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復讐のスキル・イーター  作者: 鷲尾秋水
王都簒奪編

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第6話:沈黙の虐殺と、スキルの荒稼ぎ

死体の山を離れ、岩壁沿いを【隠密】で進むこと数十分。

【暗視】の視界が、広大な奈落の片隅に築かれた異様な空間を捉えた。

魔物の骨や泥を固めて作られた、無数の粗末なテント。

そこをねぐらにしていたのは、子供ほどの背丈で、醜く歪んだ顔を持つ小鬼の群れだった。


『奈落小鬼(アビス・ゴブリン)』。


上層にいる通常のゴブリンとは違い、皮膚は岩のように黒く硬化し、手には魔物の骨を削った鋭い槍や石斧を握っている。

ざっと見ただけでも、その数は二十匹を下らない。

以前の俺なら、一匹に出くわしただけでも泣き叫んで逃げるしかなかった相手だ。

だが、今の俺の目には、あの醜い小鬼たちが『スキルの宝箱』にしか見えなかった。


(……ちょうどいい。俺の戦術のテストケースになってもらおう)


俺は錆びたナイフの刃に自らの血を塗りたくり、群れの外れで退屈そうに欠伸をしている見張りの小鬼へと狙いを定めた。

【隠密(微)】を発動し、足音と呼吸を完全に殺す。

小鬼の背後、わずか一メートルの距離まで近づいても、奴は全く俺の存在に気付かない。

俺は躊躇なく、小鬼の首筋に向かって毒血の刃を振り抜いた。


「ギ、ガッ……!?」


刃こぼれした錆びたナイフでは、小鬼の硬い皮膚を深く斬り裂くことはできない。浅く肉を裂いただけだ。

だが、それで十分だった。

傷口から俺の【麻痺毒】が急激に回り、小鬼の体はビクンと痙攣して石のように硬直する。仲間を呼ぶ悲鳴すら上げることはできず、その場でドサリと崩れ落ちた。


「……完璧だな」


俺は麻痺して動けない小鬼の口を塞ぎ、その首筋に直接噛みついた。


『——奈落小鬼の捕食を確認』

『——対象の魂を捕捉。スキル【筋力強化(微)】を獲得しました』


小鬼が灰となって消え、俺の腕と脚の筋肉が内側からパンッと張り詰める感覚が走った。

確実に、基礎的な力が底上げされている。


(次だ。一匹残らず喰らい尽くしてやる)


笑みがこぼれるのを止められなかった。

俺は再びナイフに血を塗り直し、静かに次の獲物へと忍び寄る。

寝床で丸まっている小鬼。

仲間と腐肉を奪い合っている小鬼。

見回りをしている小鬼。

【隠密】で背後を取り、毒刃でかすり傷を与えて麻痺させ、声を出す前に喉笛を喰らい千切る。

それはもはや戦闘ではなく、一方的な作業(ルーチン)だった。

声なき悲鳴とともに、小鬼の数は着実に減っていく。


『——スキル【敏捷強化(微)】を獲得しました』

『——スキル【夜目】を獲得。【暗視】と統合され、【暗視(中)】へ進化しました』

『——スキル【痛覚耐性(微)】を獲得しました』


獲物を殺し、喰らうたびに、脳内に無機質な声が鳴り響く。

心地よい全能感。俺の体は、限界を超えて次々と新たな力を取り込み、最適化されていく。

やがて、集落の異変に気づいた十匹ほどの小鬼たちが、慌てて武器を手に集まってきた。

姿の見えない襲撃者に怯え、キーキーと耳障りな声で鳴き喚いている。

だが、もう遅い。


「……探し物は俺か?」


岩陰からゆっくりと姿を現した俺を見て、小鬼たちが一斉に槍を構える。

俺は錆びたナイフを捨て、代わりに今しがた喰らった小鬼たちが落とした『魔物骨の長槍』と『石斧』を両手に構えた。

奪った【筋力強化】と【敏捷強化】が合わさった今の俺にとって、それらの重い武器は、まるで木の枝のように軽く感じられた。


「ギギャアアアッ!」


三匹の小鬼が同時に飛びかかってくる。

だが、遅い。【暗視(中)】で強化された視界と、上がった身体能力のおかげで、奴らの動きが止まって見えた。

俺は右手の長槍を無造作に振り抜き、空中の三匹を串刺しにして壁へと叩きつける。

悲鳴を上げる間も与えず、返す刀で左手の石斧を振り下ろし、残りの群れを次々と粉砕していった。

【痛覚耐性】のおかげで、骨の破片が腕に刺さっても痛みはほとんど感じない。

傷は【自己再生】が瞬時に塞いでいく。

圧倒的な暴力の蹂躙。

数分後、集落に立っていたのは俺だけだった。

地面に転がる十匹以上の小鬼の残骸。

俺はその全てを喰らい、さらにスキルを荒稼ぎした。


「ははっ……すげえな、こりゃ」


己の握りこぶしを見つめる。

もはや、昨日の俺とは別次元の生物(バケモノ)だ。

このまま力を喰らい続ければ、勇者アルスすらも正面からねじ伏せることができるかもしれない。

そんな確信を抱いた俺の耳に——不意に、地の底から響くような「重い足音」が届いた。

ズンッ……ズンッ……。

圧倒的な質量の気配。

強奪に酔いしれていた俺の背筋が、一瞬で凍りついた。

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