↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐のスキル・イーター  作者: 鷲尾秋水
王都簒奪編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/49

第2話:喰われる前に、喰ってやる。底辺スキル【悪食】の限界突破

……暗い。痛い。ひどく、臭い。


「……あ、ぐ……ッ」


全身の骨がひしげたような激痛で、俺は意識を取り戻した。

どうやら、奈落の底に積み上がっていた魔物の死体の上に落下したことで、即死だけは免れたらしい。

だが、状況は絶望的だった。

ガランにアキレス腱を斬り裂かれた両足は完全に動かず、ただ血を流し続けている。

ここは未知の階層の、さらに底。光は一切届かず、腐乱した死体の臭いだけが充満している。


『グルルル……』


不意に、暗闇の中から低く濁った唸り声が聞こえた。

這いずるような足音とともに現れたのは、巨大な蜥蜴だった。

赤黒い鱗に覆われ、口から紫色の涎を垂らす『屍食いの毒蜥蜴(コープス・リザード)』。

上層の魔物の死体を喰らって生きる、迷宮の最底辺に生息する魔物。普段なら見向きもされない最弱のモンスターだが、動けない今の俺にとっては死神そのものだ。

蜥蜴は「新鮮なエサ」を見つけた歓喜とともに、俺の足に鋭い牙を突き立てた。


「ぐ、あああああっ……!」


牙から致死量の毒液が流し込まれる。

普通なら数秒で心臓が止まる猛毒だ。だが、俺の体は【悪食】のスキルによってギリギリで死を押し留めていた。

とはいえ、それも時間の問題だ。肉を噛み千切られる激痛と、全身を駆け巡る毒の熱で、意識が白濁していく。


(俺は……散々あいつらにゴミを喰わされてきた。挙句の果てに捨てられて、最後はこんな薄汚い蜥蜴のエサになって終わるのか……?)


アルスの冷酷な目。

マリアの嘲笑。

ガランのゲスな笑み。

ふざけるな。

冗談じゃない。

絶対に許さない。俺を見捨てたあいつらも。俺を喰らおうとするこの醜い蜥蜴も。

極限の絶望と憎悪が、俺の脳のストッパーを完全に破壊した。


「喰われる前に……俺が、全部喰ってやるッ!!」


狂乱した俺は、最後の力を振り絞って腕を伸ばし、足に噛みつく蜥蜴の首を両手で力任せに掴み上げた。

そして、そのまま蜥蜴の喉笛に、自らの歯を深く突き立てる。


「ギ、ギャアアアアアッ!?」


生臭い肉の感触と、猛毒の体液が口内に溢れ出す。

俺は躊躇なく肉を噛みちぎり、毒血を胃袋へと飲み込んだ。生きたまま魔物を喰らうという、完全に常軌を逸した異常行動。

その瞬間、頭の中に無機質なシステム音声が響き渡った。


『——極限状態での、致死性毒肉の直接捕食を確認』

『——条件を満たしました。生存本能をトリガーとし、初期スキル【悪食】が限界突破します』

『——固有スキル【強奪(スキル・イーター)】が覚醒しました』


直後、俺が喰らいついていた蜥蜴の体が、ボロボロと灰のように崩れ去り、光の粒子となって俺の体へと吸い込まれていく。


『——コープス・リザードの魂を捕捉』

『——対象のスキル【毒耐性(大)】および【爬虫類の自己再生】を強奪しました』


俺の全身を包んでいた激痛が、嘘のように引いていく。

バキバキと音を立てて折れた骨が繋がり、斬り裂かれたはずのアキレス腱が瞬く間に元の形を取り戻していく。

ただ傷が治っただけではない。体の内側から、今まで感じたことのない膨大な力が湧き上がってくる。

俺は、暗闇の中でゆっくりと立ち上がった。

両足はしっかりと地面を踏みしめている。

手の中に残った蜥蜴の灰を振り払い、口元についた血を手の甲で拭う。

俺は、上層へと続く見えない天井を睨みつけた。


「……あぁ、美味かったぞ」


迷宮の最底辺。

全てを奪われた底辺の少年は、全てを奪い尽くす最凶のバケモノとして産声を上げた。


「待ってろよ、勇者(アルス)。お前らの力も、命も……全部俺が喰ってやる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。