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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
006 / 私を愛したレディ

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#36 レクセル、アルマでデート

 〈アルマの休日〉の劇中で――――。

 激務からこっそり逃げ出した王女は、アルマで運命的な出会いをする。

 しかし最後には王女としての責務を果たすために、自由を手放す決心をした――――。


 ラヴジョイは王女の行動をなぞり、アルマに来て。

 そして王女と同じように、運命を受け入れるつもりなんだ。


「…………ごめん。デリケートなこと聞いて」


「いえ、いいんですのよ――――そんな思い詰めた顔をなさらないで?」


 レクセルは罪悪感でいっぱいだった。

 ラヴジョイに辛いことを言わせてしまったこと。

 そして、自分もハレーに同じような仕打ちをしたと気付いたから。


 〈ダストテイル・エクスプレス〉の代表から渡された、伯爵家の電話番号。

 その使用も選択肢にあった出発前とはうって変わり、レクセルは今や全面的にラヴジョイへ同情していた。


 青い瞳が、真っ直ぐにラヴジョイを見る。 


「――――なにか罪滅ぼしをさせてよ。そうじゃなきゃ私、ラヴジョイに顔向けできない」


「そこまでですの? 困りましたわね……」


 ラヴジョイは首を傾げたが。

 何も聞かずに、少し考えてから――――。

 

 ぱちん、と手を合わせて言った。


「では明日は、わたくしに付き合ってくださらない? 映画で出てきた場所を一緒に巡る、というのはどうかしら」


「もちろんいいけど……そんなことでいいの」


「もちろんですわよ。同好の士と観光できるだなんて、楽しくなるに決まっていますわっ」


 心から嬉しそうな顔をするラヴジョイに、レクセルは頷いて。

 じゃあそうするよ、と翌日の予定を決めたのだった。






「レクセル、ここがあのアパートですわ!」


「見てラヴジョイ、あのタクシーも出てたやつだよ!」


 露店で買ったシャーベット片手に、連れ立って街を歩く。

 一度しか観ていないにも関わらず、モノクロの光景はくっきりと目に焼き付いている。

 音や匂いにすら映画の面影が感じられて、2人の会話は一向に尽きない。


「――――昼間から発泡ワインは、さすがに羽目を外しすぎかしら……」


 一休みにと入ったカフェで、ラヴジョイが唸る。

 劇中で王女がした注文をなぞるか、なぞらまいか。

 そんな様子に、レクセルは小さく笑った。 


「こっそりアルマに来てる時点で羽目は外してるよ」


「ふふ、それもそうですわね。レクセルも飲むかしら?」


「私は……アイスコーヒーにしようかな」


「わかってますわね〜! 映画のお相手と同じですわ」


「それもあるけど、私そもそも未成年だし」


「ではレクセルこそ羽目を外すべきですわね!」


「やだよ配達人解雇されちゃう」


 ……とは言いつつ、ちょっと飲んでみたかったのは内緒。

 優雅にグラスを傾けるラヴジョイを眺めつつ、アイスコーヒーで喉を潤した。


「――――そういえば、昨日もこのカフェ来たんだよ。モーニングがおいしかった」


「まあ! それでは気付いていましたのね!」


「……え? 何に?」


「このカフェ、外観は映されなかったけれど、内装だけ登場していましたのよ――――ちょうどあの席ではないかしら?」


 ラヴジョイの視線を追って、振り返ると。

 店の奥に、ちょうどおじいさんが座っているソファー席がひとつ。

 壁に囲まれて雰囲気が違うから、気付かなかったけれど……。


「マジだ……」


「レクセルって、鈍いんですのねえ」


「……うるさいな」


「ふふふ」


 ラヴジョイは上品に笑って、グラスを置いた。

 レクセルのグラスもつられて、からんと氷を鳴らす。


「……さてと。今度は川の方へ行ってみませんこと?」


「いいね、行こっか」


 椅子が2つ、ききっと引かれた。






 太陽は下り坂に差しかかり、アルマがオレンジ色へと染まっていく。

 街灯がぽつぽつ灯り始めるにつれて、仕事終わりのゆるい空気が混じってきた。


 川べりを散策する2人のもとへ、ヴァイオリンの音色が届く。

 見れば浮かんだ船の上、参加自由のダンスパーティが開かれていた。


「――――レクセル、行ってみましょう!」


「え、でも私ダンスしたことないよ」


「大丈夫、教えて差し上げますわ」


 手を引かれるままに桟橋を渡る。

 流れていた曲もちょうど終わり、これ幸いとするする入っていくラヴジョイ。

 ずるずる飲み込まれるレクセル……。


「流れに身を任せるの。わたくしに合わせて」


 さっと手を取り、ラヴジョイが囁く。

 流れってなに? 合わせるってどうやるんだ?

 聞きたい疑問を飲み込んで、レクセルは小さく頷いた。


 程なくして、楽団が演奏を始める。

 流れ出したのは軽快なワルツ。


「はい、足を出して〜はい戻して」


「わ、わっ」


 リードされる形で、レクセルは踏み出す。

 ぎこちないステップにかかとが鳴る。

 ラヴジョイの足を踏みそうになって、慌てて避けた――――。


「――――足元は見ないの。わたくしだけを見て」


 至近距離からすくい上げるかのように。

 澄んだ瞳に、ぐっと視線が持ち上げられて。

 微笑みに囚われたタイミングで、今度は強く手を引かれる。


「ひゃ」


「大丈夫、そのまま」


 ……思わず出た足が、ラヴジョイと揃った。

 次は後ろ。その次は前へ。

 引かれて伸ばした手が、足が、音楽に乗って動き始める。


「――――ほら。簡単でしょう?」


「掴めてきた、かも」


 慣れないながらも身体を動かしていたら。

 ……気付けば一曲、踊りきっていた。

 ラヴジョイのリードが上手なのか、思ったより疲れはなかった。


「もう一曲、いかがかしら」


「うん――――喜んで」


 楽しそうに、レクセルは頷く。

 流れ出したブルースに合わせて踏み出した。


 くるりと回る。

 互いの髪が、リボンのように弧を描く。

 金色と水色は仲睦まじく、1つになって揺れていた。


「――――出発は。明日ですわね」


「だね。アルマ、楽しかったな」


「ええ本当に……レクセルのおかげですわ」


「こちらこそだよ、ラヴジョイ」


 その言葉に、ラヴジョイは微笑んで。

 寂しそうに目を伏せた。


「あの……レクセル」


「どうした?」


「……1つ。お願いがあるのですけれど」


 一旦言葉を切って、ラヴジョイは顔を寄せる。

 そして耳元で、囁いた。


「今夜は、一緒に寝てくださらない……?」

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