↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
54/87

第53話 選ばれたのは

第53話 選ばれたのは

第二認証鍵は眩く輝いていた。

白でもない。

青でもない。

黄金に近い光。

それが区画全体を包み込んでいる。

まるで何かを探しているように。

まるで。

誰かを選んでいるように。


---


全員が認証鍵を見つめていた。

レギウス。

アーク。

シオン。

ミリア。

アリア。

神代。

栞。

そしてカイル。

誰も動かない。

ただ光だけが脈動している。


---


「認証が始まっています」

アリアが言う。

声はいつもより硬い。

緊張しているのかもしれない。

「何の認証だ」

カイルが聞く。


---


アリアは答えなかった。

代わりに。

認証鍵そのものが反応した。

空中へ巨大な文字列が浮かび上がる。

古代アルカディア文字。

だが今は全員が読めた。

神代の継承能力。

アリアの翻訳。

そして認証鍵の直接共有。

それによって。


---


表示されたのは。

たった一文だった。


---


《次期世界管理者選定開始》


---


静寂。


---


誰も喜ばない。

誰も期待しない。

その意味を知っているからだ。


---


次期管理者。

つまり。

レギウスの後継者。

物流網へ接続される存在。

永遠の維持管理要員。

三千年前の失敗の再来。


---


「だから止めろと言った」

レギウスが苦笑する。

「認証鍵は管理者を選ぶ」

「物流網は管理者を必要とする」

「そして最後には必ず誰かが犠牲になる」

静かな声だった。

悲しそうな。

諦めたような。


---


だが。

カイルは認証鍵を見ていた。

そして一言。

「設計不良だな」


---


全員が振り向く。


---


アークですら固まる。


---


「いや待て」

アークが思わず言う。

「それは物流網そのものだぞ?」

「だからだ」

カイルは真顔だった。


---


「運用で人柱が必要な時点で失敗している」


---


沈黙。


---


「保守計画が間違ってる」


---


神代が思わず額を押さえた。

この男。

本当にどこまでもこの調子だった。


---


三千年続いた悲劇。

↓

システムの欠陥。

↓

修正対象。


---


発想が現場技術者すぎる。


---


レギウスは。

しばらく呆然としていた。

そして。

突然笑った。


---


「ははは……」


---


三千年間で初めて聞くような笑い声だった。


---


「そうか」


---


「君はそう見るのか」


---


そこには怒りも否定もなかった。

むしろ。

少し救われたような顔だった。


---


その時。

栞の能力が反応する。

《世界管理補佐》。

情報が流れる。

認証鍵。

管理権限。

物流網。

構造。

全部。


---


そして。

違和感を発見した。


---


「待って」


---


全員が振り向く。


---


栞は認証鍵を見る。

その光を。

情報の流れを。

そして。

言った。


---


「選定対象が変です」


---


沈黙。


---


アリアが確認する。

数秒。

そして。

止まった。


---


珍しいことだった。


---


「異常を確認」


---


「説明を」

レギウスが言う。


---


栞は少し迷う。

そして。

答えた。


---


「管理者候補が一人じゃない」


---


静寂。


---


アークが目を見開く。

あり得ない。

本来は一人だ。

必ず。


---


だが栞は首を振る。


---


「四人います」


---


今度こそ。

完全な沈黙だった。


---


空中に表示が出る。

認証鍵の内部情報。

候補者一覧。


---


そこに表示された名前。


---


修復者

補佐官

知識継承者

管理支援端末


---


つまり。

カイル。

栞。

神代。

アリア。


---


レギウスが凍り付く。

アークも固まる。

ミリアですら理解できない。


---


「分散管理……?」

アークが呟く。


---


神代の能力が反応する。

激しく。

今まで見たことのない勢いで。


---


記憶。

過去。

資料。

設計図。

全部が繋がる。


---


そして。

ついに見つける。


---


消された設計案を。


---


三千年前。

採用されなかった計画。


---


《共同管理方式》


---


物流網管理者を一人にしない。

権限を分散する。

負荷を分散する。

犠牲をなくす。


---


その設計者の名前は。


---


アークだった。


---


「そんな……」

アーク自身が呟く。


---


忘れていた。

いや。

消されていた。


---


内戦の過程で。

管理局の権力者たちが否決した。


---


なぜなら。

一人で管理した方が支配しやすかったから。


---


レギウスも思い出した。


---


「そうか」


---


「それがあった」


---


三千年前。

実現できなかった案。


---


だが今。

偶然。

条件が揃っている。


---


修復者

補佐官

知識継承者

管理支援端末


---


四つの権限保持者。


---


物流網が求める役割。

全部。

揃っている。


---


その瞬間だった。

認証鍵が爆発的に輝く。


---


光が四つに分かれる。


---


カイルへ。


---


栞へ。


---


神代へ。


---


アリアへ。


---


全員が光に包まれる。


---


膨大な情報。

物流網。

世界。

管理権限。

全てが流れ込む。


---


栞は世界を見る。

数万の物流路。

生きている世界。

滅びかけた世界。

その全体像。


---


神代は知識を見る。

失われた文明。

技術。

歴史。

設計。


---


アリアは制御を見る。

システム。

管理情報。

接続権限。


---


そして。

カイルは。


---


構造を見る。


---


物流網そのものを。


---


巨大なインフラとして。


---


橋。

道路。

都市。

補給網。

それらの延長として。


---


世界そのものを。


---


そして理解した。


---


「直せる」


---


その一言に。

アークが笑う。

レギウスが笑う。

ミリアが笑う。

アリアまで微笑んだ。


---


三千年間届かなかった場所へ。

ようやく答えが届いた。


---


一人で支える必要はない。


---


最初から。

チームで良かったのだ。


---


しかしその瞬間。

中継局全体を揺るがす轟音が響いた。


---


ドォォォォォ!!


---


全員が振り向く。


---


外壁方向。


---


アリアが警告する。

「超高エネルギー反応を確認」


---


ミリアが青ざめる。


---


アークの顔色も変わる。


---


そして。

外部映像が強制表示された。


---


そこには。


---


空を覆う巨大な黒い裂け目。


---


そして。

その奥から現れる。


---


見覚えのあるシルエット。


---


第四管理者。

ヴァルド。


---


だが。

違う。


---


その表情は今までと違った。


---


笑っていない。


---


初めて。

本気で焦っていた。


---


「まずいぞ」


---


その一言で。

全員の背筋が凍る。


---


三千年を生きた革命家が慌てるほどの何かが。

裂け目の向こうから来ていた。


---


第54話へ続く

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。