#9 いっぽう、その頃のハレーさん①
レクセルとハレーの住む街、ソフィア。
――――の、レクセル抜き。
残されたハレーは1人、〈コマ・エクスプレス〉を訪れていた。
置き手紙にあった〈出張〉とやらについて、詳しく聞くためである。
「――――レクセルさんなら、遊便の業務担当ですね」
「遊便……ってなんですか?」
「簡単に言えば、旅する配達人です。レクセルさんの場合は1ヶ月間、お試しで担当してもらっています」
この子が、レクセルさんの同居人……。
担当者は説明をしながら、目の前の少女をそれとなく見る。
艶のある、真っ黒なウルフカット。
中性的だが、よく見れば小さくて可愛らしい顔立ち。
背伸びしている子犬のような雰囲気は、なるほど確かに庇護欲を感じさせて、大人びたレクセルとお似合いだと思った。
「……ボクの顔、なにか付いてますか?」
「――――コホン、いえ」
首を傾げるハレーに、咳払いでごまかして。
次々と聞かれる質問へ、丁寧に答えていったのであった。
「1ヶ月も、ずっと会えないんだ……」
〈コマ・エクスプレス〉を後にして。
ハレーはとぼとぼ帰路につく。
出張って書いてあったから、なんとなくは覚悟してたけど。
実際に聞いてみれば、街から街へ飛んでいくらしいから追いかけてもきりがないし。
それに遊便という、危険な依頼を率先してやるポジションだなんて。
寂しいし心配だし、もうおかしくなっちゃいそう……。
「はぁ……」
帰宅して、ガチャリと扉を閉める。
大事にしまってあった置き手紙を取り出して、もう一度開く。
いくら読み返しても、内容は変わらなかった。
レクセルのいない夕食。
レクセルのいないお風呂上がり。
レクセルのいないおやすみのあいさつ――――。
ぽろり。
布団にひとつ、涙が落ちる。
「レクシー……さびしいよ……」
堪えきれずにベッドから出た。
ぽてぽてと向かう先は、レクセルの部屋。
ノックをして、そっと扉を開けても、出迎える声はない。
けれど。
「レクシー……」
流れ出た空気につられるように、ハレーは部屋へ入った。
出発前に整えたのか、調度品はいつにもましてきっちりと揃っている。
レクセルの真面目さが伝わってきて、また泣きそうになりながら、ハレーはそっとベッドに腰かけた。
力が抜けて、ぽて……と倒れ込む。
レクセルの毛布の上で、ぐすりとしゃくり上げ――――。
「っ――――はぁああああ、すうぅぅぅう……♡」
……深呼吸し始めた。
「……あ、あ、あ、すごいレクシーの匂いする……!」
シャンプーの匂いである。
なんならハレーも同じものを使っている。
しかしハレーはそこに、レクセルの存在を感じた。
「え、えいっ」
くるまってみた。
「ふおおおおお」
実質ハグだった(※ハレーの主観)。
いくらか寂しさが紛れて、ハレーはすぽんと顔を出す。
キラキラした顔で、大きく頷いて――――。
「今日からここを、寝室とーっ……するっ!」
――――高らかに宣言したのであった。
本作やべー奴ランキング、暫定1位。
これから登場するヒロインたちは、ハレーを超えられるのか!
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