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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
007 / ユア・愛ズ・オンリー

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#38 レクセル、遊便じゃなかった

「――――どうしてラヴジョイ様まで戻ってきているのですかっ?!」


 文字通り〈スー〉を()()()()、ジェミニに舞い戻った翌日の夜。

 出迎えた〈ダストテイル・エクスプレス〉の代表は、するりと降りてきたラヴジョイを見て悲鳴をあげた。


「た、確かに、レクセルさんには戻ってきてほしいとは言いましたが……! それは我が社の中で内密に処理するためでしてっ……」


 挙句の果てには、配達人控えの内容を読み上げ始める始末。

 まあまあとレクセルがなだめる中、ラヴジョイがさらりと髪を揺らした。


「わたくしが頼みましたの。ジェミニへ戻りたいと」


「ですがそれでは、あそこまでしてジェミニを脱出した意味が……」


「意味ならありましてよ? おかげで大切なことに気付くことができたのですもの、だから戻ってきたのですわ」


「そ……そうなのですか。それではもう、逃げることはお止めになったということで?」


「ええ。――――代表さんも、わたくしの素性に気付いておられるのでしょう?」


 ラヴジョイが、いたずらっぽく笑う。

 代表はため息をついて、頷いた。


「まあ今更といいますか……サングレーザー伯爵令嬢、あなたがアルマにいる事は数日前に伯爵家からリークされました。ホテルで使った小切手や、目撃証言もたくさんあったらしく――――」


「あらあら、ダンスパーティを見られちゃったのかしら……」


「え? ダンスパーティに出たのですか? 逃げる気あります……?」


 呆れたように首を振る代表に、ラヴジョイとレクセルはくすくす笑う。

 

 もう運命から逃げることも、縛られることもない。

 ラヴジョイはこれから自分の意思で、向き合うことができるのだから――――。


「それでは、わたくしはこれで。お手数おかけしましたわ、代表さん」


「……ああいえ。お役に立てたなら光栄です、サングレーザー伯爵令嬢」


 混乱しつつも、流石は代表。

 礼儀正しく一礼をした。


 ラヴジョイは次に、レクセルを見た。

 ここを発った時とは大きく変わった、2人の距離。

 近付いて、近付きすぎて、お互い大事なことに気付かされた。

 

 名前を付けるならば親友ではなく、戦友とでも言うべきか。

 そんな奇妙な関係の2人は、ここでお別れ。

 自然と互いに手を出して、しっかりと握った。


「レクセル。今回のこと、感謝しておりますわ。――――ありがとう」


「どういたしまして。幸せを祈ってるよ」


「はいっ……それから、あの夜のことですけれど。改めて、ごめんなさい」


「あはは……結果オーライだよ。気にしないで」


「あの夜……とは……? あなたがた、一体なにを」


 代表が思わず口を挟むも――――。

 2人は顔を見合わせてから、いたずらっぽく笑った。


「「――――ひみつ!」」






「……ではこれにて依頼は完了です。お疲れ様でした、レクセルさん」


 配達人控えにスタンプを押して、代表が差し出す。

 ラヴジョイをアルマまで運んだのは数日前のことなので、結構な今更感。

 少し面白く思いながら、レクセルはお礼を言って受け取った。


 ポーチにしまって、んー、と伸び。

 さて、と次の仕事モードに切り替える。

 これまで様々な依頼をこなし、極めつけには精神的に成長までもした。

 どんな依頼もどんと来い、自信に溢れた遊便の顔。

 きらきら輝きを増しながら、前のめりに尋ねる。

  

「――――それで、次の依頼はなんでしょうか」


「こちらからお任せすることは、もうありませんよ?」


「…………え?」


 レクセルは固まった。

 まじまじと代表を見た。


「え?」


 代表も、まじまじとレクセルを見て。


「レクセルさんの所属する〈コマ・エクスプレス〉からの申し送りによれば、レクセルさんの遊便任命期間は1ヶ月間のはずですが……」


「――――あ」


「今日でちょうど1ヶ月ですよ」


 レクセル、もう遊便じゃなかった。

 しゅるしゅると光を失いながら、なんとか声を絞り出す。


「…………では私は、どうしたら……?」


「一度戻られるのがよいと思います。〈コマ・エクスプレス〉がある、ソフィアの街へ」


 ぱし、と背中を軽く叩いて。

 代表は優しく言ったのだった。






 社務所の休憩室で夜を明かした、翌朝。

 朝日に照らされた〈スー〉を、レクセルは感慨深げに見上げた。


 遊便を任され、地元ソフィアを離れて1ヶ月。

 始まりから終わりまで、ずっと一緒に飛んできた相棒。

 その機体には、これまでの思い出を物語るような傷がいくつも――――なかった。

 修理したてだからである。

 むしろ塗装も塗り直されて、出発した時よりもぴかぴかしていた。


 …………けれど。

 それは一度、死にかけるほどに壊されたからであって。

 この綺麗さはむしろ、己の未熟さを示す輝きだ。


「……もう慢心はしないよ」


 順調一辺倒な旅路ではなかった。

 ここまで来られたのは、〈スー〉がいたから。 

 冷たいジュラルミンをつつつ……と撫でる。


「……ありがとう」


 そして、これからもよろしく。


 小さく言って、レクセルは翼に登った。

 風防を開けて、操縦席に座る。

 ベルトを締めて、スイッチを弾いた。 


「――――それじゃ帰ろっか、私たちの街へ!」

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