判定を終えていた。


---


カイルたちを。


---


次代の管理者として。


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認めていた。


---


その事実に。

栞は頭を抱える。


---


神代は遠い目になった。


---


「聞いてないんですけど」


---


「私もです」

ルナが答えた。


---


誰も頼んでいない。


---


物流網が勝手に決めただけである。


---


その時。

ヴァルドが大笑いした。


---


珍しく本当に楽しそうだった。


---


「ははは!」


---


「最高だな!」


---


「管理局が三千年かけて選んだ後継者が」


---


「現場監督と司書見習いと小説家か!」


---


神代が微妙な顔になる。


---


否定できない。


---


肩書だけならその通りだからだ。


---


だが。

レギウスは少し笑った。


---


「だから良かったんだろう」


---


静かな声。


---


「俺たちは優秀すぎた」


---


誰も否定できない。


---


管理局は賢すぎた。


---


強すぎた。


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だから世界を部品として見始めた。


---


だが。

カイルたちは違う。


---


人を見る。


---


だから観測者を救った。


---


だから今ここにいる。


---


その時だった。

アリアが突然警告を発した。


---


「緊急事態」


---


空気が変わる。


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エルドバルト。


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第四認証鍵。


---


その中心部。


---


巨大な光が立ち上がる。


---


ルナの顔色が変わった。


---


セレスが立ち上がる。


---


エリオスも。


---


レギウスも。


---


全員が同時に異常を理解した。


---


「ゼノンが起動した」


---


セレスの声が震える。


---


管理局最後の執行者。


---


世界守護機構。


---


第四認証鍵の番人。


---


そして。


---


エルドバルトを滅ぼしかねない存在。


---


ついに完全起動したのである。


---


残り時間。


---


四十五日。


---


だが。

もう誰も待たない。


---


カイルは立ち上がった。


---


「出発だ」


---


短い言葉。


---


しかし。

全員が動く。


---


次の目的地は故郷。


---


滅びゆく第四認証鍵。


---


エルドバルト世界。


---


物語はついに最終章へ突入する。


---


第70話 帰郷へ続く

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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