第65話 流浪方舟アダマス潜入作戦
第65話 流浪方舟アダマス潜入作戦
流浪方舟アダマス。
三千年間行方不明だった移動都市。
第三認証鍵を搭載する超巨大方舟。
そして。
最強の守護者セレスが守る最後の要塞。
---
オリオンのブリッジは重い空気に包まれていた。
エリオスが表示した推定進路。
栞が追跡した物流波形。
神代が解読した旧記録。
全てを合わせてようやく見える位置。
しかし問題があった。
---
「正面から行けばどうなる」
カイルが聞く。
---
エリオスは即答した。
---
「撃墜される」
---
静寂。
---
「どれくらい」
神代が聞く。
---
「五秒」
---
「短い!」
---
普通に短かった。
---
アークまで頷く。
---
「セレスはそういう奴だ」
---
「警告」
↓
「排除」
↓
終了。
---
三千年前から変わらない。
---
「話し合いは」
栞が聞く。
---
エリオスは首を振る。
---
「無理だ」
---
あまりにも断定的だった。
---
「彼女は修復計画を知っている」
---
「だからこそ拒絶する」
---
レギウスも静かに言った。
---
「第三認証鍵の真実を知っているからな」
---
その一言で。
ブリッジが静まる。
---
第三認証鍵。
---
まだ何か隠されている。
---
だが今は聞けない。
---
先に接触が必要だった。
---
その時だった。
栞の能力が反応する。
---
《世界管理補佐》
---
物流路。
監視網。
外部センサー。
全部。
見える。
---
そして。
一つの穴を発見する。
---
「ある」
---
全員が振り向く。
---
「補給路です」
---
沈黙。
---
アダマス全体を包む監視網。
だが。
一か所だけ存在する。
---
物流搬入口。
---
都市最下層。
---
メンテナンス区画。
---
神代も同時に反応した。
---
「記録がある!」
---
《継承者の記憶》。
---
三千年前。
補給担当区画。
物流車両。
整備路。
---
そして。
秘密搬入口。
---
存在していた。
---
アリアが即座に照合。
---
「情報一致」
「侵入可能性七十九パーセント」
---
カイルが頷く。
---
「行くか」
---
潜入決定だった。
---
数時間後。
---
物流網の外縁。
---
巨大な雲海。
---
その向こう。
---
ついに見えた。
---
流浪方舟アダマス。
---
全員が息を呑む。
---
巨大。
---
その一言では足りない。
---
山脈。
いや。
大陸だった。
---
都市が丸ごと空を飛んでいる。
---
巨大な外殻。
---
物流塔。
---
無数の居住区。
---
そして中央へ聳え立つ主塔。
---
第三認証鍵が眠る場所。
---
栞が小さく呟く。
---
「すごい……」
---
神代も同意する。
---
三千年前文明。
---
その頂点の一つ。
---
まさしく移動文明国家だった。
---
だが。
次の瞬間。
---
全員の背筋が寒くなる。
---
都市中央。
---
主塔最上部。
---
そこに人影があった。
---
遠く。
何キロも離れている。
---
それなのに。
---
こちらを見ている。
---
金色の瞳。
---
銀色の髪。
---
赤いコート。
---
セレスだった。
---
静かに。
---
本当に静かに。
---
こちらを見ている。
---
「気付かれてるな」
カイルが言う。
---
「気付かれてますね」
栞も頷く。
---
問題だった。
---
超巨大都市。
---
距離数キロ。
---
それでも見つかっている。
---
エリオスが苦笑した。
---
「だから言っただろう」
---
「最強なんだ」
---
その時だった。
---
セレスが手を上げる。
---
小さく。
---
それだけ。
---
次の瞬間。
---
アダマス外殻の砲塔群が動く。
---
数百。
---
数千。
---
巨大兵装。
---
一斉展開。
---
神代が青ざめる。
---
「歓迎されてない!」
---
「知ってた」
カイルが即答。
---
だが。
同時に。
栞の能力が新たな情報を掴む。
---
《世界管理補佐》
---
監視網。
砲撃軌道。
迎撃位置。
---
そして。
一つの異常。
---
「待って!」
---
全員が振り向く。
---
「撃つ気じゃない!」
---
静寂。
---
アリアが演算する。
---
数秒。
---
答えが出た。
---
「補佐官分析を支持」
---
神代が首を傾げる。
---
「どういうことです?」
---
栞は驚いていた。
---
セレスの行動が見える。
---
そして理解する。
---
「あの人」
---
「追い返したいだけです」
---
沈黙。
---
「殺さないようにしてる」
---
エリオスの表情が変わる。
---
意外だった。
---
セレスは冷徹だ。
---
任務優先だ。
---
そう思っていた。
---
だが。
---
まだ。
---
人を傷付けたくないらしい。
---
その瞬間だった。
---
オリオンに警告灯が灯る。
---
《高エネルギー反応》
---
《強制排除システム起動》
---
ヴァルドが笑う。
---
「どうやら」
---
「お出迎えだな」
---
光が走る。
---
アダマスから放たれる巨大な転送光。
---
それは砲撃ではなかった。
---
転送だった。
---
強制的に。
---
カイルたち四人だけを捕捉する。
---
修復者。
補佐官。
継承者。
管理端末。
---
第三認証鍵に近付く資格を持つ者だけを。
---
そして次の瞬間。
---
カイルたちの姿が消えた。
---
転送先。
---
流浪方舟アダマス内部。
---
誰も知らない管理区画。
---
その最奥。
---
セレスが待つ場所へ。
---
潜入作戦は成功した。
---
だが。
---
同時に。
---
守護者自身の手によって。
---
最深部へ招かれてしまったのである。
---
第66話へ続く
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!




