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復讐のスキル・イーター  作者: 鷲尾秋水
王都簒奪編

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第47話:粉砕の聖なる器、偽神の終焉

ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!


王城の地下深くに位置する広大な王立礼拝堂が、巨大な地震に見舞われたかのように激しく揺れ動いた。

クロウの右腕から放たれた、彼の持つ魔力の全てを圧縮した究極の一撃——【黒死の螺旋(ダーク・ドリル)】。漆黒の霧と紫色の稲妻が幾重にも絡み合うその螺旋の刃が、偽神と化したマリアの胸に埋め込まれていた赤い水晶玉【命の搾取器】に、真正面から激突したのだ。


「ギャ……アァァ、ァァァァァァァッ!!?」


これまで余裕の笑みを浮かべていたマリアの顔が、初めて明確な苦痛と恐怖に歪み、絶叫が空間を切り裂く。

神の力と数十万の民衆から奪った命の魔力を強引に束ねていた魔道具の表面で、クロウの放つ破壊の闇が凄まじい火花を散らしながら、メリメリと音を立てて削り込んでいく。


「砕けろォォォォォォォッ!!」


クロウは血を吐きながらも、さらに右腕へ渾身の力を込めた。彼の強靭な肉体すら、限界を超えた魔力の放出と反発する神のオーラの圧力によって、全身の筋肉から細かい血管が破裂し、黒いコートが鮮血に染まっていく。

だが、彼は一歩も引かない。いや、引くわけにはいかなかった。

背後には、自らの魔力回路を焼き切ってまでマリアを氷漬けにし、足止めをしてくれたシルヴィアがいる。

自身の魂を削って数千の幻影を展開し、マリアの認識を完全に狂わせて『決定的な隙』を作ってくれたセリアがいる。

二人が命を懸けて繋いでくれた、このたった数秒のチャンス。これを逃せば、三人に次はない。


「バ、バカナ……! ワタシの、神ノ命ガ……ッ!! 押し負ケルハズガ、ナイッ!!」


マリアが残された二枚の翼から赤い光線を乱れ撃ち、クロウの体を貫こうとする。

だが、その光線の雨はクロウに届く前に、空中に残っていたセリアの『幻影』たちが自ら盾となって飛び込み、次々と相殺していく。

さらに、マリアの傷口から侵入したシルヴィアの【絶対零度】の冷気が、マリアの体内の魔力回路を次々と凍結させ、水晶玉への魔力供給を劇的に遅延させていた。

これが、三人の力。

誰か一人が欠けても絶対に届かなかった、完全なる連携の結晶だった。


「これで……終わりだァァァッ!!」


クロウの叫びと共に、螺旋の回転がさらに加速する。

ギリィッ、バキィッ! という硬質な音が響き、赤い水晶玉の表面についに一本の『亀裂』が走った。


「ヒッ……!? 嫌ダ、ワタシハまだ、世界ヲ統べる……!」


パァァァァァァァァァァンッ!!!!


マリアの断末魔の叫びを掻き消すように、甲高く、そして清々しいほどの破砕音が礼拝堂に響き渡った。

数十万の命を無理やり閉じ込めていた禁忌の魔道具【命の搾取器】が、クロウの黒霧によって完全に粉砕されたのだ。

砕け散った赤いガラスの破片が四方八方に飛び散る。

その瞬間、魔道具という『器』を失ったことで、中に溜め込まれていた膨大な命の魔力と怨念が、マリアの肉体の中で完全に暴走を引き起こした。


「ギ、ギギッ……! ア……アガガガガガッ!?」


マリアの体が、不自然な方向に折れ曲がる。

これまで彼女の体を異形な『神』の姿へと保っていたのは、ひとえに水晶玉から供給される無限の魔力があったからだ。その供給源が断たれた今、彼女の肉体は、自らが取り込んだ数十万の命の反発に耐えきれなくなっていた。


「アァァ……助ケ……体が、裂ケ、ル……!」


マリアの背中から生えていた六枚の光の翼が、内側からボロボロと崩れ落ち、ただの灰となって消えていく。獣のように肥大化していた腕や足は、風船がしぼむように急激に萎縮し、醜く歪んでいた顔の右半分も、ドロドロに溶け落ちていく。

それは、偽りの神が、ただの非力で惨めな人間に引きずり降ろされる瞬間だった。

同時に、彼女の体内に閉じ込められていた赤い魔力(民衆たちの生命力)が、行き場を求めてマリアの口や目から激しく噴き出し、天井を突き破って王都の空へと還っていく。

奪われた命が、本来の持ち主たちの元へと戻っていくのだ。


「ア……あぁ……私の、力が……神の、力が……」


数分にわたる激しい苦悶と崩壊の末、地下礼拝堂の冷たい石の床に転がっていたのは、世界の支配を企んだ化け物ではなく、手足の筋肉を失い、ボロ布のような白衣を纏った一人の惨めな女だった。

マリアは、もはや指一本動かす力すら残されていなかった。

ズカッ、ズカッ。

静寂に包まれた空間に、重い足音が響く。

全身血まみれのクロウが、欠けた大剣を引きずりながら、倒れ伏すマリアの元へと歩み寄ってきた。その後ろには、互いに肩を貸し合いながら歩いてくるシルヴィアとセリアの姿がある。


「ヒッ……! く、くるな……!」


マリアは恐怖に顔を引き攣らせ、這いずるように後ずさろうとしたが、体は全く動かない。

クロウはマリアを見下ろし、その目を冷酷に細めた。


「お、お願い、殺さないで……! 私は聖女よ! そうだ、私を殺せば、教会の信徒たちが黙っていないわ! 私を生かしておけば、あなたたちの王位簒奪を教会として公認してあげる! だから……!」


醜く命乞いをするマリア。つい先ほどまで「虫ケラ」と見下していた相手に対し、今度は権力と保身を盾にしてすがりつく。その姿は、あまりにも滑稽で、救いようのないほどに腐敗していた。

クロウは、大剣を静かに振り上げた。


「……お前の戯言は、もう聞き飽きた。地獄で、お前

が殺した連中にでも懺悔してな」


「いや、いやぁぁぁぁぁっ——」


冷徹な一閃。

クロウの大剣が振り下ろされ、偽りの聖女の首は、いとも容易く胴体から切り離された。

鮮血が床を汚し、マリアの命乞いは永遠の沈黙へと変わる。

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