第36話 第二認証鍵への航路
第36話 第二認証鍵への航路
テーマパーク地下施設からの帰還は、来た時よりも遥かに慌ただしかった。
巨大防衛機構を停止させ。
第一認証鍵を回収し。
解放派の先行部隊を拘束し。
さらには地上の来園者を一人も巻き込まずに危機を回避した。
成果だけを見れば大成功だった。
だが。
オリオンへ戻った三人の顔はあまり晴れやかではなかった。
理由は単純だった。
問題が一つも解決していないからである。
むしろ増えていた。
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オリオンのブリッジ。
巨大な世界地図が浮かんでいる。
現在地。
物流網。
各世界の状態。
そして。
中央に輝く青い光。
第一認証鍵。
アリアが静かに説明していた。
「第一認証鍵の統合が完了しました」
青い結晶が光になる。
そのまま大型コンソールへ吸い込まれた。
すると。
世界地図の一部が変化する。
今まで見えなかった領域。
封印された情報。
新しい航路。
それらが少しずつ解放されていく。
神代が息を呑む。
「情報量が増えた……」
栞も目を見張った。
先ほどまで存在しなかったルートが表示されている。
そして。
その中心。
エルドバルト王国方面。
黒虚の顎周辺。
反応が増えていた。
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アリアが説明する。
「第一認証鍵は位置情報管理権限を保有しています」
「これにより第二認証鍵の正確な所在が判明しました」
ブリッジが静かになる。
誰もが待っていた言葉だった。
第二認証鍵。
異世界へ帰るために必要な鍵。
そして。
世界物流網再建の次の目標。
カイルが問う。
「どこだ」
アリアの指が動く。
地図が拡大される。
エルドバルト王国。
王都。
大河。
交易都市。
山岳地帯。
そして。
王国北方。
広大な森。
その中心部。
一つの光が灯った。
《第二認証鍵保管施設》
《旧北方物流中継局》
神代が資料をめくる。
そして顔色が変わった。
「待て」
「どうした」
カイルが振り向く。
神代は古文書の一部を見せた。
そこにはこう書かれていた。
『北方物流中継局、閉鎖』
さらに次。
『危険指定区域』
栞が嫌な予感を覚える。
「危険って何がです?」
神代は少し沈黙した。
そして。
静かに答える。
「魔力災害」
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カイルの表情が変わる。
それは知っている単語だった。
異世界でも最悪クラスの災害。
魔力暴走。
空間歪曲。
結晶汚染。
環境崩壊。
国ごと消えた例もある。
「閉鎖時期は」
カイルが聞く。
神代は資料を確認する。
「三千年前」
「つまり」
「管理局崩壊と同時です」
完全に一致していた。
偶然ではない。
そしてアリアも補足する。
「北方物流中継局は現在接近禁止区域に指定されています」
「生存率予測二八パーセント」
栞が机へ突っ伏した。
「低すぎませんか?」
「高い方です」
「全然嬉しくないです」
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だが。
カイルだけは別の部分を見ていた。
地図。
汚染区域。
物流路。
地形。
そして。
北方物流中継局周辺。
「妙だな」
小さく呟く。
神代が反応する。
「何がです?」
「物流路が残っている」
アリアも視線を向ける。
確かに。
完全閉鎖されたはずの施設。
なのに。
一部ルートだけ生きている。
「誰かが保守している」
カイルは言った。
その瞬間。
ブリッジの空気が変わった。
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三人とも気付く。
そこは閉鎖施設ではない。
誰かがいる。
今も。
三千年前の施設を維持している何者かが。
神代の喉が鳴る。
「生存者……?」
アリアが即座に否定した。
「不明です」
「ただし継続保守記録を確認」
「過去五年間に定期メンテナンス実施」
栞が椅子から立ち上がる。
「五年前!?」
「はい」
「誰が!?」
「不明です」
その返答が逆に怖かった。
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その頃。
中央管理局最深部。
暗闇の中。
黄金の瞳が資料を見つめていた。
巨大な装置群。
壊れた制御室。
失われた文明。
その中心。
最後の管理者は静かに座っている。
目の前には映像。
カイルたちの記録。
テーマパーク地下での戦い。
認証鍵回収。
巨大防衛機構停止。
全てが映し出されていた。
「面白い」
静かな声。
怒りもない。
焦りもない。
ただ。
興味だけがあった。
「本当に現場型か」
修復者。
管理者候補。
そして。
世界を壊す気も支配する気もない男。
予想外だった。
非常に。
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最後の管理者は立ち上がる。
長い髪が揺れる。
三千年。
孤独に生きてきた存在。
その表情は読めない。
だが。
珍しく。
ほんの少しだけ笑っていた。
「なら試そう」
誰も聞いていない。
ただ独り言のように。
そして。
目の前に新しい地図が現れる。
北方物流中継局。
第二認証鍵。
そして。
その脇に記された一文。
《封印対象 コード:アーク》
最後の管理者の瞳が細くなる。
「まだ生きていたか」
その声は。
期待なのか。
警戒なのか。
誰にも分からない。
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一方その頃。
オリオンでは次の作戦会議が始まっていた。
第二認証鍵。
北方物流中継局。
魔力災害地帯。
生存率二八パーセント。
そして。
正体不明の保守者。
世界物流網再建計画。
その第二段階は。
地球ではなく。
ついにカイルの故郷。
エルドバルト王国を舞台に始まろうとしていた。
帰還まで。
あと一歩。
だがその一歩が。
これまでで最も危険な道になることを。
まだ三人は知らない。
――第37話へ続く――
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