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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
006 / 私を愛したレディ

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#34 レクセルは見た!

「自由行動……?」


「そうですわ〜」


 ディナーを共にしながら、レクセルは首を傾げた。

 ワインをひと口含んで、ラヴジョイが頷く。


「観光でもお休みでも、この4日間は自由になさって。帰りに乗せてくれさえすれば、なにをなさっても構いませんわ」


「えぇ……ラヴジョイの予定には付き合わなくていいの? 内容知らないけど」


「問題ありませんわ。わたくし1人でこなすものですの」


「…………そう」


 言い切ったラヴジョイは、いつもの気品は控えめで。

 表情も、どこか硬いような感じがした。

 かと思ったらすぐにいつもの雰囲気に戻り、目の前の食事に話題が移った。


 流れるようにスプーンが動く。

 昨日のトマトスープにも肩を並べるくらい美味しいと、ラヴジョイは太鼓判を押した。

 

 正直、スープ缶とホテルのコース料理を比べるもんじゃないと思うけど……。

 でも確かに、昨日の夕食は美味しかった。

 レクセルは頷きながら、じゃがいもの冷製ポタージュを啜る。

 話の主導権はそれからずっと、ラヴジョイが持ったままであった。


 また、尋ねる機会を逃したけれど。

 彼女がアルマに来た目的は、なんなんだろう……?






 翌朝。

 慣れないベッドのせいか、溜まった疲れのせいか、起きたのは昼過ぎであった。


「……私としたことが」


 カーテンの向こう側は、すっかり明るい。

 かふーと小さな欠伸をして、レクセルはベッドから降りる。


 顔を洗って、軽く化粧をして。

 隣の部屋を訪ねてみたが、ラヴジョイはどこかに出かけていた。

 まあ当たり前か、目的があるのだから。

 

 少し考えて、レクセルはホテルを出る。

 どうせなら朝食はお店で食べよう。

 せっかくアルマに来たんだし。


 ガス灯が立ち並ぶ石畳をてくてくと歩く。

 観光都市と言うだけあって、アルマの街並みには今なお歴史が詰まっていた。


 全体的に背が低い建物たち。

 その屋根越しに見える、中世の神殿跡。

 そこかしこで人々を見守っている、大理石の女神像――――。


 〈アルマの休日〉。主人公の王女様が心躍らせて散策していた、モノクロの街。

 スクリーンで見た光景が、色鮮やかに、目の前で広がっていた。

 まるで、主人公になったかのように――――いや、まさに主人公になって。

 レクセルは休日のアルマを、目をキラキラさせながら歩いていく。

 年季を感じさせる渋いカフェの前で、ここにしようかと足を止めて。


「…………!」


 キラキラも止まる。

 扉に手をかける時、レクセルは見た。

 

 なんとなく振り返った目線の先に、見覚えのある水色の長髪。

 ……そして仲睦まじく腕を組む、見覚えのない女性の姿。


「ラヴジョイが、デートしてる……?」


 レクセルは固まった。

 ガン見した。


 やっば。

 慌ててチラ見に留める。

 ゆっくり、瞬きをしてから、もう一度見た。


 ――――人違いではなかった。

 道路を挟んで向かい側を、女連れのラヴジョイが歩いていく。 

 幸いにも、向こうはこっちに気付いていない…………そりゃ気付かないでしょうよデート中なんだから。

 レクセルは首を振って、目を引き剥がした。


「アルマに来た目的って、まさか逢引……?」


 だとしたら――――いや。

 だったらなんだというのだ。

 客のプライベートに踏み込むもんじゃないし。

 

 それに。

 誰かを一途に想ってここまでするなんて、素敵じゃないか。

 レクセルは少し微笑んで、見なかったことにする。

 今度こそガチャリとカフェへ入った。


 




「――――なにになさいます?」

 

「アイスコーヒー、それから三日月パンを」


 アルマの朝食といえば、これと相場が決まっている。

 映画と同じものを頼んで、レクセルはわくわくしながら背筋を伸ばす。

 密かに憧れてた、あのモーニングを私も――――。


「――――どうぞごゆっくり」


「はや」


 一瞬で提供され、思わず声が出た。

 にこりと笑って、ウェイトレスはすたすたと去る。

 呆気に取られたまま、そろー……とグラスに触れて、その冷たさで我に返った。


「……みんな同じの頼むからか」


 定番の朝食なら、そりゃ慣れているはずだ。

 勝手に納得して、レクセルはコーヒーをひと口飲んだ。

 きりっとした苦味が、するりと喉を抜けていく。

 いつも飲んでいたものより、だいぶ濃い。


 ……ここまで苦いと、ハレーはミルク欲しがるな。


 カフェで働いているくせにブラックが苦手な幼なじみを思い出し、レクセルは微笑んだ。

 グラスを置いて、三日月パンへ手を伸ばす。

 バターが香るサクサクの生地を噛み締めて、ふぅ……と満足げなため息をついた。


 そんな彼女を、じっと見ていた顔がひとつ――――。


 スタイリッシュに整えられた、艶のある髪。

 意志の強そうな瞳に、精悍な顔立ち。

 一見すれば好青年にも見えるが、パンツスタイルが似合うくびれはあきらかに女性のもの。


「ふふ……」


 その微笑みは、何人の少女を虜にしたか。

 その存在が、何人の心を灼いてきたか。

 アルマで1、2を争う男装の麗人、付いた異名は〈腰砕きの貴公子(プリンス)〉――――。

 

 そんな彼女が、レクセルに狙いを定めた。


「――――ここ、いいかい?」

 

「……いいけど、なんで? 他にも空いているのに」


「そりゃ、素敵な人に惹かれたからさ」


 からからと椅子を引いて、斜めに座った。

 レクセルは少し目を細める。

 ふぁさ、と前髪を掻き上げて、プリンスは一言――――。 


「キミ、可愛いね――――」


「あなたもね」


「――――ひゃうっ」


 ――――で撃沈した。

 だって可愛いなんて言われたことなかったんだもん。

 レクセルの無自覚カウンターがモロに決まり、プリンスは机に突っ伏して痙攣し始めた。


「なんなんだこの人……」


 眉をひそめるレクセル。

 ぱくぱくと三日月パンを平らげて、コーヒーを飲み終わっても、まだぴくぴくしてる……。

 大きなため息をついた。


「……お会計お願いします」


「かしこまりました」


 レクセルは席を立つ。

 プリンスは置き去りにされた。

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