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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
003 / 死ぬのは奴らよ

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#10 レクセル、危険空域へ

 まだ朝日が昇りきらない、薄暮の下。

 朝露に濡れた〈C.X.〉のステンシルがきらりと光る。

 ぴんと伸びた〈スー〉の翼が、出発を今か今かと待っていた。


「――――ではレクセルさん、よろしくお願いね。くれぐれも気を付けて」

 

「はい。必ずパラナルまで届けます」

 

 スワンから配達人控を受け取るレクセル。

 一礼してから翼によじ登り、風防をからからと開けた。


「レクセルさーん、命大事にっすよ!」

 

「……どうしてあなたまでいるのかしら、シューメーカー」

 

「そりゃ、美少女を見送りたいからに決まってるじゃないすか。おーい、無理そうなら戻ってくるっすー!」

 

「わざわざそのためだけに早出して……まったく」


 叫ぶシューメーカー、ため息をつくスワン。

 レクセルはとりあえず片手を上げて、操縦席へと滑り込んだ。


 ばすん、とエンジンが目覚める。

 甘い香りの排気を吐き出し、プロペラが唸る。

 ようやく昇った太陽の、眩しい光の中を、白い機体が切り裂くように上昇していく。

 ふわふわと2、3度翼を振って別れを告げてから、レクセルと〈スー〉はファーストの街を後にした――――。






「――――それにしても、最近は女同士のカップルが普通だとはね……」


 巡航高度を真っ直ぐ飛びつつ、レクセルはしみじみと呟いた。

 

 ナンパするつもりが逆にナンパされてしまったのは誤算だったが、目的だった女の子とのデートは成功。

 肝心の女心はまだ理解できていないものの、最近の恋愛事情を知れたのは大きい。


「ハレーに間違ってるなんて言って、悪かったな」


 記憶の中のハレーは、いつも無邪気な笑顔。

 その真っ直ぐな笑みが、今はとても眩しく感じる。

 

 ……帰ったらちゃんと、謝らなきゃ。 

 そう、噛み締めるように思った。


 ――――ちょうどその時。

 風防の向こうでキラキラと、何かが光を反射したが……。

 写真を見ていたレクセルは、それを見逃してしまった。






 飛行中の配達人にとって、見張りは重要なルーティンである。

 いち早く敵――――略奪機を見つけ、気付かれないうちに迂回したり雲に隠れることで、襲撃を避けるためだ。


 どこまでも続く空の中、探すべきはキラリと光る反射光。

 飛行機の翼の照り返しは、遠くからでもよく目立つ。


 この辺りは略奪機がよく出る危険空域ということもあって、レクセルはいつも以上にぴりぴりと外を睨んでいた。

 きょろきょろと細い首を回し、全方面へ目を凝らす。

 

 右と左、前方と後方。

 上にはいくつか雲があって、流石にその中までは見通せないから、雲と雲の間をじっくりと。

 背面飛行になって、下方も確認。

 

「――――いないな」


 マフラーを直しながらぼやいた。

 危険空域というからには、略奪機がうじゃうじゃいるもんだと思っていたけど……今のところ、1機も見当たらない。

 もしかして、略奪機にもオフの日があるのだろうか?


「んなわけないか」


 都合のいい考えを追い出して、ごくりと唾を飲み込む。

 それとなく残弾計に目を向けた――――刹那。


 レクセルの直感がざわりと騒いだ。


「……っ!」


 ばっと振り返る。

 相変わらずの青い空――――だが。

 紛れ込む、微かな違和感。

 〈スー〉のそれとは違うエンジン音。


 ……しかも、1つではない!


「――――クソ」

 

 レクセルはスロットルレバーに手をかけたが、時すでに遅く。

 

 雲を引き裂いて降りてきた機影が、〈スー〉の進行方向を塞ぐ。

 一拍遅れて、〈スー〉の背後も。

 右も。

 そして左も。 

 4機の略奪機は瞬く間に、レクセルと〈スー〉の逃げ場を潰した。


『――――ハァーイ配達人さーん、お元気ですかァー? ギャハハハハ!!!』


 無線が下品に叫ぶ。

 おちょくるように翼を振る略奪機、レクセルはその操縦席を睨みつけた。


『残念! 配達人たんは包囲されちゃいまちたー!』

 

『言うこと聞かないと撃ち落としまーす』

 

『大人しく俺たちの指示通りに着陸してくれるよねー? お返事はー?』

 

「…………チッ」


 警告のつもりか、4人分の声が流れてきた。

 どれもふざけた男の声で、レクセルは舌打ちしながらマイクをオンにする。


「……退いてくれません?」

 

『アハッ! いい声してんね!』

 

『うっひょ! 見てみろ、こいつすっげえ美少女だ!』

 

『しかも清楚系だぜ!?』

 

『強がっちゃってかわいーでちゅねー!』


 ガラス越しに獣のような視線が突き刺さる。

 ぞわぞわ寒気がして歯を食いしばるレクセルに、猫撫で声が投げられる。


『――――なァネェちゃーん? 荷物を見逃してやってもいいぜェ?』

 

「……は?」

 

『俺たちとイイコトするならなあ! ギャハハハ!』


『スケベしようや』


『不倫しようや』


 レクセルはこっそりこう思った。

 そしたら口から出てた――――。


「――――うわキツ……口説き文句から加齢臭する……」

 

『……おうおう調子乗り過ぎんなよ? こちとらいつでも撃てんだからな?』

 

『〈デスシャワー〉で血まみれ穴だらけだァ、ヒャッヒャッヒャ!』

 

「……〈デスシャワー〉?」


 ――――レクセルの耳がぴくりと動く。

 改めて略奪機を観察すれば、その言葉がハッタリでないとわかった。

 

 敵は4機とも同じ、鼻先が尖った〈サギタリウス〉。

 トガリネズミともあだ名される大戦初期の機体で、通常モデルは7.7ミリ機銃を2門搭載した軽戦闘機である。


 しかし戦争が進むにつれて、敵を倒すには火力が低すぎることが問題となった結果、〈サギタリウス〉はヤケクソじみた改良を施された。


 低火力でもたくさん積めば高火力とばかりに、2門だった7.7ミリ機銃を12門へ増やし、敵へ銃弾のシャワーを降らせるようになった火力強化モデル。

 付けられた愛称は――――〈デスシャワー〉。


「わぁ……見るからに頭悪い感じ」


 見回したレクセルはため息をつく。

 なんと、4機全てが〈デスシャワー〉だった。

 火力こそ正義。

 

『そういやネェちゃんの機体、よく飛んでるやつだよな! 武装なんだっけー』

 

『〈スコルピウス〉だろ? 確か12.7ミリ2門じゃね』

 

『ギャハッ! 2門ぽっちじゃ相手にもなんねぇなァ! なんたって俺らは4機合わせりゃ48門ッ!』

 

『24倍つーことだ、変な気起こすんじゃねぇぞ』

 

「――――ぶふ」


 ……なんて悪党らしいセリフ。

 

 おかしくて思わず吹き出してしまった。

 脅しが効いていないと思ったのか怒声を連ねる無線を無視し、レクセルは引き金に指をかける。


 〈スコルピウス〉と比べて、〈デスシャワー〉の機銃は6倍。

 それが4機で24倍。

 彼らの計算はもちろん間違ってはいない。

 

 ……しかし。

 彼らは知らなかった。


「その計算さ――――」


 レクセルの〈スコルピウス〉――――〈スー〉はよくある通常モデルではなく、


「――――弾の大きさ無視してるよ」


 巨大な爆撃機を墜とすために試作された、特別仕様であることを――――。

読んでいただき、ありがとうございます!

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