第46話:極限の連携、粉砕の氷刃
「ヒャハハハッ! 何度来テモ無駄デスヨ! ワタシハ不死身ノ神ナノデス!!」
マリアが赤黒く変色した翼を羽ばたかせ、地下礼拝堂の空間全体に『命を吸い上げる赤い霧』を充満させる。
吸い込めば即座に干からびる猛毒の霧。
「【氷晶の風】!!」
だが、シルヴィアが魔杖を振り抜き、局所的な絶対零度の暴風を発生させる。
風は赤い霧を凍結させて地面に叩き落とし、同時にマリアの視界を吹雪で奪った。
「目眩マシなど! ワタシの気配察知ノ前デハ——」
「——なら、これはどうですか?」
吹雪の中から、数十人の『セリア』が一斉に飛び出した。
だが、先ほどの分身とは違う。覚醒したセリアの【幻惑魔法】は限界を突破し、分身の一つ一つが『クロウの放つ殺気』と『シルヴィアの冷気』を纏っていたのだ。
「ナニッ!? 気配ガ、どれモ本物……ッ!?」
マリアの超感覚が、完全に狂わされる。
どれが本物のセリアか、あるいはクロウなのか、全く判別できない。
「【幻影双剣・千刃の舞】!」
数十のセリアの分身が、死角から一斉にマリアの巨体を切り刻む。
「鬱陶シイ虫ガァァッ!!」
マリアが赤い光線の爆発で分身たちを一掃する。
だが、その爆発の反動で、マリアの体に一瞬の『硬直』が生まれた。
その、僅かコンマ数秒の隙を、真の魔女が見逃すはずがなかった。
「……捉えたわ」
シルヴィアの魔杖が、これまでにないほど眩い青白い光を放つ。
彼女は自身の魔力回路を焼き切る覚悟で、ありったけの魔力を一点に集中させていた。
「凍れ……神の血肉ごと、全てを凍てつかせなさい! 【絶対零度の氷槍】!!」
シルヴィアの放った、たった一本の巨大な氷の槍。
それは、大気中の水分ではなく、マリアの体から溢れ出す『赤い魔力そのもの』を媒介にして凍結を広げながら、音速を超えてマリアの巨体へと突き刺さった。
ドズグゥゥゥゥッ!!!!
「ギャ、アァァァァァァッ!!?」
マリアの腹部を、巨大な氷槍が完全に貫通する。
それだけではない。絶対零度の冷気が傷口から侵入し、マリアの六枚の翼のうち四枚を瞬時に『氷塊』へと変え、重力に従って地面へと叩き落としたのだ。
「ア……ガ……! ワタシの、神ノ翼ガ……ッ!?」
バランスを崩し、地上に落下するマリア。
「ナイスだ、二人とも。……最高の舞台だな」
落下するマリアの目の前。
いつの間にか跳躍し、空中で待ち構えていたクロウが、漆黒の【黒の仮面】の奥で獰猛に笑っていた。
クロウの右腕には、これまでの全戦闘を凌駕する、膨大で純粋な【黒霧】と【紫電】が、一つの『巨大な螺旋の刃』として圧縮され、唸りを上げていた。
その威力は、空間そのものを歪ませ、バチバチと黒い稲妻を周囲に撒き散らしている。
「あ……アァ……」
マリアの濁った瞳に、初めて『明確な死の恐怖』が宿った。
「お前は、俺の仲間を泣かせた。……その代償は、神(お前)の命でも安すぎる」
クロウは、眼下のマリアの胸——【命の搾取器】である赤い水晶玉を目掛け、限界まで圧縮した黒の螺旋刃を、渾身の力で振り下ろした。
「喰らい尽くせ! 【黒死の螺旋】ォォォォォォォッ!!!!」




